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「いつまでも若い」を捨てる時? 俳優の評価を左右する“年相応の老け役”
鈴木保奈美や木村拓哉ら、これまでにない白髪の役に好意的な声
白髪の役といえば、今年初頭に放送されたSPドラマ『教場』(同)で、木村拓哉が演じた冷酷な教官役も衝撃的だった。これにも、「若いころのロン毛もカッコ良かったけど、白髪の木村さんもカッコイイ!」「渋さと色っぽさがある」という声、「これからの木村拓哉を感じさせる」といった好意的な反響が目立った。年を重ねるとともに父親役などは演じたことのある木村だが、全編白髪頭の役柄は初。実年齢は40代後半であるとはいえ、ジャニーズのアイドルでもあるだけに、この役にはなにがしかの覚悟が感じれられたものだ。
ほかにも、現在放送中の深夜ドラマ『バベル九朔』(日本テレビ系)では、上地雄輔が白髪交じりの父親役を好演している。彼も40代とはいえ、これまでは若々しいパブリックイメージだっただけに、この役はある意味、挑戦となったのではなかろうか。
実年齢と近いからこそ、視聴者に現実を突きつけるリスクも
だが、先述の鈴木保奈美や木村拓哉らは、世に言う“老け役”とは少し状況を異にするように見える。彼らが白髪で演じたのは、一見いわゆる“老け役”のように見えるが、よく考えてみれば実年齢に近い“年相応”の役だ。54歳の鈴木が57歳、48歳の木村が50代を演じているのだから、それほど無理がある年齢設定とはいえない。相反する言葉のようだが、“年相応の老け役”というのが、わかりやすい表現だろう。
だが、この“年相応の老け役”には、単なる老け役とは異なるリスクがある。若い俳優が実年齢とかけ離れた役を演じれば、「そういう役柄なんだ」で話は済む。だが、年齢が近い“老け役”では、見られ方も変わってくる。
鈴木や木村も、それぞれが一世を風靡した人気俳優であるだけに、世間は変わらぬイメージを持ち続けている。「いつまでも若い」と言われ、求められ、憧れの対象としてそれに応えてきた部分もあるだろう。そんなスターが、急に実年齢とさほど遠くない白髪の役で現れれば、「この人、本当はこのくらいの年齢なんだ…」と、視聴者に現実を突きつけ、幻滅を招く危険性すらはらんでいる。“年相応の老け役”は、俳優にとってもそれだけ覚悟を要するもの。前述の俳優たちがそんな難しい役どころで称賛を受けているのは、これらリスクを乗り越え、確固たる演技力や存在感を発揮したからにほかならない。