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2016年は洋高邦低? 夏の洋画攻勢で9年ぶり邦洋シェア逆転に注目

2016年映画シーンも上半期の成績が出て後半戦のスタートとなる夏休み興行に突入。これまでのところ洋画のトピックが目立ち、その健闘ぶりが浮き彫りになっているが、夏休みを終えたところで今年の大勢が見えてくるかもしれない。『ファインディング・ドリー』を始め洋画の大ヒットシリーズ続編が続く夏の洋画攻勢の結果によっては、実に9年ぶりとなる年間興行収入の邦洋シェア逆転も現実味を帯びてきそうだ。

2016年上半期、『スター・ウォーズ』『ズートピア』がシーンを席巻

 今年上半期の映画興行では、唯一の100億円超えとなっている『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(115億円)のほか、最終75億円まで伸ばしてきた『ズートピア』など洋画の健闘が目立っている。年初の出足こそ期待された『ブリッジ・オブ・スパイ』『パディントン』などが5億円前後の結果に終わり、厳しいスタートかと思われたが、『オデッセイ』(35億円)のヒットに続いて、アメコミ大作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が20億円前後と続き、シーンをにぎわせた。
 一方、邦画を見ると、『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』(60億円)、『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』(55億円)、『映画 ドラえもん 新・のび太の日本誕生』(41億円)と定番のアニメシリーズがやはり好成績を残している。実写作品では『信長協奏曲』(46億円)の大健闘のほかは、近年の傾向ではあるがなかなか40〜50億円に届く大きいヒットが生まれていない。
 前半戦の状況を見ると、洋邦ともに大ヒット作は生まれており、興収のトータルでのシェアは拮抗しているようだ。しかしながら、洋画上述2作のような規模感のあるヒットを生み出しているぶん、興行の勢いは洋画のほうにあるようにも感じられる。

ジブリアニメがない今夏は『ファインディング・ドリー』VS『シン・ゴジラ』本命対決

 そんななか7月に入り、年間の興行成績を左右する夏休みの大作が続々と公開され始めている。洋画では先陣を切って『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が封切りされ、公開週末の興収で前者は4億円強、後者は6億円弱と好スタートを切っている。そして、今年の夏休み映画の大本命、アニメ映画の全米興行記録を更新する記録的な大ヒットになっている『ファインディング・ドリー』が先週末から日本でも公開され、期待通り公開3日間で11.7億円。最終で100億円超も視野に入る破格のスタートとなった。夏休みシーズンの突入という絶好のタイミングでの大きな話題作りに成功。いい流れで夏を迎えることができている。
 一方、邦画を見ると、夏の本命であり、最大の話題作は、庵野秀明総監督による12年ぶりの日本版『シン・ゴジラ』。7月29日の公開に向けてようやく全容が明らかになり、物語のテーマ性とリアリティあふれるストーリー、ゴジラの描かれ方、映像のクオリティなど、作品としての評価はすこぶる高い。しかし、往年のゴジラファン、映画ファンをうならせる社会派の作品にはなっているが、“子どもが楽しめる夏休み映画”ではないかもしれない。ファミリー層にどこまで訴求できるかがカギになるだろう。子ども向けの『ファインディング・ドリー』とは異なる層に響くヒットになりそうだ。
 ジブリアニメのない今夏、ファミリー層を含むオール世代に向けたヒットをねらう邦画アニメは、新海誠監督の『君の名は。』(8月26日公開)。熱烈な支持を受けているコアファンだけではなく、一般層に向けられた新海作品がどうなるか。同作の結果が邦画夏興行の行方を左右するかもしれない。

 そんな本命以外にも、今夏の注目作は多い。洋画では、すでにアメリカでヒットしている大作が続々と公開される。そのなかでも伏兵になりそうなのが、『ゴーストバスターズ』(8月19日公開)。全編に渡ってちりばめられる“笑いのツボ”もセンスの良さを感じさせるが、1984年公開のオリジナル作のほか、数々の80年代ヒット映画をいじりながらもリスペクトと愛にあふれた作りは、映画ファンの心をしっかりと掴みそう。映画ファンの間で、今夏No.1の“予想外におもしろかった映画”になりそうな予感がある。
 そのほかにも、『ハリポタ』スタッフが手がけるアクションアドベンチャー大作『ターザン:REBORN』(7月30日公開)、アメリカ童話をディズニーがアニメを経て実写化する『ジャングル・ブック』(8月11日公開)、人気シリーズ最新作『X-MEN:アポカリプス』(8月11日公開)、亀ニンジャが街を守る人気作続編『ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影(シャドウズ)』(8月26日公開)と強力なタイトルがならぶ。

 邦画も負けてはおらず、手堅いヒットが確実な夏休みファミリー向けの定番『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ」』『ONE PIECE FILM GOLD』(公開中)のほか、生田斗真主演の『秘密 THE TOP SECRET』(8月6日公開)、児童文学の名作を3DCGアニメ化する『ルドルフとイッパイアッテナ』(8月6日公開)、土屋太鳳主演の『青空エール』(8月20日公開)などが続く。

潮目が変わっている? 4年間縮まり続けている邦洋シェア差

 これらの大作、話題作がひしめく夏休み興行が終わった段階で、2016年興収の邦洋シェアがある程度見えてくることだろう。洋画を見ると、秋にはスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』や、今年前半のヒット作『バットマン vs スーパーマン』から続くDCコミックのアメコミ大作『スーサイド・スクワッド』。さらに冬には『スターウォーズ』シリーズのスピンオフ『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』が続く。上述のような今年のこれまでの概況と現状の勢いを見ると、実に9年ぶりとなる邦洋シェアの逆転も実現性を帯びてきているように思える。

 邦洋シェアは、2007年の洋画52.3%を最後にこの8年間、邦高洋低の状況が続いている。しかしその差は、この4年間で見ると年々確実に縮まってきている。邦画の占める割合が、2012年の65.7%から、2013年は60.3%、2014年は58.3%、2015年は55.4%。邦画全盛の一時期とは異なる次なる時代を迎えつつあるのかもしれない。
 これまでにも言われてきていることだが、洋画のブランド力の高い強力シリーズものの有無がその年の興行ボリュームを左右しており、昨今のハリウッドが大ヒット作シリーズ続編を次々に製作している流れがそのまま昨年、今年と日本のシェアに影響を及ぼしている。

 そこには、テレビを始めメディアで大きく取り上げられるような、お祭り感のあるハリウッド大作が続々と公開されることで、若い世代などライトなエンタメファン層と洋画の距離が近くなっている状況もある。世の中の話題になることで興味を覚え、洋画を観に行くようになった人たちも増えているように感じられる。ハリウッドの大作シリーズ続編攻勢は、日本のこれまでの洋画不況の潮目をチカラ技で変えつつある一面があるのではないだろうか。

 今年、洋画シェアが9年ぶりに邦画を上回ることになれば、それもまたひとつの話題になってシーンを盛り上げることだろう。それは邦画が低迷しているというわけではなく、大作に引っ張られて洋画のおもしろさに目を向けた人、気づいた人が増えたということであり、そこから映画館に足を運ぶ人たちが増えれば、邦洋関係なくおもしろい作品はよりヒットしていくことにつながる。まだまだ年間の興行結果がどうなるかは不透明な部分が多いが、シェア逆転というトピックからのシーンの活性化にも期待したくなる。

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