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(更新: ORICON NEWS

“タトゥー”への偏見は覆るのか? 日本における“入れ墨”の歴史と今

 タレントのりゅうちぇるが、妻(ぺこ)と先日生まれた長男の名のタトゥーを両肩に入れた写真をインスタグラムで公開した。SNSなどでは「こどもと一緒にプールに行けなくなっちゃう」、「なんかがっかり」などといった批判の声が多くあがり、これについて多数の芸能人もコメントを発表するなど、論争を巻き起こしている。90年代に “ファッション”としてタトゥーを入れることや、タトゥーシールやタトゥー風アクセサリーなどが流行してからもう20年以上たっている今でも、こういった声が上がるのは珍しくない。そこには、日本における入れ墨の歴史的背景が色濃く反映されているのは間違いない。

古くは神聖なもの…江戸時代は“粋”の象徴、だが戦後以降は反社会的勢力の象徴に変化

 そもそも日本における入れ墨の歴史は、縄文・弥生時代から存在したとも言われており、「入れ墨」または「刺青(しせい)」と称され、神聖なものであった。また、江戸時代には職人のファッションとして入れ墨が流行、鳶(とび)や飛脚(ひきゃく)などの職人たちの“粋(いき)”の象徴にもなり、粋にこだわる過程で柄や色彩、技法が日本独自の発展を遂げていく。しかし一方では、同時期に軽犯罪者に入れ墨刑(記号的な入れ墨をする刑罰)が科されたこともあり、入れ墨(以降、入れ墨は刺青と表記)に対する後ろ暗いネガティブなイメージも定着していった。

 また、戦後の日本では、入れ墨はヤクザの象徴のようになっていく。しかし、この頃の入れ墨の存在自体は忌み嫌われるようなものではなかった。今では考えられないかもしれないが、ヤクザの存在もまた、江戸時代の職人に使われた“粋”の延長の存在であり、芸能界とのつながりも隠されることのない時代があった。男らしさと華やかさを併せ持つ、ある種の憧れを抱かれる存在でもあった。ヤクザを主役にした映画が1960年代に流行したが、主役である登場人物ヤクザには、男らしさの象徴として刺青が鮮やかに描かれた。

 その後、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律である“暴力団対策法”が1991年に公布されると、ヤクザは法的に“悪”の存在となっていく。 “粋の象徴”であった鮮やかな入れ墨は、現在となるまでに、“ヤクザの象徴”という固定観念だけが残ってしまった。

 しかし1990年代になると、そんな日本の刺青に新たな概念が持ち込まれた。アメリカの“タトゥー”文化である。これは、広義では入れ墨と同じ原理のものだが、文化としては別物。アーティストやスポーツ選手がタトゥーを“ファッションの一部”として体に色を入れる姿に憧れる若者たちも増え、オシャレの一ジャンルとしてムーブメントを巻き起こしたのである。“本物”のタトゥーを入れる若者も続出したほか、すぐに落とせるタトゥーシールやタトゥー風アクセサリーも流行した。それが、現在問題になっている“タトゥー”なのである。

タレントのタトゥーはSNSの普及により無理に隠さない傾向も

 そんなファッションとしてのタトゥーの流行は、芸能界を見てもわかる。浜崎あゆみの右肩のハートやイニシャルをあしらったタトゥーはファンの間では有名だし、叶恭子は股間のバタフライタトゥーは写真集や雑誌などでたびたび披露し、話題になっている。他にも、特にアーティストは入れている者も多く、テレビや雑誌などでは隠されることもあるが、ライブやCDジャケットなどで確認できることは、これまでも珍しくなかった。

 現在では、SNSでオフショットを自ら発信できるということもあり、現在再ブレイク中のDA PUMP・ISSAのシャワー直後のショットや、土屋アンナの海でのショットなど、リラックスした姿とともにタトゥーが披露されることも増えてきている。

 先述のりゅうちぇるもまさにその形なのだが、タトゥーに対する固定観念と、りゅうちぇるの普段の天真爛漫なキャラとのギャップにより、批判の声が集中してしまった。これには芸能人たちもタトゥーに対する見解を述べ、SNSなどでも「最初から全否定するのはいかがなものか」といった声が上がり始めているようだ。

温泉やプール バラエティ番組でもOKに「タトゥーは隠すもの」へと緩和傾向

 入浴施設やプール、海水浴場、遊園地、ジム、ゴルフ場等々、肌を晒す場所では、入場を断る旨を表示されていることも。しかし一方で、“全面OK”とする施設が増加しているのも事実のようだ。千葉県成田市の日帰り温泉施設「大和の湯」のサイトのQ&Aページに記載されている「刺青、ファッション・タトゥーがある方もご利用いただけます」という部分のスクリーンショットともに「銭湯は全部こうなればいいんだ!!」と書いた、あるTwitterユーザーの投稿が4万9000回以上リツイートされ、11万を超える「いいね」がついた。

 また、最近ではタトゥーを“ネタ”にする機会も見られるようになった。ロックバンドのSIAM SHADEの栄喜は、『アウトデラックス』(フジテレビ系)で子どもの落書きのような犬のタトゥーをイジられているし、お笑い芸人の若井おさむは『マルコポロリ!』(関西テレビ)で「036」というタトゥーを披露すると、「囚人番号か!」と突っ込まれるなど、テレビでも“イジりOK”となっているようだ。

 さらに、タトゥーには“ヲタトゥー”や“痛トゥー”なるものも存在しており、“痛車”(クルマやバイクに萌え系のイラストをペイントすること)などと同じようにアニメやマンガ、ゲームなどを題材にしたタトゥーのことで、インスタフォロワー18万人超えの彫り師もいるほど。今やタトゥーは、いわゆるオタクたちすらも注目するものとなっているのだ。

「入れるのは勝手だけど…」否定派が多数 日本における“刺青の概念”の根深さ

 こうした緩和傾向や広がりがみられる中、ORICON NEWSでは10代〜50代までの社会人男女1000名を対象に「タトゥーに関するアンケート調査」を行った。

 「タトゥーを自身の体に入れるという行為」については、【良いと思う】が16.5%、【良くないと思う】が38.4%と、否定派が倍以上。実際の世間の目はまだまだ厳しいようだ。(ちなみに【どちらともいえない】が45.1%)

 【良くないと思う】の理由については、「日本の文化に合わない」(神奈川県/50代・男性)「体を傷つける行為だから」(石川県/30代・女性)、「身近な人がいれようとしたらとりあえずやめる方を勧める」(静岡県/30代・女性)などの拒否反応を示す意見が目立った。

 【良いと思う】は、「その人の好きでいいと思う」(千葉県/20代・女性)「今の日本では非難の方が強いと思うが、それを考えて納得しているならよいと思う」(東京都/30代・男性)というように、”個人の自由“を訴えるものが多かった。

 やはり今の日本では、やはり両手を広げて歓迎されるものではないようだが、【どちらともいえない】の中には、「一括りにはできない。やくざが仁義を誓う刺青と、若者が流行に乗って入れるファッションタトゥーとは違う。罪人に施していた歴史もあるので、言い方を分けたり細かくすればいろいろあるんだなと感心も分かれていくと思う」(東京都/10代・男性)という意見もあった。

 現在の日本における刺青の意味合いと、タトゥーの文化は別物とも思えるが、入れ墨の背景がタトゥー文化を拒否しているということは現実としてあるよう。“彫り物をする”ということへの日本に根付いた負の固定観念はなかなか深いようだ。りゅうちぇるをはじめとする芸能人たちのいうタトゥーに対するバッシング。払拭に向けた道はまさに“いばらの道”かもしれないかの知れないが、緩和傾向にあるのも事実。今回の問題提起によって「タトゥーの歴史」は、新しいターニングポイントを迎えていると言えるのかもしれない。
【調査概要】
調査時期:2018年8月20日(月)〜8月28日(火)
調査対象:計1000名(自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】会員10代、20代、30代、40代、50代の男女)
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査
調査機関:オリコン・モニターリサーチ
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