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大杉漣インタビュー『俳優人生40年、苦労という言葉はあてはまらない。今なお迷いっぱなし(笑)』

ターニングポイントは北野武監督の「そこにいること」を求める演出

――それはどういった経験ですか?
大杉漣北野監督は僕に「何かをしてくれ」ということは一切求めなかったんです。「そこにいてくれればいい」とおっしゃいました。僕らの仕事って、普通は何かをやること、演ずることを求められるのですが、ただ“そこにいること”を求められる演出は初めてでした。それは、まさに転形劇場でやってきたことと通じると感じたのです。何かを演じるということより舞台の上に存在すること、それはまさに転形劇場の演出家・太田省吾氏が僕らに求めていたことでした。

――大きなターニングポイントになったんですね?
大杉漣そうですね。北野武さんの映画に出会えたことは、次への歩みにつながったと思います。もちろんこうして俳優を続けてこられたのは、様々な作品や人との出会いがあったから。俳優として挑む事のできる現場を与えてくれたからこそ、今があると感じています。

――とても話題になったドラマ『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)も、そういった出会いが結びつけた縁だとお聞きしています。
大杉漣十数年前に、僕ら6人(大杉漣、光石研、遠藤憲一、松重豊、田口トモロヲ、寺島進)の映画祭を下北沢の映画館でやっていただいたんです。その前にも集まったりしていたのですが、「いつかみんなで一緒に映画をやりたいね」という話もしていて、実際に企画を立ち上げていた時期もありました。そんな矢先にテレビ東京さんから思わぬオファーがあり、今回のような形になったんです。

――壮大な時間の流れのなかで実現した番組なんですね。
大杉漣今だから実現できたんだと思います。全員が数多くの現場を踏み、そこにいる。撮影現場のみんなの顔は、とても充実し楽しいものでした。館山ロケは、ほぼオジさんの合宿のようでしたし、あんな時間はなかなか経験できませんね。

大杉漣が演じる大杉漣であって、僕そのものではない

――みなさん脇役だけでなく主演もされていて、“バイプレイヤー”という言葉がブームになっている感じも受けます。
大杉漣個人的にはどう見られても、どう呼ばれてもかまわないです。腰を据えて表現の世界であたふたしているのが僕の仕事です。ドラマを観るみなさんは、思うまま楽しんでいただければと思っています。

――『バイプレイヤーズ』もそうですが、フェイクドキュメンタリーといった俳優さんがご本人役で出演するドラマが増えています。“役”を演じることが仕事の俳優さんにとっては、どういう距離感なのでしょうか。
大杉漣基本はフィクションです。それが本当か嘘かは視聴者の方が判断し、おもしろがっていただければと思います。演技について言えば、役柄には演じる“その人そのもの”が現れるもので、セリフ(言葉)一言ひとことのなかにその人の生き方が出るものだと考えています。演じるというのは楽しさもあるけど、その人そのものが見え隠れする怖さもあると思っているのです。
 『バイプレイヤーズ』に関しては、皆さんラフに作品と向き合っていますが、ラフにいることの大変さも皆さん熟知されていると思います。僕が演じる大杉漣役もやはり僕そのものではないです。デフォルメしたりアレンジしています。と言っても素の部分もたくさんありますが(笑)。

――本当に素敵な6人でした。ずっと続けていきたいのでは?
大杉漣撮影が終わったあとも、「風邪ひいてない?」「どこどこの何が美味しいよ」とかそんな他愛なきメールが来ます。恐らく僕たちは、『バイプレイヤーズ』が終わったという安堵と、ちょっとした寂しさを感じているんだと思います(笑)。本当はすぐに飲みに行きたいんですが、今はしばらく我慢して会わないようにして……でもまたそのうち集まると思います。
 今回は『バイプレイヤーズ』という広義なタイトルでしたが、これは僕ら6人じゃなくてもいいわけですし、いろいろな形の『バイプレイヤーズ』があると思うんです。女優さんバージョンだっていい。今回は僕らの作品になりましたが“バイプレイヤー”と呼ばれる方たちは、他にもたくさんいますからね。もし続きがあるなら、もちろん僕たちも今回とは違った形のアプローチはしたいと願っています。
――いろいろな想いが交錯したドラマだったんですね。
大杉漣他の現場では味わえないものがありましたね。みんなのいい意味でのワガママだったと思います。しかし、よくよく考えてみれば、それは監督さんスタッフさんにワガママを言わせてもらっていたんですね。彼らに“放牧”されている感じです(笑)。ノウハウやシステムではなく、気持ちがものを作っていくんだということを改めて感じさせてもらった現場でもありました。
 『バイプレイヤーズ』は、オジさんたちの長い修学旅行もしくは部活だったんじゃないですかね。実際、まくら投げもやりましたから(笑)。ああっ、今こうして話していたら、またみんなに会いたくなりました(笑)。
(文:磯部正和/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん

 仕事にゲームに奮闘するサラリーマンの稲葉光生(千葉雄大)は、会社を退職してしまった父・博太郎(大杉漣)の真意を知るべく、自分がプレイするゲーム『ファイナルファンタジーXIV』に誘い込み、正体を隠してともにプレイを始める。これまで仕事一筋だった父・博太郎(大杉漣)は、60歳を超えてからオンラインゲームにハマり、相手が息子とは知らず、ゲームの世界でともに大胆な挑戦をしていく。
 互いに“秘密”を抱えながらも、ゲームの世界で相手を理解し、次第に距離を縮めていくふたり。ぎこちない関係だった父と息子がオンラインゲームを通じて再び親子の絆を取り戻す。

実写パート監督:野口照夫
ゲームパート監督:山本清史
出演:千葉雄大 大杉漣 石野真子 馬場ふみか 袴田吉彦 長谷川初範
MBS 4月16日(日)スタート 毎週日曜 深夜0時50分〜
TBS 4月18日(火)スタート 毎週火曜 深夜1時28分〜
【ドラマ公式サイト】(外部サイト)
(C)2017『ファイナルファンタジーXIV 光のおさん』製作委員会

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