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まるで“教材ドラマ”? 経済のテレ東が打ち出す「ドラマBiz」枠の意義
『WBS』『ガイアの夜明け』…日経新聞を基盤としたターゲティング
そのどれもが働く人に必要な情報や仕事のヒントになるようなものばかりで、ここ数年で浸透したテレ東ドラマやバラエティーとはまた異なった“テレ東アプローチ”。ビジネス視点で制作される番組はテレ東の強みといっても過言ではない。
「その経済視点と、『モリのアサガオ』(10年)『鈴木先生』(11年)などから始まった好調なテレ東ドラマ要素をかけ合わせたのが月曜10時の『ドラマBiz』枠」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。この得意分野と得意分野をかけ合わせた気概は、第1弾『ヘッドハンター』から存分に発揮されており、メインを固める出演俳優も『ガイアの夜明け』案内人の江口洋介と杉本哲太、そして『カンブリア宮殿』サブインタビュアーの小池栄子で、SNSなどでは「『ガイアの夜明け』と『カンブリア宮殿』のコラボ感が半端ない」などの声が挙がっていた。
経済のテレ東、地続き感で打ち出す独自のドラマ路線
「昨今、他民放のドラマでは、視聴者層のメインターゲットにF2層(35-49歳の女性)を置くことが多く、テレ朝のようにF3層(50歳以上の女性)を持っているとさらに強いと言われています。ですが予算の関係で“隙間産業”的な勝負をしてきたテレ東はもともと、これらメインストリームでの制作にこだわっておらず、一見すると『ドラマBiz』枠も“大人の働く男性向け”という民放番組制作の慣習と違ったターゲティングに。ただ今は女性も活躍する時代。経済ものは決して男性の専売特許ではない…そんな今では当たり前のことが企画として通りやすいのも、テレ東が良くも悪くも大規模な局でなく、小回りが利くから。“テレ東の番組は他と違った独自路線で興味深い”と言われるのは結果論。ですが今となっては、テレビドラマ制作の古い慣習を打ち壊せるかもしれない貴重な存在」(衣輪氏)
明日は我が身? 視聴者に気付きを与える“教材ドラマ”
前2作品も同様だ。『ヘッドハンター』では、真面目に誠実に仕事に取り組む人たちを決して蔑ろにしない黒澤(江口)は、現実社会で理不尽を目の当たりにしている視聴者には非常に魅力的に映ったろうし、描かれる様々な職業も、その業界を知らなくても共感できるよう描かれていた。その上での美憂(徳永えり)のセリフ「嘘つきに対する最大の罰は、人から信用されなくなることじゃない。人を信用できなくなること」など、核心をついたセリフも印象深い。
『ラストチャンス』では、原作者が元銀行マンということもありドラマ的な勧善懲悪は回避。裏切り者と呼ばれた社長が蕎麦を打ち丁寧な接客をするなど、悪人が悪代官のような分かりやすい“クズ”ではなく「でもそんなもんだよね」と気付かされる教材的かつ現実的な捻りも見られた。
「月曜日のドラマ枠はしばらく、フジテレビの『月9』一本だった。そんな月曜夜に『ドラマBiz』を打ち出したのはテレ東の攻めの姿勢の現れであり、その枠が、何十年と続く経済のテレ東の強みが存分に生かされ、『月9』の王道と正反対となっているのも面白い。ちなみに『半沢直樹』や『逃げるは恥だが役に立つ』などの好調で局イメージが向上したTBSを見れば分かるように、テレビ局にとってドラマは非常に重要な存在と言えます。『ドラマBiz』で新たな独自の立ち位置を確立していけば、またひとつテレ東の価値も上がっていくはず」(衣輪氏)
今までドラマを観なかったビジネスパーソンにもアプローチしている同枠。今後テレビドラマ界にどんな革命を起こしていくか楽しみだ。
(文/西島亨)