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憎たらしい“コスいおじさん”なのにどこか愛らしい近藤芳正の魅力
実はダチョウ倶楽部の前身・キムチ倶楽部出身という異色の経歴
「近藤さんは実は苦労人で、三谷さんに出会うまでは、30代を目前に自身の才能に限界を感じ、一時は俳優として生きるのを諦めかけていたと言います。このほか2012年、TOKYO FMで放送された鈴木おさむパーソナリティのラジオ番組『よんぱち 48hours』によれば、ダチョウ倶楽部の前身・キムチ倶楽部に在籍していたこともあり、経歴も非常にユニーク。ですがご本人はどちらかと言えば内面的で、普段は黙って人間観察をされるタイプ。そんな観察眼と客観性、豊富な人生経験が、今の近藤芳正という俳優の存在感とお芝居を支えているように思えます」(エンタメ誌ライター)
三谷作品で言えば、『THE 有頂天ホテル』の父と愛人を別れさせたい大富豪の息子など、物語を多少引っ掻き回す役柄を好演。また『みんなのいえ』のシナリオライター飯島(ココリコ田中)の妄想劇に登場するマンション管理人役、『ザ・マジックアワー』の妻夫木聡演じる備後登に騙されて映画機材を勝手に借りられる映画監督役など、わずかなシーンにしか登場しないにも拘らず強い印象を残すのが特長で、そうした三谷作品のイメージからか、「ちょっとイラッとするが、どこか愛嬌のある小物を演じる役者」の印象が強い。昨今の代表作は前出の『真田丸』をはじめとして、同局の朝ドラ『おひさま』(2011年)、『純と愛』(2012年)や『税務調査官・窓際太郎の事件簿』(TBS系)などのシリーズものや、1話のみのゲスト出演も数多い。
ストーリーの中で重要な位置を占める近藤版“コスいオヤジ”
その代表例が、反町隆史主演で人気コミックを実写化した学園ドラマ『GTO』(1998年/フジテレビ系)だ。近藤が演じたのは、破天荒な教師・鬼塚(反町)を目の上のたんこぶにする教頭・内山田(中尾彬)の腰巾着で学年主任の中丸教師。虎の威を借りて鬼塚に陰険な言動ばかりしていたが、彼らが務める武蔵野聖林学苑が合併吸収の危機に陥った際、鬼塚のアツい行動に感化されて協力。学苑を守る急先鋒を担った。
悪役なのに憎めない愛らしい…“近藤らしさ”を確立
脇役が多かった近藤だが、その悪役的なイメージを活かし、2015年には映画『野良犬はダンスを踊る』で主演。年齢の衰えから引退を決意したベテランの殺し屋を演じ、同作はモントリオール世界映画祭の「フォーカス・オン・ワールド・シネマ」部門に選出された。こうした哀愁漂うおじさんから、主人公を見守る温かいおじさん。また小狡いのにうまく立ち回れない不器用なおじさんまで。多彩に演じる近藤だが、共通している点は、その愛らしさと憎めなさだ。嫌われたり、「コスい!」と罵られかねない役柄にも愛情を感じさせる確かな演技力とその存在感。群雄割拠の芸能界において近藤は、独自のポジションを作り上げることに成功した俳優のひとりと言えるだろう。
(文:衣輪晋一)