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「いつまでも若い」を捨てる時? 俳優の評価を左右する“年相応の老け役”
無理な「若づくり」より「いい歳の取り方」、変わってきた世間の風潮
これまでは、とくに人前に立つ職業の場合、「若くある」ことが求められてきた。スター芸能人ともなれば、歳を積み重ねても実年齢を前面に出さず、様々な見せ方、努力でケアし、世間もそれを「いつまでも若い」と受け入れてきた。しかし昨今では、あまりにも行きすぎた若々しさ重視はトレンドではなくなり、むしろ年相応の渋さや品、重みを自然に感じさせる「いい歳の取り方」をしているほうが、リスペクトされる傾向が強いようだ。
白髪に関しても、数年前に元フジテレビアナウンサーの近藤サトがグレイヘアでテレビに登場し、老いに抗わないその姿が潔いとされた。むしろ“素”のままに振る舞う熟年の自信、落ち着き、エレガントさ、美しさの象徴として一気に市民権を得たのである。男性においても、グレイヘアはもちろん、海外では頭髪の薄さなども俳優の個性として捉えられている。日本でもいずれは、そのような流れがやってくるのかもしれない。
SNSの普及の影響も大きいだろう。芸能人が自らの写真をアップすることは日常茶飯事だが、ユーザー側もデジタル技術の知識がつき、鑑識眼もある。加工した写真などはすぐに見抜かれるし、無理に若づくりすると「痛々しい」と揶揄される対象にもなってしまう。こうした一般視聴者の意識の変化も、芸能人たちを“自然回帰”へとうながす要素となっているのかもしれない。
とはいえ、一定のイメージがついたスターたちが、“若さ”の殻を破ることはそれなりに覚悟がいる。早い段階で自然な加齢を見せていれば別だが、年を重ねてからのシフトチェンジに勇気がいることは、俳優も一般人も同じだろう。だが、鈴木や木村らの例を見ると、けっして拒否反応はなく、好意的に受け入れられているようだ。年相応の自分を受け止め、抗わずに活動していくことが、同世代の視聴者にとっては代表者・代弁者として、若い視聴者にとっては大人の見本・憧れとして、より輝くことができるのではないだろうか。これまでのイメージを脱却することで、俳優としての幅も一層広がることになるだろう。