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キー局が放送見送り決定したABC制作ドラマ、制作者が伝えたかった想い

 朝日放送テレビ(ABCテレビ)が制作した7月期の新ドラマ『幸色のワンルーム』。6月18日にキー局であるテレビ朝日が急遽放送の見送りを発表、朝日放送テレビでは予定通り8日より放送が開始される。ORICON NEWSでは、同作のプロデューサーを務める朝日放送テレビ・飯田新氏に独占インタビューを敢行。今作への想い、そして“テレビマンとしての矜持”を真摯に語ってくれた。

描きたかったのは「居場所を無くした2人の幸せのカタチ」 そもそも誘拐していない

――6月18日に朝日放送さん制作の新ドラマ『幸色のワンルーム』が、テレビ朝日での放送を急遽見送るとの発表がありました。当然、御社としてはやりきれない想いが残ると思います。
飯田新P ドラマ制作を決めた時点で、賛否両論が出ることは想定していました。現状でも批判的な意見として、実際の誘拐事件を模倣しているのではないか、誘拐を美化しているのではないかといったご意見も把握しております。ですが、我々が描きたかったのは決してそのようなものではなく、「居場所を無くした2人が、綱渡りのような危うい関係の中で、幸せのカタチを探していく旅」なんです。

――それぞれの居場所を探す旅を描きたかったと。
飯田新P そうです。はくりさんの原作マンガも若い世代の方から圧倒的に支持されていて、若い世代が抱える閉塞感に、私自身も非常に共感出来ました。読み方によって解釈は異なるとは思いますが、あくまでも、生きる意味を見失った孤独な二人が、自分の居場所や人とのつながりとは何かを求める旅を視聴者の皆さまと共有したかった。

――これはネタバレになるかも知れないので、言っていいのか分かりませんが、そもそも“誘拐”してもいないですよね?
飯田新P はい。ネットのご意見を見ていても「主人公2人の純愛話を誘拐事件と絡めて表現するとは如何なものか?」という声が非常に多かったのですが、この話は2人の純愛とかラブストーリーでは全くないんです。恋人関係ではない2人が恋愛ではない、人間同士の深い絆で結ばれる…そこをどのように伝えるかが我々にとっての命題でした……放送前から何故か反省会のような雰囲気ですが(苦笑)。

――確かに(笑)。因みに、放送見送りの発表時には、まだ1話の映像は出来上がっていなかったんですよね?
飯田新P はい。観て頂いた上で視聴者の方にご批判を受けるのは我々の宿命ですので、甘んじて受け入れます。

多くの方に観て頂き判断を仰ぐ…“その道”は出来るだけ多くあって欲しい

――今回、朝日放送テレビさんでは予定通り今月8日より放送していくことを決定しました。御社の気概を感じたのも事実です。
飯田新P 会社としてこの作品を放送するべき、放送するに値すると判断を下したことに対しては感謝していますし、単純に嬉しかったですね。楽しみにしてくれていた視聴者の方、また、批判的な視聴者の方に“届けられる術”が残されたということが大きいです。

――各系列局さんが放送するのか否かも注目されていますが?
飯田新P 放送するか否かは各局判断となります。ですが私個人として、まずは1人でも多くの方に観て頂き、判断を仰ぐ。“その道”は出来るだけ多くあって欲しいなという想いです。

――ただ一方では、同番組のSNS展開で、「#背景はお兄さんが撮った盗撮写真」「#1000枚近くあります」などのハッシュタグ展開は誤解を生んだとも言えます。
飯田新P 重たい話ではあるので、PRに関してはもう少し和らげるという意味合いでしたが、誤解を生じさせてしまったことに関しては大いに反省すべき点ではあったと思います。

我々の判断が“英断”だったか否かは、ドラマがどう受け止められるかにかかっている

――放送されるという当たり前のことだと思っていたことが、ここまで大変だとは想定していなかったと思います。放送開始のスタートラインに立てたという気持ちですか?
飯田新P そうですね(しみじみ)。ただ、弊社の判断が“英断”だったか否かは、やはりドラマ自体がどう受け止められるのか? そしてドラマ自体のクオリティに関わってくると思います。まず現場としては、当初から描きたいと考えていたことを、しっかりとお伝えするということに全力を注いでいます。

――現在は様々な点から、テレビコンテンツ制作において受難の時代とも言われています。“過剰すぎる自主規制”がテレビ離れに拍車を掛けているのでは?との声も見受けられます。
飯田新P やり辛さを感じることはもちろんあります。これは全てのテレビマンが感じることだとは思います。ただ、気を付けないといけないのは、テレビという枠は「何をやっていい」というワケではないと思っています。昔と今で大きく異なるのは視聴者の皆さまの声が、より具体的に“可視化”されているということなんです。

与えられた枠組みの中で、どう形にしていくのか? それがテレビマンとしての矜持

――昔のテレビ番組には視聴者の声もそこまで届かなかったし、“聞こえなかったふり”も可能でした。昔の番組に対して、今のように視聴者の声が可視化されていたら、瞬時に抹殺される番組が多々ありますよね。
飯田新P そうですね(笑)。今のような可視化される時代の中で、視聴者の皆様の声を無視するということは出来ません。ただ、何を持って“過剰な自主規制”なのか? という判断は非常に難しいです。だからこそ我々としては、訴えたいメッセージが正確に届くようなクオリティの高い作品を提供していかないといけない。それが我々に課せられた使命だと思います。

――今回のような問題が生じても決して悲観しているワケではないんですね。
飯田新P はい! 昔は良かったねと言ってるうちは何も変わらない。与えられた枠組みの中で、どう形にしていくのか? 今のテレビというお皿の上でどう料理するのか? それがテレビマンとしての矜持だと思います。決して悲観しているワケではなく、むしろ非常にやり甲斐を感じています。

『幸色のワンルーム』(毎週日曜 後11:35〜 朝日放送テレビ)

 WEBの累計閲覧数が2億8000万を突破した、はくりの同名マンガをオリジナルストーリーを交えてドラマ化。14歳の少女・幸(山田杏奈)と彼女を「誘拐」した“お兄さん”(上杉柊平)という奇妙な関係の2人が、自分の本当の居場所を探す旅に出る。

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