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『ポカリスエット』40周年、“青は売れない”を打破した飲料業界の異端児が大ヒット商品になるまで
“出来損ない同士”のブレンドでできた大ヒット商品 試作品の味見を“山頂”でした理由とは
「点滴液の改良ではなく、それまで世の中になかった“汗の飲料”として開発しましたが、研究でわかったことは汗にも種類があることでした。例えば、日常における汗の塩分濃度はスポーツ発汗時よりも低い。これらの発見をもとに飲料を施策したものの、日常の汗の成分を再現した試作品は苦くて、まずかったのです。試行錯誤が続き、その試作品が1,000種類を超えた頃、たまたま研究室で同時開発していたものの行き詰っていた柑橘系粉末ジュースと、“出来損ない同士”を混ぜてみました」
これが“コロンブスの卵”となる。悩みのタネだった苦味が消えた。ここから研究は加速し、最終的に試作品は、糖質濃度(甘味)が濃いタイプと薄いタイプの2品に絞られることに。このどちらを選ぶか。研究員は「汗をかいたときに美味しく飲み続けられる味」のコンセプトのもと、自ら山登りをし、実際に汗をかいて試作品を飲んでみた。
「すると、甘味が薄いほうが飲みやすく、ゴクゴクと滑らかにのどを通ることがわかりました。こうして最終的な味が決定しました」
「『ポカリスエット』は当時、それまでにないカテゴリーの製品でした。そこで、“デザインは本質を表現するもの”というデザイナーの信念とコンセプトを伝える、という当社の強い意思によってこのデザインを採用。ちなみに、白い波型は『ポカリスエット』と真水の吸収スピードを比較したグラフの曲線を象徴化したもの。このデザインは今も変わることがありません。発売から30年以上経った2016年には、『グッドデザイン・ロングライフデザイン賞』受賞に至ったのは光栄の極みです」
CMは若手女優の登竜門 すでに知名度あるタレントを起用しない理由とは
出演女優・タレントと共に、『ポカリスエット』は常に進化を続けている。
「これからも新たな価値を提供し続け、健康に貢献することによって、愛され続ける製品を目指したい」と同社。タブーや常識に挑み続けたチャレンジャーであり、その結果、揺るがぬ定番製品となった『ポカリスエット』は、今後も時代の“渇きを力に変えてゆく。”はず。挑戦し続けることの大切さを噛み締めながら、今後も味わっていきたい。
(文/衣輪晋一)