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著名人の“肩書き”への思い、カテゴライズされることへの憤りも

  • NHKの番組で「俳優」の肩書きで紹介された北川景子(撮影:徳永徹)

    NHKの番組で「俳優」の肩書きで紹介された北川景子(撮影:徳永徹)

 1月17日放送のNHKスペシャル『あの日から25年 大震災の子どもたち』(NHK総合)に北川景子が出演し、北川の肩書きに「俳優」とあったことがネットで話題になった。“女優”に馴れ親しんでいる人には違和感もあるだろうが、たしかにジェンダーフリー、ジェンダーレスが叫ばれ、多様化を認める社会が求められる昨今、性でカテゴライズする風潮は時代にそぐわなくなってきたのかもしれない。俳優、女優、声優、タレント等々、それぞれの肩書きへ抱く芸能人の思いや時代の流れを分析してみたい。

性別で分けるナンセンスさ 女優、女子アナへ持つ違和感

  • 松岡茉優は先輩の活躍を見て「女優」と名乗ることもいいと語ったという(C)ORICON NewS inc.

    松岡茉優は先輩の活躍を見て「女優」と名乗ることもいいと語ったという(C)ORICON NewS inc.

 「女優→俳優」とする呼称の流れについては、そもそも1999年の男女雇用機会均等法改正あたりから職場や就職における男女の差別が意識され出し、2002年に看護婦(女性)と看護士(男性)の区別が廃止されて「看護師」に統一されると、NHKなどでも女優ではなく俳優と呼称するようになったようである。

 とはいえ、それほど厳密でもなく、番組の内容や本人の意向しだいでは「女優」とすることもあるようだ。たとえば『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、吉永小百合(2019年10月26日)を「映画俳優」と紹介する一方、宮沢りえ(2017年7月24日)は「女優」と紹介されていたことも。また、松岡茉優は以前は自らを「俳優」と名乗っていたが、安藤サクラや樹木希林と共演したことで、「初めて“女優”がいいと思えるようになった」とインタビューで語っていた。

 一方、昨年3月放送の『ザ・因縁』(TBS系)では、元TBSアナウンサー・小島慶子と女子アナが対決、小島が「女子アナ」という呼称にもの申し、「女を売るな、アナウンサーでいい」と主張した。対する現役女子アナたちは、自分をアピールするために“女らしさ”を前面に出すこともときには必要、自分たちは“女子アナ”という肩書きで仕事に呼ばれていると反論。

 実際、「女優→俳優」と同じく、男性も女性も「アナウンサー」に統一すればすむことかもしれない。また、考えてみれば“女子”という言い方も謎といえ、普通に“女性アナウンサー”でいい気もするが、“女優”や“女子アナ”であることにプライドを持っている女性も多く、“女”がつく肩書きだからこそ機能する仕事や役割もあるということだろう。

“声優”という言い方を嫌う声優 世代間での違いも

  • 大河『麒麟がくる』に出演中の大塚明夫(C)ORICON NewS inc.

    大河『麒麟がくる』に出演中の大塚明夫(C)ORICON NewS inc.

 また、以前にも増して注目される「声優」界では、特にベテラン声優ほど“声優”と呼ばれることに違和感を抱き、「俳優」と名乗る人も多いという。たとえば故・肝付兼太さん(『ドラえもん』のスネ夫役)、故・永井一郎さん(『サザエさん』の磯野波平役)、田中真弓(『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィ役)などのベテラン勢はもともと俳優活動をしているので、「声を生業とする俳優」とするのもうなずける。

 実際、最近では声優が声優以外の活動の場を広げるケースが多く、大塚明夫がNHK大河ドラマ『麒麟がくる』に出演したり、上坂すみれが初の写真集『すみれいろ』をヒットさせたりしている。今、もっとも人気がある声優といえる宮野真守も数々の話題作に声優として出演。その一方で、歌手活動もこなし、音楽番組『おげんさんといっしょ』(NHK総合)に出演すると、その流れで紅白出場も果たしている。

 また、『アイドルマスター』や『BanG Dream!(バンドリ!)』などのゲームやメディアミックス作品のヒットによって、若い声優のアイドル化が進み、声優のステイタスもこれまでとは違ってきている。

汎用性の高い「タレント」という肩書き “なんでもできる”が軽くみられる言葉に

 俳優や女優、声優にとどまらず活動の域が広がってくると、それぞれの単発の肩書きに収まらなくなり、「タレント」と称されることも多い。テレビや映画、ラジオなどフィールドを限定せず、マルチに活動する芸能人やコメディアン、文化人などをひっくるめて「タレント」と呼ぶ。一見、万能な言葉のように感じるが、「タレント」という言葉が持つ意味は“才能”や“技量”である。

 その語源は古代ローマの通貨の単位である、「タラントン」から来ているという。これが肩書を意味するようになったのは「才能(能力)に応じてタラントを支払う」という新約聖書の中のエピソードに由来しているからという説がある。

 今では明確に俳優とか歌手、アイドル、芸人などとカテゴライズしにくいときにそう呼称されたり、ものまねタレントやママタレントなど「〇〇タレント」と細分化もされている。しかし、どれもどこか軽く扱われているような印象も。

 本来の意味をたどれば、いろいろな仕事をこなせることが大きな才能であるのは間違いなく、もっと“タレント”という肩書きに敬意を払ってもいいはずなのだ。

 時代の流れもあり、「女優」か「俳優」か、「声優」か「俳優」かなど、男性・女性や聴覚・視覚でカテゴリー分けすることに異を唱える人が出てくるのも当然の流れだろう。今後は、日本でも米・ハリウッドでも「主演女優賞」や「助演男優賞」といった呼称も見直されていくのかもしれない。しかし、肩書きを付けることによって輝く場合もある。肩書き自体には正解も不正解もないが、まずは自他ともに認める肩書きを獲得すべく、肩書に見合う努力をする姿勢が大事ということなのだろう。

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