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小栗旬インタビュー『芝居だけをしている現状がもったいない』

フジテレビ月9枠でトレンディドラマの壁を打ち破り、時代劇の可能性を切り開いた『信長協奏曲』のステージがいよいよ映画へ。数々の漫画原作の実写化作品をヒットに導いてきた小栗だが、今回は企画のスタートから2年。新感覚の“戦国エンタテインメント”をドラマから映画へと作り上げていくなかでは、さまざまな困難にも直面し、役者魂が揺り動かされることもあったようだ。そんな同作が完成したいまの小栗の想いとは? 歯に衣着せぬ語り口が小気味いい小栗が、いまのエンタメシーンで俳優が置かれる現状への疑問、その打開への熱き野望を語ってくれた。

理想論に違和感みたいなものがあった

――『フジテレビ開局55周年プロジェクト』のラストを飾る本作。ドラマから映画へと続くビッグプロジェクトに対して、どのようなテーマを掲げて挑まれていたのですか?
小栗とくにこれという伝えたいことはなかったんですけど、最初は(苦笑)。もともとの原作は、みんなが知っている歴史劇のなかに(主人公の)サブローというキャラクターが現代からタイムスリップして織田信長になり、歴史を変えてはいけないと奮闘していく。そこに明智光秀が出てきて、ふたりで一人の信長みたいなことになっていくところが原作のおもしろい部分だったと思うんですけど、ドラマ版は途中から原作とは違うオリジナルのストーリーになっていって。
(ドラマが始まった)最初の頃、僕はサブローの言っている理想論みたいなものに自分のなかで違和感みたいなものがあったんです。いくらなんでも甘過ぎないか? と感じてしまって。そこを全面に打ち出していくのも(時代劇になじみの薄い、若い人たちが観る)月9ドラマだからそうなるのかなとも思いながら、演じていたんです。でもドラマから映画に進むまでの間に、いまの時代も時代でいろいろなことがあり、若者たちを含めた日本国民が国会前で戦争反対を叫ぶような状況を経ていくなか、サブローのなかでも曲げたくない純粋な気持ちみたいなものがあって……。でも、それが最後の最後に昇華したのかな。作品が完成したいまはそう感じています。

――作品世界を作り上げていくなかで、方向性が見えてきたということでしょうか?
小栗そうですね。制作スタッフと話し合いを重ねるなかで、ドラマの頃のサブローは「自分がいた時代は平和だった、(タイムスリップした戦国時代も)そういうふうにしたい」と言っていたんですけど、映画では「(平和な時代は)きっと来る」という表現に変えさせてもらったんです。やっぱりいろいろと考えていくと、サブローのいた時代も、もしかしたら平和ではなかったのかもしれないって。でもみんなが戦ったり、争ったりしなくていいのが、いちばんハッピー! というサブローの考え方は通したい。
 そこで、映画では「平和な時代がいつ来るかわからないし、自分の時代には叶えられないかもしれないけど、そういう時代はきっと来るから、それを信じてみんなで生きてほしい」というサブロー自身の希望として、最終的にいい形でゴールできたと思っています。自分が演じたキャラクターですけど、その考え方に対して、一回でも彼がブレてしまうと作品がダメになってしまう。なのでこだわりをもって演じて、その結果、ひたすら純粋にそのことを信じているキャラクターになったと思います。

役者としてはすごくおもしろい場所

――サブローを体現するにあたっては、どんなことに注意されましたか?
小栗原作のサブローは、戦国時代になじみ過ぎている気がするという話は、企画段階の最初からしていて。ドラマでは確信犯的に、戦国時代に連れていかれても、いきなりは戦えないし、目の前に日本刀が出てきたらビビってしまう。そういう部分は尾を引いていかなければいけないと思っていました。映画では、ドラマでは戦いを避け続けてきたサブローが、初めて戦いの前線に立つことになります。そうすることで、彼は大きな矛盾と向き合っていくことになる。僕も意見を出させていただいて、監督が脚本を何度も直してくれました。
 戦いたくないのに戦って、殺したくないって言っているけど、人を殺さない限り、彼の理想にはたどり着けない。言っていることとやっていることが真逆の環境のなかで、戦をしていかなくてはいけないんだということを決断していく彼は、ヘンな話、戦うことは当たり前だし、武功をあげることが最大の栄誉である戦国時代において、合戦の新しい見せ方ができる存在になったんじゃないのかなと思います。

――クライマックスの本能寺の変での、光秀の決断もドラマチックでした! 今回、織田信長と明智光秀の二役を演じるという偉業は、大変だったのでは?
小栗どっちも本物の信長でも光秀でもない設定なので、何だかもうよくわからない感じでしたけどね(笑)。「今回、織田信長について調べたりしたんですか?」ってよく聞かれるんですけど、調べたところでそれが役に活きるわけではないんですよ(笑)。結局本人とは違うから、名前を借りて映画ならではの解釈で演じさせていただいた感じです。

――歴史上の人物を演じるおもしろさは、存分に感じられましたか?
小栗この信長をやらせてもらって、改めて時代劇ってファンタジーだなと思いました。何があっても、どんなことをしても絶対に間違いだとは誰も言えない時代なので。本当にいろいろなことができるから、役者としてはすごくおもしろい場所だなと思います。例えば帰蝶(柴咲コウ)とサブローの関係性って、いまの時代では描けないラブストーリーだと思うんです。それが、現代人のサブローとあの時代の帰蝶で作れるというのは、ひとつおもしろいことだなあと。

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