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ハート型“セーラームーン目薬”、神コラボの背景にプール授業の減少?メーカーに聞く

  • SNSで話題、数量限定の『ロートリセ』美少女戦士セーラームーンコラボデザイン

    SNSで話題、数量限定の『ロートリセ』美少女戦士セーラームーンコラボデザイン

 数量限定で6月より発売している『ロート リセ』×『美少女戦士セーラームーン』(※以下:セーラームーン)の目薬がネットを中心に話題となっている。SNSには、「セーラームーンの目薬かわいすぎるっ!!!」、「持ってるとモチベ上がる!」などのコメントが踊り、ハート型の目薬を自撮りとともにアップする女性も。小学生の頃、プールの授業の後に活躍した目薬といえば、キャラクターのイラストがプリントされたシンプルなものを思い出すが、今回のコラボは「充血なんておしおきよ!」というキャッチコピーとともに、ハート型の容器や作品に登場するクリスタルスターコンパクトをモチーフにしたケースなど、ヴィジュアル面での徹底したこだわりが特徴的だ。そこで、ロート製薬の角田康之さんに開発の狙いや背景などを聞いた。

「中途半端なコラボ感は不要」すべては、若い世代の目薬との出会いのために

  • 今回お話を聞いた、ロート製薬 角田康之さん

    今回お話を聞いた、ロート製薬 角田康之さん

 キャラクターコラボを考えたそもそもの理由は、“若い人達にもっと目の健康のために目薬を使ってほしい”という想いから。近年はプールの授業の減少などから若年層の間で目薬を使用する機会が減っているという。しかし、スマホやネットテレビの普及など目の健康を取り囲む環境は、年を追うごとに過酷な状態となっている。つまり、目の健康を健やかに保つ手段のひとつとして、実は昔以上に目薬が必要な時代になっているのだ。

 「若い世代は回復力もあるので、正しい目のケアをすれば翌朝までに疲れや負担をを持ち越さないと言われています。そのため我々としては正しく目薬を使っていただく機会を作りたかった。それでプロモーションの手段に有効だと思ったのがキャラクターとのコラボ。今はSNSで横から横へ、友達間で情報を伝え合う時代です。人気キャラクターとコラボし、話題にしてもらうことで商品を認識してもらえると思いました。正面から“目の健康のために目薬をさしましょう!”と言ってもなかなか心に刺さらない時代なので、処方に自信があるからこそ、まずは話題にしてもらえるような仕掛作りをしていこうと考えたんです」(角田さん)

 そのためには、中途半端なコラボ感は不要と考えた。「美少女戦士セーラームーン」という作品を徹底的に目薬に落とし込み、通常はスクエア型である容器を、ハート型に変えてしまうなど、ただのキャラクターコラボではなく“作品の世界観”とのコラボを実現させた。

「ハート型ならテンションあがる!」10年前に女子社員が提案

 ピンクの容器がトレードマークの『ロート リセ』は、1994年の同ブランド誕生時から女子高生をターゲットにしている。また、当時女子高生だったユーザーが現在も使ってくれていることから、20〜30代もボリュームゾーンと言える。彼女達にとってセーラームーンは永遠の憧れであり、幼少期・青春時代ヒロイン。今回のコラボの理由もここにある。

 「数あるキャラクターのなかでセーラームーンを選んだのは、『ロート リセ』のボリュームゾーンの憧れの存在ということが大きな理由です。それに、セーラームーンの知名度なら高校生や大学生世代の方にもアピールできる。もし知らなくても、可愛い目薬を持ちたいと思うのが乙女心。女の子が選ぶ代表的な目薬でありたいので、そのうってつけのアイコンだと言えます 。ハート型の容器には苦労もありましたが、実現できた達成感は並大抵のものではありませんでした」(角田さん)

 ちなみにこのハート型の容器は10年以上前から構想がありつつも、様々な事情により実現を諦めていたものだった。しかし、開発者たちはその悔しさを秘め、ハート型の容器を実現する研究にまい進。そして、2018年の夏、セーラームーンとのコラボにより彼らの10年越しの夢が叶うこととなる。

 「10年くらい前に当時入社2年目の女子社員が“ハート型の容器ってテンション上がりますよ!”という案を出してくれたんですよ。でも、製造条件を考えたときにハート型ってすごくハードルが高かったんです。開発者とも相談しましたが、難しいとなってそのままお蔵入り。でも、今回のコラボが決まったときに“もう1度ハート型でチャレンジしてみよう”と再び動きだしました。いざ取りかかってみると当時と比べて、課題をクリアできる条件も揃っていたんです」(角田さん)

 ハート型の容器と同様にSNSで「可愛い!」「ほしい!」の声が相次いでいるのが、クリスタルスターコンパクトをモチーフとした目薬ケース。「皆さんに見ていただくのが目的なので、ポーチの中にしまってほしくない。だから大きさは気にせず、存在感を出しました(笑)」と言うように、パッと見は目薬ケースというよりまるで小物入れ。良い物は人に教えたくなる、そんな女性特有の心理を期待して商品化に着手したという。

 「上蓋の宝石の部分は、素材を埋め込んだ物を作りたかったのですが、コストの問題で、同梱のシールをお客様自身に貼ってもらうという手法を取ることにしました。泣く泣く…という気持ちだったのですが、これもSNSでのヒットにつながりました。自分流にカスタムできる、というのがお客様の心をくすぐっているひとつの要因でもあるようなので、結果オーライです(笑)」(角田さん)

わかりやすいイラストを封印、変身アイテムをモチーフに

 ロート製薬がプラスチック製の目薬ケースをつけたのは1986年のこと。それまでは“サック”と呼ばれる袋に目薬を入れていたが、水に濡れて持ち運びしにくいという理由でケースが作られるようになった。そして、医薬品とキャラクターコラボの走り的存在だったのが、『ロート こどもソフト』である。

 「当時、子供が目薬を使うのに抵抗があり、尚且つ学校のプールの衛生面もそんなに良くなかった。子供達が充血を起こしやすい環境のなかで、炎症を抑えるのに使ってほしいと思い、そのプロモーションとしてキャラクターをつけたのがきっかけです。といっても当時はケースにキャラクターを印刷しただけのもの。今みたいに作品の世界観ごと商品に落とし込む、という発想はなかったと思います。でも今は、技術も発達して、娯楽の種類も昔とは桁外れに違う。ユーザーのハードルが高くなっているからこそ、中途半端なものは出せないですよね」(角田さん)

 昔のキャラクター目薬といえば、わかりやすくイラストが主張されているデザインが多かった。しかし、今回のコラボ目薬はキャラクターはパッケージにシルエットとして描かれているのみで、あとはコスチュームや変身アイテムなど、作品のモチーフ・世界観を商品に落とし込んだデザインとなっている。これには何か特別な理由があるのだろうか?

 「セーラームーンって知名度がある分、その捉え方も様々だと思うんです。だから、キャラクターをあえてシルエットにして世界観を膨らませたほうがより多くの方に愛されるのではないのかと考えたんです。けど、我々の願いはキャラクターの力を借りて商品を広めるだけではなく、コラボをきっかけに目薬の良さに気づいてもらうこと。“可愛い!”の先にある“目薬って良いよね!”という本当の意味での充実感をお客様に与えられれば、大成功と言えるのかもしれません」(角田さん)

(文/Kanako Kondo)

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