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(更新: ORICON NEWS

あえて全方位に向けない 卓球番組からも垣間見られる“テレ東アプローチ”

 BSテレ東の『卓球ジャパン!』が、放送開始からまもなく1年を迎える。同番組は、日本初の卓球専門のレギュラー番組だ。毎週、ある一試合を取り上げ、1球ごとのプレーについて深く掘り下げて解説しており、SNSでは「今日も見逃せない」「毎週欠かさず録画して見てる」といった反響が寄せられている。テレビ東京といえば、“卓球”をいち早く中継し始めたテレビ局でもある。当時はニッチなスポーツだった卓球に、なぜスポットライトを当てたのか。同局の番組担当プロデューサーに聞いた。

“愛ちゃん頼み”でスタート! だが局内からは「お荷物」の声も

 テレビ東京は2005年から、「世界卓球選手権」の中継を始めた。立ち上げ当時を知る番組プロデューサーの柳澤健一郎氏は、“愛ちゃん頼み”でスタートしたと振り返る。「当時、TBSでは『世界陸上』、テレビ朝日では『世界水泳』が放送され、世界選手権がテレビコンテンツとして盛り上がりを見せていたんですよ。そこでテレ東としても何かと考えていた頃、福原愛さんが世界卓球に出場し結果を出し始めていたため、弊社では卓球を取り上げてみようと決まりました」(柳澤氏)

 しかし世界卓球の認知度は低く、視聴率は苦戦が続いた。局内から「世界卓球はお荷物」との声も上がるほどだった。2014年に世界卓球のプロデューサーに就いた遠藤正紀氏は、「このままではいけないと思い、作戦を練り直しまして。2年かけて16年に視聴率10%を目指すことにしました」と語る。当時、平野美宇選手と伊藤美誠選手の“みうみまコンビ”が台頭してきたこともあり、彼女たちを通して卓球の間口を広げていった。

あえて卓球好きな人向けに制作

 その後、日本の卓球界は躍進を遂げる。16年のリオデジャネイロ五輪では、男子団体で銀メダル、女子団体で銅メダルを獲得。また水谷隼選手が、シングルスで日本人初のメダル(銅)を獲得し、日本中で卓球に視線が注がれるようになった。さらに17年、張本智和選手が当時14歳61日でITTF(国際卓球連盟)ワールドツアーの男子シングルスで優勝するなど、卓球新世代の強さも増してきた。

 テレビ東京の視聴率も、日本卓球界の躍進と比例するようにアップ。2016年の放送から2桁に届くようになり、社内の卓球中継への空気感もガラリと変化した。そんな中、「卓球のレギュラー番組を設けてもいいのでは」との声も上がり、18年1月、30分枠でテレビ東京が制作する『卓球ジャパン!』の放送がBSジャパン(現BSテレ東)で開始した。
 番組制作費も少なく、迷走しまくりの3か月だったが、4月から1時間枠としてリニューアル。4月から番組プロデューサーを務める柳澤氏は、当時の心境をこう語る。「驚きましたね。土曜日の夜10時というプライムタイムに、毎週1時間の卓球のレギュラー番組かと。枠が広がってもコストは相変わらずギリギリだったため、どう見せていこうか試行錯誤しました」(柳澤氏)

 そこで柳澤氏は、元来のテレビの手法でもある“老若男女に見てもらう”番組作りではなく、卓球好きな人向けの番組として舵を切った。「バラエティ番組のような分かりやすく派手な演出ではなく、“スポーツとしての卓球の面白さ”にフォーカスした番組作りに取り組みました。卓球は展開が早く、スマッシュなど派手に決まるプレーもありますが、実はその前のプレーが重要だったりするんですよね。ゲームやプレーをしっかり取り上げれば、卓球好きな人はもちろん、卓球に興味がなかった人たちも次第に見てくれるはず。卓球はテクニック、駆け引きなど心理戦も実は満載。この競技自体の面白さを素直に伝えればいいんじゃないかなと思ったんです。“卓球偏差値の高い番組”でいいんじゃないかなと」(柳澤氏)

SNSは“とんがったこと”をやりたがるテレ東にとって追い風

 「私たちは良くも悪くも社風なのか、テレ東らしさとして“とんがったこと”をやりたがる」と遠藤氏は振り返る。「制作費も含め、さまざまな事情がある中で、『他局と同じコトをやってもしょうがないよね』とテレ東社員は思っていますね」(遠藤氏)

 一方、柳澤氏はSNSがテレ東にとって追い風になると語る。「時代が変わり、お茶の間で家族でテレビを見るという習慣は薄れてきた。今は、テレビを見ていて面白いと思ったことをSNSに発信し、好きな人たちでつながっていく時代。この流れは、テレ東にとって追い風かなと思いますね」(柳澤氏)

 今年10月には卓球の新リーグ「Tリーグ」が開幕、約1年半後には2020年東京五輪が待っている。遠藤氏も柳澤氏も、卓球ブームに乗っていきたいと話すが、「あくまで東京五輪はゴールではない」と断言する。「東京五輪が終わったら卓球を取り上げるのをやめる、というのはテレ東らしくない。テレ東としては、五輪後も日本で卓球が盛り上がっていくように伝えていきたいですね」(柳澤氏)

『卓球ジャパン!』は、多くの卓球ファンが待ち望んでいた番組

 『卓球ジャパン!』の番組作りは、功を奏している。SNSでは「卓球ジャパン!っていい番組」「卓球ジャパン!の解説、普通にめっちゃ楽しい」といった投稿が相次ぐ。また番組MCを務める武井壮と平野早矢香氏の掛け合いにも注目が集まっている。初めて番組MCを担当する平野氏にも、話を聞いた。

 平野氏は、2012年ロンドン五輪卓球女子団体で銀メダルを獲得し、16年に現役を引退。元選手目線からしても、卓球に特化したレギュラー番組ができたこと自体、信じられないという。「現役の選手からも『番組見ているよ』と言われますね。出演してくれることも多くて、『ここまで明かして大丈夫?』というくらいプレーの詳細を伝えてくれる。選手たちはすごく真摯に番組に向き合ってくれていますね」(平野氏)
 一緒に番組MCを務めている武井壮については「アスリートに対してリスペクトを持ってくださっている方」と語る。「私も武井さんのことをリスペクトしています。武井さんは、卓球選手とは違った目線で語ってくれるので、逆に気付かされることが多いですね」(平野氏)

 まもなく放送1周年を迎える『卓球ジャパン!』。平野氏は、「『卓球ジャパン!』は、多くの卓球ファンが待ち望んでいた番組。私は毎回勝負のような気持ちで、こういう演出で見ている人は喜んでくれるかなと考えながら、臨んでいます。実況解説もそうですが、この番組は、卓球を知らない方+卓球を経験している方向けに、卓球を掘り下げて伝えている。卓球の奥深さを知ってもらえたらうれしいですね」と意気込みを語った。

(文:衣輪晋一)

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