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『名古屋行き最終列車』も話題、“都落ち”感なくなったローカルドラマの立ち位置の変化

 地域限定で放送されるローカルドラマの立ち位置が変化し始めている。これまでローカルドラマというと、一世を風靡した俳優や、地元出身の役者を起用したりと、どこか“都落ち”感があった。だが昨今のSNSの普及で、放送されない地域でもドラマの情報を得ることができ、むしろ見たいと思わせる飢餓感までもあおることができる時代になっている。名古屋鉄道(名鉄)を舞台にした名古屋テレビ(メ〜テレ)制作のドラマ『名古屋行き最終列車』も、その一つ。なぜ地方局の自社制作ドラマが全国ネット系ドラマをしのぐほど、話題となっているのか。同ドラマのプロデューサーで監督でもある、同局の映像コンテンツ部の神道俊浩氏に聞いた。

“赤い列車”になじみ 共感を持って見てもらえる

 そもそも『名古屋行き最終列車』は、2012年のメ〜テレ開局50周年で「地元応援」というテーマのドラマとして企画された。14年以降は毎年1回、4日あるいは5日連続形式のスペシャルドラマとして放送を重ねてきたが、昨年からは全10話の連続ドラマとして制作。第7弾となる今期も全10話の連続ドラマとして、東海3県(愛知・岐阜・三重)で放送されている。

 ドラマは最終列車を舞台に、ふとした出会いによって登場人物たちが交錯し、発展していくというストーリー。都会から郊外へ向かう列車ではなく、あえて郊外から名古屋へ向かう列車を設定に描かれており、オムニバス形式で物語は展開する。

 鉄道を舞台にした理由について、神道氏はこう語る。「鉄道は多くの人が利用するものなので、共感を持って見てもらえるのではと思いました。コンセプトは、鉄道=地球。鉄道は単なる乗り物ではなく、人生そのものの場と捉え、制作しています。名古屋発ではなく名古屋行きにしたのは、少数派の人々を描くことで、人生の儚さを表現できればと考えたためです。また最終列車の物寂しいニュアンスに合う季節は冬だと思いまして、毎年冬に放送しています」(神道氏・以下同)
 名古屋市は、東海道新幹線やJR東海の在来線、地下鉄や近畿日本鉄道(近鉄)など、数多くの路線が通っている。その中で、ドラマでは名鉄を中心にドラマが描かれる。愛知県出身の神道氏にとって、名鉄は昔からなじみのある鉄道だった。「名鉄の“赤い列車”は、愛知県民には圧倒的に強い印象があると思います。また僕自身も乗っていた鉄道だったため、名鉄さんに頼み込みました」

 名鉄での撮影は、実際に臨時列車を走行させて行う。走行前にリハーサルもするが、車内での撮影は本番のみ。一発勝負のため、役者陣は独特の緊張感の中での撮影となるそうだ。「車内での撮影が無事終わると、いつも拍手が起きますね。衣装替えも車内で行っているので、役者の皆さんも、珍しい撮影法を楽しんでくださっています」

題材のヒントは、自身の体験談

 題材のヒントとなっているのは、神道氏自身の体験談だ。「ドラマは、自分や周りの人々の人生であったことを題材にしていますね。鉄道で財布を忘れたので貸してほしいと言われ、貸したことがあったのですが、数年経ったら、その手口で有名な詐欺師が捕まったと新聞で読んだ。そこで、そんな詐欺師を捕まえようとする“500円詐欺”の話を作ってみたり。寝過ごして終点まで行ったときに、同じように寝過ごした人と気が合い、交際が始まったという話を聞いた。そこで、好きな子が寝過ごさないように見守る話を描いてみたり。実話をアレンジした話が多いからか、東海地方の視聴者の共感を得ているのかもしれません」

 12年の放送開始時から、視聴者の反響は想像以上に大きかったと神道氏は振り返る。「深夜なのに視聴率8%、占拠率30%を超す回も何度か記録しました。SNSなどを見ると、最寄り駅や街が映ったことを喜んでくれたりしていますね。また『この地域に住んで良かったことは、名古屋行きを見られることだ』とか、『名古屋を離れて20数年経ったが、名古屋行きの赤い列車を見て興奮する自分に驚いた。名古屋魂がまだあった』といった投稿も見受けられ、とてもうれしくなりました」

松井玲奈「女優になりたいと思って乗り降りしていた列車」

 『名古屋行き最終列車』の主演は、第1弾から女優の松井玲奈が務めている。当時、松井は主演に抜てきされた際、「豊橋から出たこともなかった私が、歌やダンスの練習のために名古屋への往復で乗っていた名鉄列車。いつか女優になりたい夢を持って乗り降りしていた列車で、いま私は女優への夢の第一歩を進めています。縁とは不思議だと思います」とコメント。また今作出演についても「毎回思いますが、出発点に帰ってきたなと。気を引き締めます」と語っている。

 松井を起用した理由について、神道氏はこう語る。「12年時は、まだ松井さんはSKE48に在籍しており、名古屋から全国へと人気を拡大しているタイミングでした。また松井さんが、愛知県豊橋市出身ということもあり、応援したい気持ちもあり、主演をお願いしました。鉄道ファンであることは後から知りましたが、それも現状では良い作用になっていますね」
 『名古屋行き最終列車』は松井のほか、俳優の六角精児や吹越満、女優の松下由樹など、豪華なキャスト陣にも注目が集まる中、欠かせない役者がひとりいる。それは、2018年に急逝した、俳優の大杉漣さんだ。神道氏は大杉さんについて、表現者として憧れの存在だったと振り返る。「『名古屋行き最終列車』は、実は人情ドラマでもあるのです。人情味あふれる表現者として、大杉さんは憧れの存在でした。ダメもとでオファーをしましたら、OKをもらいまして。スタッフ全員大喜びでした。昨年急逝されるまで、4年続けて出演いただいておりました。疲れて見えるスタッフを見つけると、自然にくだらない話を持ち掛けて元気にしてくれたり。酔っ払いにスタッフが絡まれると、一番に走り出して助けに入るのも、大杉さんでした。誰とでも分け隔てなく親身に話してくださった姿は、一生忘れませんね」

ローカルドラマとして熟成させていきたい

 『名古屋行き最終列車』の特徴は、登場人物が毎年、年を重ねていることだ。アニメ『サザエさん』(フジテレビ系)のように、時が止まったまま展開されるのではなく、あえてリアルタイムでストーリーが進行している。この点について、神道氏は「視聴者や地域の変化に寄り添いたいと考え、一年の経年を描いている」と話す。「視聴者もいろいろあった一年。一方で、架空のドラマの中の話ですが、彼らにもいろいろあったんですよと伝えたい。役者の皆さんも、この珍しいドラマ展開を楽しんでくれていますね。『ドラマの一年の経年と同時に、自分たちも役者としてステップアップしていないと、昨年と一緒じゃん!と言われてしまう。僕たちも試されている』と。このまま何年もドラマを続けていき、最終的に“名古屋の大河ドラマ”になることが私の夢です」
 地方局の自社制作ドラマが、ここまで続くのは珍しいことだ。昨今のSNSの普及もあり、全国ネット系ドラマをしのぐほど、ローカルドラマの存在感は増してきている。しかし神道氏は、今後も東海地方をメインに発信していきたいと語る。「ネット時代に、あえて東海地方でしか見られないローカルドラマとして、熟成させていきたい。もちろんより多くの人に見てもらいたいですが、東海地方の代表ドラマとして、地域の人々に愛される存在でいたいなと思います」

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