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(更新: ORICON NEWS

【連載8】SMAP 5人の役割を考察:稲垣吾郎 解散発表後はじめてファンの前に立った、個性派集団の中のバランサー

“SMAPの魅力質量保存の法則”、変わらないアイドルの王道

 他にも、彼の余裕や安定を物語るものがある。それは、ビジュアルと歌と笑いに関してだ。化学の法則のひとつ“質量保存の法則”は、「化学変化の前と後で、物質の総質量は変化しない」ことを指すが、長くSMAPというグループを見ていると、美しさだったり、輝きだったり、ユーモアだったり、様々な場面で5人が常に補い合って、魅力の質量を保存しているのを感じる。ビジュアル面に限って言えば、中居や草なぎは、役柄に合わせて体重を落としたり、中居にいたっては、坊主頭になったこともあった。木村や香取は、芝居から離れている時は髪型で冒険することも少なくなかったし、木村の場合は日焼け、香取は体重の増減が気になったりもした。が、稲垣だけは、25年間常に安定のビジュアルをキープ。もっと言えば、他メンバーが役作りや趣味の流れで、アイドルらしからぬビジュアルになっているとき、稲垣はそのカッコ良さを強化しているようにも感じられた。

 一人一人の魅力もすごい。でも、5人集まると、その華やかさは最強になる。誰かが自分の魅力のボリュームを控えめにせざるをえないとき、稲垣が自身の魅力のボリュームを調整することで、SMAP自体の魅力を一定以上に保ち続けた。私は、これを密かに“SMAPの魅力質量保存の法則”と呼んでいた。この法則は、実はSMAPの歌唱についても当てはまる。歌があまり得意でないことを自覚している草なぎがいて、歌下手をネタにしている中居がいて、香取の歌唱はパワフルで、木村の歌唱はエモーショナル。稲垣の歌声も、90年代は“エンジェルボイス”などと評されたものだが、実はピッチ(音程)はメンバー一安定しているし、喉も強く、声量もあって、さらにアイドルらしい甘さもある。ビジュアルと歌、どちらに関しても、25年間、SMAPの中で誰よりもアイドルの王道を貫いてきたのが稲垣なのである。

“ピンチはチャンス”、稲垣の存在の大きさを改めて感じたSMAP復活劇

 もちろん、試練が彼を強くした面もあるだろう。15年前、テレビに「稲垣メンバー逮捕」というニュースが流れたとき、「SMAPはこの先どうなるんだろう?」「明日のライブは?」といてもたってもいられなくなり、私は翌日、急遽ナゴヤドームに向かった。4人が最初に謝って、コンサートはぎこちなさを残しつつも無事に終了した。その翌週のスタジアムライブでは、メンバーの頑張りが印象的だった。5ヶ月後に稲垣が復活して、2002年のツアーでは、いろんな意味でSMAPがより強く、大きくなったことを実感した。稲垣自身の存在の大きさを改めて感じた。5人での、鮮やかなSMAP復活劇。あの奇跡を見たからこそ、ファンはまだ諦め切れないのだ。SMAPの新たなる奇跡を。

 SMAPには、ライブのときにテッパンの盛り上がりをみせる“メンバー紹介曲”が3曲もある。1999年のアルバム『BIRDMAN 〜SMAP 013』収録の「Five True Love」、2002年の『SMAP 015 Drink!Smap!』収録の「FIVE RESPECT」、2012年の『GIFT of SMAP』収録の「CRAZY FIVE」。この中で、「FIVE RESPECT」は、稲垣がSMAPに復帰したことがきっかけになり、新たに生まれた曲だ。いずれも、曲制作には中居が関わっているが、「〜True Love」は森且行の脱退後の5人のグループ愛を歌に託し、「〜RESPECT」は、稲垣が活動を休止していたその“不在の時間”に感じたメンバーへの大切さを歌詞にしている。また、「Crazy〜」には、草なぎの活動自粛が明け、5人での未来を誓った決意表明のような力強さがある。「〜RESPECT」で5人は、“ピンチはチャンス”だと歌った。「CRAZY〜」では、“くじけそうでも拳をあげろ”“We are all one”と歌った。

あらゆる能力が鍛えられた、SMAPのスーパーバランサー

 彼は自分のことをよく、「SMAPの中間管理職だから」と言う。年齢的にも真ん中で、ライブのMCでは中居に真っ先にいじられ、その度に当意即妙な切り返しをみせる。木村とは“友達付き合い”を感じさせるエピソードも少なくないし、ヘルシーな生活スタイルが草なぎと似ていることはファンの間でも有名で、2人は“ロハス”と呼ばれている。香取は、年下なのに稲垣を“ゴローちゃん”と呼び、ときに苦手なフリをしてみたり、適度なツンデレ具合で稲垣を翻弄する。稲垣吾郎という人は、SMAPの中では“スーパー”のつくバランサーだ。あの個性派集団の中でバランスをとっていくためには、観察力、適応力、瞬発力、抑制力に爆発力……と、社会を渡っていく上での、あらゆる能力を鍛えざるを得なかったはず。

 面白いのは、稲垣だけが、SMAPの中で他メンバーからの呼ばれ方が四人四様なのだ。中居は、「稲垣さん」と呼び(くだけた場では“吾郎”と呼ぶこともあるけれど)、木村は「吾郎」、草なぎは「吾郎さん」、香取が「ゴローちゃん」。できることなら、そんなふうにこれからもずっとずっと、メンバーにいじられる彼であってほしい。

 かつてのインタビューで、「(SMAPの仲間感は)『Marching J』のようなイベントで、アドリブというか、その瞬間瞬間のノリを大事にしていっているときに感じる」と答えていた。そんなSMAPの“ノリ”を、より軽妙に、洒脱にしているのは、他ならぬ彼の存在なのである。
(文/菊地陽子)

【連載9】に続く

【連載1】SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?
【連載2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」
【連載3】SMAPきょう25周年 記者が見た5人の真実 PART1
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART2 〜中居正広と木村拓哉の素顔〜
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART3 〜稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の素顔〜
【連載4】逆境に強いSMAP ライブで見せた成長と結束の物語
【連載5】SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日
【連載6】SMAP 5人の役割を考察:中居正広 自分たちのことでタブーは作らない、“自虐”という神センス
【連載7】SMAP 5人の役割を考察:木村拓哉 バッシングされるスーパースター、逃げない男の真実

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