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応援上映も盛況、映画館は“コアファン”向けにシフトするのか? 劇場担当者が語る映画の未来

  • 『ボヘミアン・ラプソディ』大ヒット公開中!20世紀フォックス映画:? 2018 Twentieth Century Fox

    『ボヘミアン・ラプソディ』大ヒット公開中!20世紀フォックス映画:? 2018 Twentieth Century Fox

 『名探偵コナン ゼロの執行人』『ボヘミアン・ラプソディ』『翔んで埼玉』など大ヒット映画が相次ぐ中、大手シネコンのTOHOシネマズが映画鑑賞料金の値上げを発表。従来の一般1800円から1900円(レディースデイなどは1100円から1200円)に変更になり、インターネット上では多くの映画ファンから賛否の声が上がっている。その一方で、”4DXなどの体験型”や”応援上映などの参加型”といったコンセプト重視の鑑賞方法も台頭してきている昨今の映画シーン。応援上映に早期から取り組み、特にアニメ作品では大きな盛り上がりを見せている「新宿バルトナイン」にその意図を聞いた。

応援上映とは「声援OK、ペンライトの持ち込みOKの特別な上映会」

 映画館では音をさせず静かに作品を鑑賞するのが普通のスタイルだが、応援上映とは、観客が登場するキャラクターのかけ声や名セリフを一緒に叫んだり、歌を歌ったり、場合によってはペンライトやコスプレもOKという上映スタイル。キャラクターにより強く感情移入したり、音楽ライブのように他の観客と一緒に盛り上がることのできる鑑賞方法として定着している。来場者層は10代〜30代の女性が中心。ひとりで来場する人も多く、応援上映を通じて生まれる周りの人たちとのコミュニケーションを楽しみにしている人もいるという。新宿バルトナインで最初に応援上映された作品は、2016年1月公開の『KING OF PRISM by PrettyRhythm』。この『KING OF PRISM』や『名探偵コナン』などの応援上映が話題となり、今や社会現象になるほどの人気を博している。
――応援上映の魅力を改めて教えてください。

 新宿バルトナイン応援上映の醍醐味は「ファンが作品の興奮や感動を共有できる」こと。趣味や感性が近い方と同じ空間で感動や興奮を共有できることが、ご家庭では味わえない映画館の最大の魅力です。

――応援上映がヒットした要因は?

 新宿バルトナインキッズ向けの応援上映は行っていましたが、いわゆる大人向けは初めてでした。そこでの非常に熱烈な反応から「映画のキャラクターに声援やレスポンスを送りつつ楽しむという参加型の鑑賞スタイルが、実は意外に幅広い作品で有効ではないのか」と考え、さらに対象作品を拡大していったという流れです。当館にはアニメ好きのスタッフも多いので、ファン心を理解した丁寧な接客を率先して行ってくれたことも、成功した要因かもしれません。

――応援上映開始時と現在を比べて、お客さんの反応に違いはありますか?

 新宿バルトナイン当初は作品のファンの方がメインとなり、その方々が何度もご来場いただいたことで応援上映の形ができ上がってきました。現在は徐々に裾野が広がり、作品のファンのみならず、中には「応援上映だから観に行こう」というお客様もいらっしゃるようになりました。

応援上映の細分化「家族連れにやさしい」三世代の来場も

 応援上映がヒットした作品としては、前述の『KING OF PRISM』『名探偵コナン』などのアニメ作品が挙げられる。この人気アニメ2作については、SNSを通じてのネットワークが強く、コアファン同士で楽しむ傾向がある。特製うちわなどの応援グッズを作る人や、何十回と鑑賞しているツワモノも存在するという。現在『KING OF PRISM-Shiny Seven Stars-』が公開中で、3/21時点で興行収入1億円、観客動員数6万人を突破。さらに4/12からは『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』が公開予定で、SNSでも盛り上がりを見せている。

 同じアニメ作品では、3/16より上映中の『映画プリキュア ミラクルユニバース』が、春のプリキュア映画シリーズ歴代最高となる好調なスタートを切っている。同作品は子どもたちがプリキュアを応援するアイテム“ミラクルライト”の秘密に迫るストーリーで、キーワードは「家族」。まさに「家族連れに優しい」映画で、三世代を劇場に取り込む狙いが功を奏したようだ。

 また『グレイテスト・ショーマン』や『ボヘミアン・ラプソディ』など、ミュージカル映画や音楽を主題とした映画も、応援上映と親和性が高い。最近では、特別な音響システムを導入した映画館や大音量での上映に加え、『アナと雪の女王』などの外国語作品でも一緒に歌えるように歌詞部分に字幕を入れた作品も登場している。

 今や応援上映が定着し、『キンプリ』『プリキュア』のように爆発的ヒットも生まれている。「実写・アニメを問わず、登場人物に感情移入しやすい作品や、お客様が一体となって声を出したくなるような作品は、特に応援上映に相性が良いと思います」(新宿バルトナイン)というように、アニメや音楽映画だけでなく、さらにいろいろな作品で応援上映が行われる可能性はあるだろう。

映画業界の今とこれから

――最近では映画鑑賞法として動画配信サービスも人気になっていますが、そんな状況の中での映画館の魅力とは?

 新宿バルトナイン映画館が不特定多数の人が集まって体験を共有する場であることは、黎明期から変わっていません。スマホや動画配信が普及し、個人がコンテンツと触れ合う機会は増えていますが、一方ではSNSの普及によって、本当に優れた作品が口コミで評価され、素晴らしい体験を誰かと共有したいという欲求も高まっています。応援上映はSNSで拡散していただく機会が多く、そのためか同じ映画に何度も通うファンの方が増えました。前述した作品に限らず、「参加型」の鑑賞スタイルは幅広い作品で有効だと思います。われわれはその欲求にどう応えて、特別な体験を提供できるかを考えています。

 1900円という価格設定は、一般ユーザーにとっては厳しいラインだ。劇場は生き残り策として、コアファンやリピーター、ミュージカル好き、イベント好きなど、値上がりしても劇場に足を運ぶと期待できるユーザーに的を絞り、彼ら向けの企画や設備を充実させれば活路を見出せるかもしれない。新宿バルトナインでは「”趣味や感性が近い方と同じ空間で感動や興奮を共有できる”という映画館の強みを活かせる企画を、今後も提案していきたい」としている。今後はどんな企画が飛び出すのか、その動向に注目したい。

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