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自衛隊”防災ノウハウ”本が異例ヒット、隊員採用が厳しい今こそ「身近に感じて」

  • 『自衛隊防災BOOK』(マガジンハウス刊)

    『自衛隊防災BOOK』(マガジンハウス刊)

 自然災害が続発し、改めて防災意識が高まった平成最後の夏。そんな状況ゆえか、『自衛隊防災BOOK』(マガジンハウス刊 8/9発売)が「実際に使える」と大きな話題に、実用書としては異例のヒットを収めている。本書は、YouTubeで公開されている『自衛隊 LIFEHACK CHANNEL』をベースにしたもの。この仕掛人にして本書にも大きく関わった防衛省陸上幕僚監部の林田賢明 3等陸佐に、立ち上げの苦労や、災害時の本書の活用法を聞いた。

北海道大停電の際はSNSで拡散、非常用袋に入れる読者も

  • 「ツナ缶・バターをローソク代わりにする方法」

    「ツナ缶・バターをローソク代わりにする方法」

  • 「一人でけが人を運ぶ方法」(ともに『自衛隊防災BOOK』より)

    「一人でけが人を運ぶ方法」(ともに『自衛隊防災BOOK』より)

 『自衛隊防災BOOK』は、危機管理のプロフェッショナルである自衛隊が、災害時などに実践するテクニックを、誰でも簡単に取り入れられるノウハウとして解説。発売直後から話題となっていたが、9月に入ってテレビ番組で続々紹介され、認知度が急激に上昇。さらに『世界一受けたい授業 今日から変われる2時間SP』(日本テレビ系)で特集されたことが大きく影響し、週間売上1.7万部を記録。オリコン週間BOOKランキングで6位と、初のTOP10入りを果たした(10/8付)。

 本書の特徴は、災害時にも役立つテクニックを、イラストと写真でわかりやすく紹介しているところ。各項目が短く、簡単に読み切ることができる手軽さも魅力だ。さらに、「シャツを浮き輪代わりにする方法」、「一人でけが人を運ぶ方法」、「節水時にうまくシャワーを浴びる方法」など、章立てもわかりやすいため、子どもからお年寄りまで、誰でも実践できるようになっている。

 「北海道胆振東部地震で起きた大停電のときに、本書に載っている『ツナ缶・バターをローソク代わりにする方法』がTwitterで拡散されていました。また、2冊購入して、1冊は読む用、もう1冊は非常用持ち出し袋に入れている、という読者の声も届いています」とは、本書担当編集者の談。夏から秋にかけて、台風や地震などの自然災害が多かっただけに、読者が実際にこの本のノウハウを活用、またはSNSで拡散したということも、本書の広まりに拍車をかけた。

元になった“ライフハックチャンネル”、直接的な募集告知より若者に広まるメディアで

防衛省陸上幕僚監部 林田賢明 3等陸佐

防衛省陸上幕僚監部 林田賢明 3等陸佐

 このように、8月の発売直後から実用書として威力を発揮してきた本書だが、実は元ネタがある。それが、YouTubeで公開されている『自衛隊 LIFEHACK CHANNEL』だ。自衛官募集の一環として昨年9月に始まったこの動画チャンネルだが、書籍化以降、自衛官募集HPのアクセスが急増。昨年度は月間で240万PVだったところが、本書発売後は1ヶ月で2500万PVを叩き出した。

 「“ライフハックチャンネル”は、以前の自衛官募集のテレビCMに代わり、一般の方にわかりやすく親しみやすい動画告知を、というアイディアから生まれました」と語るのは、このチャンネルの仕掛け人、防衛省陸上幕僚監部 人事教育部 募集・援護課 募集班 募集広報係長の林田賢明 3等陸佐。従来のCMや広告などで打ち出してきた直接的な募集告知ではなく、若者に広まりやすいYouTubeを使い、まずは自衛官の親しみやすさをアピールすることにシフトしたのが成功のきっかけだ。

 「私自身が隊員採用に関する広報の初心者だったので、当初は専門用語も動画の演出の仕方もわからない状態でした。しかも、親しみやすさはアピールしたいけど、おちゃらけ過ぎてもダメ。各署上官に慎重に確認をとりながら“ライフハックチャンネル”はスタートしたんです」(林田さん)

陸・海・空にアイディア募り、自衛官採用担当だった経験を生かした

  • 「懐中電灯をランタン代わりにする方法」(『自衛隊防災BOOK』より)

    「懐中電灯をランタン代わりにする方法」(『自衛隊防災BOOK』より)

 『自衛隊防災BOOK』は、この“ライフハックチャンネル”をベースにしているが、「まさか書籍化のお話をいただけるとは!」と、林田さんも驚いたそうだ。

 「書籍の中でも、自衛隊の現場で代々受け継がれているテクニックの中で、一般の方も実践できるものを紹介しています。陸・海・空の各部署に働きかけて募ったアイディアが、たくさん詰まっていますね。こだわりは、現役自衛官が実演しているところです」(林田さん)

 とはいえ、書籍化にあたっても、すべてがスムーズに進んだわけではない。もともとは自衛官募集が目的であるだけに、どこまで採用のPRに繋がるのかを気にする上官の説得には、時間がかかったそうだ。

 「新しく始めたことだけに、協力を仰ぐため奔走しました。でもそれができたのは、私が以前、採用担当として若者や親御さんへの説明に回っていた経験があったから。これまでの方法では限界がある。だからこそこのような書籍や動画なら、これからの人たちに絶対に受け入れてもらえる、という信念があったんです」

隊員の採用に厳しい現実、だからこそ「自衛隊を身近に感じてもらいたい」

 自然災害の多い国内はもとより、他国への支援や派遣の機会もある自衛隊。被災地での活躍がメディアに取り上げられることも多いだけに、入隊希望者が増えているのかと思いきや、現実はかなり厳しいものがある。実際、この10月からは一部の採用種目(自衛官候補生、一般曹候補生)応募年齢の上限を26歳から32歳に引き上げる規則を施行。体重制限を緩和する方針を固めるなど間口を広げてはいるものの、少子化などの影響で根本的な解決には至っていないようだ。

 「少子化や景気回復に伴い、隊員の採用には厳しい現実があることを目の当たりにしていますが、だからこそ新しいメディアを使って、これまでにない紹介の仕方をすることが正解だと思ったんです。調整すべきことは多々ありましたが、この書籍が一般の皆さんに広まり、実践されていくのは感慨深いです」(林田さん)

読者はもちろん自衛官の間でも絶賛、省内でも認知度アップ

 動画公開、書籍化、SNSでの拡散、そしてテレビなどメディアでの紹介。影響はどんどん拡大しているが、林田さんはこれによって、自衛隊を身近に感じてもらえるのが一番の喜びだそうだ。

 「『自衛隊防災BOOK』は、自衛官の間でもわかりやすく面白いと大絶賛されました。書籍がメディアで紹介されるたびに、省内でもさらに認知度が上がっていますね。そしてなにより、読んでくださった皆さんの反響が非常に良く、自衛隊への親近感が高まっていることを感じます」(林田さん)

 ちなみに、林田さんが常日頃カバンに入れて持ち歩いているものの中で、一般の人もいざというときに役立つアイテムは「笛と手ぬぐい」だそう。「書籍の中でもカバンの中身を披露していますが、非常時は叫ぶよりも笛のほうが簡単に大きな音を出せます。手ぬぐいは、タオルや風呂敷の代用品として活用できます」とのこと。

 危機管理のプロが教えるノウハウは、『自衛隊防災BOOK』や“ライフハックチャンネル”によって、多くの人々の目に触れることとなった。一般人にとってもありがたいこれらは、同時に自衛隊側にとっても非常に効果的なアピールとなった。どちらにとってもWIN-WINな、有意義なコンテンツであると言えるだろう。

(文:よしひろまさみち)

『自衛隊防災BOOK』

マガジンハウス 発売中

危機管理のプロ・自衛隊のノウハウを初公開。「地震発生時、真っ先にとるべき行動」「発災時、子供や高齢者と避難する方法」「シャツを浮き輪代わりにする方法「一人でけが人を運ぶ方法」「遭難時、生存率がアップする方法」「ハチに刺されたときの対処法」など、災害時や日常生活に役立つ100のテクニックを収録。

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いざというときに知っておくと役立つ知識やノウハウを動画などで紹介。
現在は災害に役立つテクニックのほか、「秋編」としてレジャーや運動会で役立つライフハック、「Season2」として自衛隊式だダイエット法なども公開している。

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