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お笑いにおける“天下取り”の条件は? 基準の変化と第七世代が「天下」狙わない理由
テレビのメディア力低下、各賞レースの台頭により“天下取り”の基準が曖昧に
それに加え、お笑い賞レースの一般化も、実は“天下取り”の基準を曖昧にするきっかけともなっている。2001年に『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)がスタートする以前から『上方漫才大賞』(フジテレビ系)や『ABCお笑い新人グランプリ』(テレビ朝日系)など、ネタにスポットをあてた賞レースが存在していたものの、基本的に関西芸人を対象にしたものだけだった。しかし、そこに全国ネットのテレビ番組として、プロ・アマ問わず参加できる『M-1』が登場、人気を博したことをきっかけに、02年には『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)、08年には『キングオブコント』(TBS系)など、全国規模のお笑いコンテストが次々誕生した。
これらは年々、影響力を増し、今ではだれもが認めるお笑い界の称号となっている。しかし、それぞれの分野で純粋な“ネタの面白さ”での1位を決めるだけに、優勝したからと言って、従来の芸人たちと同じレベルで「お笑い界の天下を取った」とまでは言い切れないのが実情。各賞レースが毎年行われることで、話題が一過性になりやすくなってしまっているのもその要因だろう。これまでは、時代の最先端を行く芸人がブームを築き上げ、短くても数年間は消費されることなくブームを維持することで「天下を取った」といえる芸人が生まれてきたが、次々生まれるブームが短期間で消費されることで、その潮流が失われつつある。
芸人として何をもって“天下取り”なのか? 図らずも、賞レースによってその基準が曖昧になってしまっているといえるのだ。
第7世代は剥き出しのライバル心ではなく“共生”、「やりたいことはYouTubeで」という志向も
その背景には第7世代がブレイクした際、すでにテレビのみを主戦場にするのではなく、YouTubeで自分たちが面白いと思うことだけを積極的に発信する動きが多発していたことも影響している。オリエンタルラジオの中田敦彦がテレビのレギュラー7本を捨ててYouTubeに活路を見出したように、テレビ以外での居場所や地位を確立できる時代になったため、以前のような競争が起きにくくなっていると考えられるのだ。