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さかなクン、国会でもぶれない“ハコフグ帽” 大人も憧れる“不変の少年性”の源泉とは

“ハコフグ帽”は後天性でも、“魚”と“絵”は偉大なる母が伸ばした才能

 “ハコフグ帽”は、テレビ出演の際に「印象が薄い」とディレクターに言われたのがきっかけで、生まれつき「皮膚の一部」なわけではないが、理由はそれだけではない。「幼少期に魚屋の水槽で、ハコフグが他の魚に迫害されながらも懸命に泳いでいた姿に心打たれたことを思い出し、『ハコフグに元気をもらおう』と思った」ことから、初恋の相手ウマヅラハギではなく、ハコフグが選ばれた。

 一方、“魚好き”は、もちろんバラエティのために作られたキャラではない。中学からの同級生というドランクドラゴン・鈴木拓は、さかなクンは当時から鉛筆、消しゴム、下敷きなど持ち物は全部魚関係の物で、授業中は隠れて教科書に魚の絵を描いていたと語っている。さらには、机の中でゴソゴソしていたので気になって見てみると、なんとフグの剥製を撫でていたというのだから、彼は紛れもない“本物”である。
中学生時代に“水槽”と“吹奏”を間違えて吹奏楽部に入部したエピソードも有名だが、一度夢中になるととことん突き詰める性格から、その後は楽器の魅力に取りつかれたという。それから約30年後、東京スカパラダイスオーケストラと共演を果たすことになるのだから、当時の“本気度”の賜物ともいえよう。
  • 大人たちにも”少年で居続けることの夢”を見させてくれるさかなクン(C)ORICON NewS inc.

    大人たちにも”少年で居続けることの夢”を見させてくれるさかなクン(C)ORICON NewS inc.

 そんなさかなクンのまっすぐすぎる人格を形成したのは、偉大なる“母”の存在が大きい。魚図鑑でいっぱいのランドセルに教科書など入るはずがなく、授業中も魚のお絵描きに忙しかった彼について教師に注意されると、母は「あの子は魚が好きで、絵を描くことが大好きなんです。だからそれでいいんです。成績が優秀な子がいればそうでない子もいて、だからいい。みんなが一緒だったらロボットになっちゃいますよ」と一蹴したという。

幼少期から絵が上手かったことから、学校の先生に本格的に絵を習うことを勧められた時も、型にはまらず好きなように描いてほしいとの思いから、誰かの弟子入りはさせなかった。今でこそ“個性”が重視され、一芸に秀でた人間が注目されているが、実際に子どもの個性を活かす教育をしている親がどれくらいいるだろうか。

 そのおかげで絵の才能と魚の知識量はみるみる伸びたが、逆に学校の成績は低迷。アルバイトでは水族館・魚屋・寿司屋と全て魚関連の仕事に就くものの、魚の名前は覚えられても作業内容は全く覚えられず、何をしてもダメ出しの連発だったという。しかし、寿司屋に魚の絵を飾るとイラストの依頼が相次ぎ、イラストレーターとして活躍するように。「魚に夢中だから勉強している時間はない」と一度は諦めた憧れの大学への道も、バラエティでの活躍などを受け、2006年に東京海洋大学客員准教授に就任、2015年には名誉博士号を授与されている。小学校の卒業文集で「将来の夢は、東海水産大学(現、東京海洋大学)の先生になることです。研究したことを、いろいろみんなに伝えてあげたいからです」と綴っていたさかなクンだが、遠回りしながらも見事に達成したわけである。

 そして、前述のクニマスについては、環境省が絶滅種と断定した生物が再発見された初めての出来事で、環境省からしてもまさに“目から鱗”であっただろう。中学生時代には、理科室で飼っていたカブトガニが「水槽が狭くてかわいそう」だと思い、決まった時間に外に出していたところ、それを潮の満ち引きと勘違いしたカブトガニが産卵に至り、さかなクンは民間人として初めてカブトガニの人工ふ化に成功している。
周りに合わせることを強制せず、ひたすら息子の“好き”と“個性”を尊重し続けた母の教育によって、息子はいくつもの偉業を成し遂げたのだ。


 さかなクンのように好きなことをとことん貫き、1つのことを究めることは決して容易ではない。少年時代、誰しもが何かに夢中になった思い出があるだろう。しかし、大人になっていく過程で、いつしかかつての情熱を失ってしまう。だからこそ、社会や周囲に流されることなく、邪念のない「好き」を追求し続けるさかなクンに、我々はどこかにおいてきた“少年心”を思い出させてくれるのではないだろうか。
 年齢は「成魚」で非公開としつつも、ドランクドラゴン・鈴木拓が同級生と明かしたことから“鯖”を読めなかったさかなクンだが、みんなが“大人”にならずとも、純粋無垢な“少年”が社会や世界に通用する姿を見せ続けてくれることに期待したい。

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