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50周年の『人生ゲーム』、“アナログ”なボードゲームが売れ続ける理由とは?

  • 初代『人生ゲーム』パッケージ

    初代『人生ゲーム』パッケージ

 年末年始、親戚が集まってボードゲームに興じる…実は、そんな光景が徐々に復活しつつある。実際、ボードゲームの国内売上は、2009年から2015年にかけて5倍近くに上がったという。そんな中、1968年に発売開始した国民的人気ボードゲーム『人生ゲーム』(タカラトミー)が50周年を迎えた。シリーズ全60作品で累計出荷数は1400万個を突破。老若男女を問わず楽しむことができる本ゲームは、なぜ多くの人に愛され続けているのか? トイゲーム企画課・池田氏に、『人生ゲーム』が“成功”と”苦難”のはざまでどう半世紀を乗り切ってきたかを聞いた。

“世知辛い”イベント満載「人生ゲームのマス目は不況のバロメーター」

 日本のボードゲーム史において、圧倒的な知名度を誇る『人生ゲーム』だが、そもそも開発者は誰かを池田氏に聞くと、「元々アメリカで『THE GAME OF LIFE』とういう名で発売されたゲームを、日本でローカライズされて発売されたのが始まり」と説明してくれた。創作者はルーベン・クレイマーという人物で、1983年に発売された『人生ゲーム』(3代目)から、日本オリジナルのマス目に変更になったようだ。

 それから半世紀に渡って発売され続け、2017年4月に発売された『人生ゲームMOVE!(ムーブ)』がちょうど60作品目になる。なお、『人生ゲーム』の中で特に売れた作品は『人生ゲーム 平成版』(1989年発売)なのだとか。池田氏によれば、「時代を反映した『人生ゲーム』が過去にはよく売れた経緯があり、例えば、元号が昭和から平成に変わった際に、その当時のトレンドや世の中の興味を盛り込んだ、今までの『人生ゲーム』とは一味違う“大人”をターゲットにしたことで爆発的ヒットとなりました」とのこと。
 「晴海でコンパニオンギャルをナンパ」「核シェルターがお買い得」「副業で始めた個人輸入代行業が大ヒット」といった、ユーモラスな時事情報やシリアスな世相を積極的に取り込んだ内容は、『人生ゲーム』の流れを変える潮目となった。以後も、「レアアース」「ちょい足しレシピ」など時流を反映した言葉や、「歌声喫茶」「オバタリアン」「お立ち台」など、世代によっては懐かしく、別世代にとっては意味不明な“時代を象徴する言葉”も多数登場している。
 また、ここ数年『人生ゲーム』のマス目が“現代の闇”を感じさせる大人なストーリーになっているとネットで話題に。この点について池田氏は、「大人向けに発売した『人生ゲーム獄辛』などの辛口テイストの人生ゲームは、就職できるチャンスが少ない、結婚しにくい、支出がかさむ、負のスパイラルに陥るなど、現代社会が抱えるリアルな問題点を切り込んだ内容となっているため、それらを自分と置き換えて楽しんでいただいている」と解説。これまでも「経済摩擦」「外圧に屈しない」「米不足」など様々なテーマを落とし込んできたが、世知辛いイベントを盛り込む意図については、「『人生ゲーム』は“時代を映す鏡”だと思って開発しており、マス目を見るだけでその時代に何が流行って何が問題だったかなど、ある程度分かるようになっています」と説明。つまり、世知辛いイベントを集中して入れようとする意図はなく、数年前の不景気時はそうした“負の話題”が集中していただけ。『人生ゲーム』が“不況”のバロメーターともなっていたことが見えてくる。
 そして昨年の12月、auとコラボした「徳を積む」人生ゲームのサービスが開始。これはKDDIとの企画で、SNSで話題になるように特化。案の定「徳」をためてよりよい来世を目指すという、“現世を諦めた”世捨て人感がネットを大いに賑わせた。また、これまで「よしもと芸人」「アントニオ猪木」「阪神タイガース」などとコラボしてきた同ゲームが、ロックバンド・B’zとコラボした『B'z 人生ゲーム』を2018年に限定販売(B'z 30周年イベント会場での限定商品。タカラトミーからの一般販売はなし)。プレイヤーはB'zのスタッフとなり、バンドを盛り上げながらNo.1スタッフを目指すという内容。どんなマス目があるのか、想像して思わずニヤリとしてしまうタイトルだ。

現代の闇“ディスコミニュケーション”の解決法

 近年、これまでの“ゆり戻し”とも言えるアナログ回帰の流れでボードゲーム人気が高まっている。しかし、この半世紀を振り返った時、ボードゲームが苦戦を強いられた時期も当然あったと池田氏。「最初にテレビゲームが台頭してきたとき、ゲームだけではなく玩具全体が大きな影響を受けました」と同氏が振り返るように、1980年代に入ってからのファミコンブームは、ボードゲーム界だけでなく、あらゆる玩具に影響を与えたようだ。果たして、その逆境をいかにして乗り越えたのだろうか。
 「テレビゲームなどデジタル玩具は画面を通じて遊ぶのに対して、『人生ゲーム』の様なボードゲームは盤面を囲んでお互いに顔を見ながら会話したり盛り上がったりできるので、このリアルコミュニケーションという部分に着目し、アナログゲームの良さをしっかり伝えてきました。なので、今ではデジタルはデジタルの良さ、アナログはアナログの良さということでしっかり棲み分けができ、影響を受けることが少なくなったと感じています」(池田氏)。

 そして昨今の“ボードゲームブーム”の要因については「スマートフォンの普及により個人で過ごす時間が増加し、人と人とのコミュニケーションが減少したことで、リアルなコミュニケーションを“あえて”求める傾向が出ている」と池田氏は語る。人と人とを“繋ぐ”もの(ツール)の一つとして、ボードゲームが選ばれるようになったと感じているようだ。
 ネット化が進む昨今は、他人との意志疎通が苦手だったり、苦痛に感じてしまう“ディスコミュニケーション”が問題となっている。そうした問題意識が広がる中で、誰とでも自然とコミュニケーションが図れる“アナログ”なボードゲームへの回帰は自然な流れとも言える。ただ池田氏は、「アナログ回帰の流れは感じていますが、まだまだ一部の層にとどまっていると思います。もっと業界全体で大きな仕掛けをして、アナログゲームの良さをしっかり伝えていく必要があると考えています」と、ボードゲーム界のさらなる発展を見据えている。

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