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樋口真嗣監督インタビュー『ビジュアルは原作に忠実に撮った―だから答えは漫画にある』

新キャラクター・シキシマが生まれた理由

――壁の外の、まだ見たことのない世界に思いを馳せるエレンの、巨人への畏怖以上に自由を求める若さ。そんな彼とともに、高い壁に挑むアルミン(本郷奏多)たち人間兵のドラマには、青春群像劇のようなさわやかさも感じました。
樋口あぁ、いいですねぇ。自分では恥ずかしくて言えないんですけどね。もう今年で50(歳)になるおっさんなので“もう青春でもねーだろっ!”とも思うんですけど(笑)。ただね、5年前までは、20代の主人公に自己同一化できていたのが、さすがにできなくなりはじめていて。撮っていて“あ、俺は春馬のきらめきに自分を重ねられない! もうダメだ!!”って。シキシマ(長谷川博己)というキャラクターが生まれたのも、シキシマみたいな存在がいないと、自分を通すフィルターになれないというのか。かつての自分と今の自分、両方出して、戦わせることで、向こうみずでまっすぐな主人公たちが描けたというのか。
――シキシマは、監督を投影したキャラクターだったんですね?
樋口『赤ひげ』って映画(1965年/黒澤明監督:江戸幕府の設置した医療機関・小石川養生所を舞台に、所長の赤ひげ(三船敏郎)と青年医師(加山雄三)の心の交流を描く)があるんですけど、10代の頃に初めて観たときには、腹が立ったんですよ。加山雄三と三船敏郎が対立する話で、結果的には三船敏郎の常識が、加山雄三の若さをねじ伏せるんですよね。当時の自分としては、それがものすごく許せなかった。後編を観ていただければわかるんですけど、三浦春馬(扮するエレン)をどう映すかという点において、まだ俺は年寄りにはなってないなって(笑)。いま『赤ひげ』を観ると(赤ひげの正しさは)痛いほどよくわかるんですけどね。でもあれじゃあ、次の世代に何かを託せないんじゃないか? って。そういった意味で今回は、世代間の抗争にしていくことで、エレンというキャラクターに自分を託せるという仕掛けを作りました(笑)。

――9月19日の封切りが待ち遠しいです! 『赤ひげ』の加山雄三扮する保本の清潔な自尊心や、本作のエレンの折れそうなほどまっすぐな勇気には、観ていて応援したくなるような、それでいて観終わった後には打ちのめされてしまうほどのパワーがありました。人はいくつになっても、大きなものに立ち向かうとき、少年のような青臭さが必要なのかもしれませんね?
樋口そうですよね。ただ、最初に原作漫画を読んだとき“21世紀になると少年漫画ってこうなるのか!”っていう新しさを感じたんです。あがきも含めたところで、自分たちもかつて『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズで、碇シンジという主人公たちに自分を託していた。その『エヴァ』を観て育った、諫山さんくらいの世代の人たちが、彼らなりのまた新しい、立ちはだかる強い力に対して立ち向かっていく物語を作っていることは、すごく頼もしくもあって。もやもやしているものと戦っている感じがするわけですよ、漫画を描きながら。それが眩しかったんですよね。
(文:石村加奈)

進撃の巨人

 その日、人類は思い出した。百年以上前、突如現れた巨人たちに、人類の大半は喰われ、文明は崩壊した。この巨人大戦を生き残った者たちは巨人の侵攻を防ぐため、巨大な壁を三重に築き、内側で生活圏を確保して平和を保っていた。だが、ある日、想定外の超大型巨人によって壁は破壊され、穿たれた穴から無数の巨人が壁の中へと侵入してきた……。
監督:樋口真嗣
出演:三浦春馬 長谷川博己 水原希子 本郷奏多 三浦貴大 桜庭ななみ 松尾諭 渡部秀 水崎綾女 武田梨奈 石原さとみ ピエール瀧 國村隼
2015年8月1日・後篇9月19日公開
(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会(C)諫山創/講談社
【公式サイト】(外部サイト)

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