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『ポカリスエット』40周年、“青は売れない”を打破した飲料業界の異端児が大ヒット商品になるまで

“出来損ない同士”のブレンドでできた大ヒット商品 試作品の味見を“山頂”でした理由とは

 そんな『ポカリスエット』誕生までの道のりも、平坦ではなかった。

「点滴液の改良ではなく、それまで世の中になかった“汗の飲料”として開発しましたが、研究でわかったことは汗にも種類があることでした。例えば、日常における汗の塩分濃度はスポーツ発汗時よりも低い。これらの発見をもとに飲料を施策したものの、日常の汗の成分を再現した試作品は苦くて、まずかったのです。試行錯誤が続き、その試作品が1,000種類を超えた頃、たまたま研究室で同時開発していたものの行き詰っていた柑橘系粉末ジュースと、“出来損ない同士”を混ぜてみました」

 これが“コロンブスの卵”となる。悩みのタネだった苦味が消えた。ここから研究は加速し、最終的に試作品は、糖質濃度(甘味)が濃いタイプと薄いタイプの2品に絞られることに。このどちらを選ぶか。研究員は「汗をかいたときに美味しく飲み続けられる味」のコンセプトのもと、自ら山登りをし、実際に汗をかいて試作品を飲んでみた。

「すると、甘味が薄いほうが飲みやすく、ゴクゴクと滑らかにのどを通ることがわかりました。こうして最終的な味が決定しました」
 パッケージデザインは生命のルーツである海の青と、波を表す白を用いたクールでシンプルなもの。だが1980年の発売当時、食品・飲料ともに“青は売れない色”とされていた。ここでも、同社の業界タブーへの挑戦があった。

「『ポカリスエット』は当時、それまでにないカテゴリーの製品でした。そこで、“デザインは本質を表現するもの”というデザイナーの信念とコンセプトを伝える、という当社の強い意思によってこのデザインを採用。ちなみに、白い波型は『ポカリスエット』と真水の吸収スピードを比較したグラフの曲線を象徴化したもの。このデザインは今も変わることがありません。発売から30年以上経った2016年には、『グッドデザイン・ロングライフデザイン賞』受賞に至ったのは光栄の極みです」

CMは若手女優の登竜門 すでに知名度あるタレントを起用しない理由とは

 また同商品のCMと言えば、若手女優・タレントの登竜門というイメージがある。初代の森高千里に始まり、宮沢りえ、一色紗英、中山エミリ、後藤理沙、鈴木杏、綾瀬はるか、川口春奈、中条あやみなど、そうそうたるメンバーが並ぶ。2016年からは八木莉可子、2019年からは芽島みずき、そして2020年には汐谷友希が同商品CMに出演している。
「出演者の選出については、すでに名前や顔が知れ渡っている方ではなく、これからブランドと共に一緒に成長していただける方を選んでいます。その方の潜在能力を引き出し、ポカリスエットと共にCMを始めとするあらゆるコミュニケーションを創り上げること。またメインターゲット層である中高生に共感が獲得できるCMにすること。ブランドメッセージである“生命力”や“躍動感”が表現されていることに重きをおきます」

 出演女優・タレントと共に、『ポカリスエット』は常に進化を続けている。
「成分処方やデザインは基本的に変えていませんが、あらゆる日常シーンで水分補給の大切さに気づいていただくために、ゼリーやアイスラリーという新しい剤型も開発。スッキリした甘さの『ポカリスエット イオンウォーター』も誕生しています。また容器の軽量化、環境に配慮した容器・包装など、時代に合わせた変化も。時代ごとの社会・健康課題を理解し、大塚製薬らしい方法で課題解決に向けたご提案を常にしたいと考えています」

「これからも新たな価値を提供し続け、健康に貢献することによって、愛され続ける製品を目指したい」と同社。タブーや常識に挑み続けたチャレンジャーであり、その結果、揺るがぬ定番製品となった『ポカリスエット』は、今後も時代の“渇きを力に変えてゆく。”はず。挑戦し続けることの大切さを噛み締めながら、今後も味わっていきたい。


(文/衣輪晋一)

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