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「マンホールカード」ブーム加熱で止まぬ転売…運営元が明かす対策と想い
新作配布の日にはアクセス殺到、サーバーがダウンすることも
2016年4月に第1弾(全国28都市30種)が配布されて以降、8月、12月と4ヵ月おきに年3回(2019年度のみ8月、12月の2回)、新シリーズを発表。今年8月に登場した第10弾で参加自治体は450を突破し、カードの総数は539種に達した。
下水道の広報活動の一環として無料配布が始まってから3年強。今やその人気から、ファン注目のカードともなれば初日で配布終了になるものもある。ところが、第1弾、第2弾まではその存在がほとんど広まらず、参加自治体を集めるのにもかなり苦労したというから驚く。
「ブームを実感できるようになったのは2016年の12月、第3弾くらいからですね。1回の配布で1種類につき2000枚しか作らないんですが、それが配布初日になくなってしまう自治体が出たんです。GKPのHPもアクセスが殺到してサーバがダウンしてしまったり。『これはなんかすごいことになっているんじゃないか』と思うようになりました」(GKP・MC広報担当、以下同)
希少性が高く、マニアでなくても集めたくなる“仕掛け”が満載
「カード表面の右上に都道府県コードと市区町村コード、デザイン種類、デザイン数量を表した9桁のデザイン管理ナンバーがあるんですが、コレクターの中には同じ都道府県コードだけを収集する人もいるようです」
さらに表面の下段には、マンホールの位置座標やマンホールに描かれている要素を絵文字にしたピクトグラムアイコンなどがあり、位置座標を参考に現地を訪ねたり、同じピクトグラムアイコンのカードだけをコレクションして楽しめるという。
“コレクター心”をくすぐるものはその他にも。カードの配布場所は、そのマンホール蓋のある地域の1カ所に限定されている。稀に「マンホールサミット」や下水道展といった自治体主催のイベントで配布されることもあるが、基本的にはその場所に行かなければ手に入らない。この“希少性”も人気に拍車をかけた要因のひとつといえる。
「現地に行かないと入手できないのでお土産にされる方もいますし、マンホールカードをもらうことを旅行のきっかけにしている方も多いですね」
そんなマンホールカードファンでもなかなかお目にかかれないのが次のカードだ。
・神奈川県横浜市の駅伝(第30回 下水道職員健康駅伝大会にて配布)
・東京都西武蔵野市のキャラクター(ドラマ『アンナチュラル』の第4話に登場した架空の自治体のカード。一般配布なし)
また、鳥取県米子市や福岡県北九州市、茨城県つくば市が制作した英語版(インバウンドの人向けに作られた、全体のロットの中に数えられていない特別版)のカードも一部のマニアに人気がある。
人気カードならではの悲しき宿命。後を絶たない転売目的の人々
「マンホールカードは、あくまでも自治体が公費で制作して、無料で配布するパンフレットなんです。また、GKPはボランティアで運営しているのでマンパワーにも限界があります。一度に制作できるのも60種類くらいが精一杯。第10弾のときも90近い自治体から応募があったんですが、泣く泣く61種に絞ったんです」
そんなマンホールカードが、目下直面している最大の問題が「転売」だ。無料配布にも関わらず、遠方に行かなければ手に入らないカードなどが「レアもの」として、ネットオークションやフリマサイトなどを通じて売買され、中には万単位の高額で取引されるものもある。
「発行当初から配布場所を1種・1カ所に限定し、郵送は禁止。ひとりにつき1枚のみに規制するなど対策は講じてきました。自治体によっては受け取り時に署名していただいたり、誓約書にサインをしてもらっているところもありますが、それでも転売する人は後を絶ちません」
公費で制作されたものを利用し私腹を肥やすというのは、いかがなものだろうか。
「マンホールカードは“楽しみながら下水道への理解や関心を深めてほしい”という願いから誕生しました。ぜひ、分別のある行動をとっていただきたいですね」
担当者は個々の良識にもとづいた行動を呼びかけるとともに、今後の展望についてこう明かした。
「ファンの方々からカードの実物が全種類見られる場所を常設してほしいという要望をよくいただくので、いずれは全国で常設展示を…と、夢だけは大きく持っているんです(笑)。これからもカードの魅力、蓋の魅力にハマった方々に集めてもらいながら全国各地に行っていただき、そこの自治体でどういう下水道事業が行われているか、把握して帰ってきていただければうれしいですね」
(取材・文/今井洋子)