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安田顕 インタビュー『自分のなかにあるものしか出てこない』

“世界のキタノ”待望の最新作『龍三と七人の子分たち』で、主人公・龍三親分率いる8人のジジイたちと仁義なき戦いを繰り広げる、若手組織「京浜連合」のボス・西を演じた安田顕。絵に描いたような敵役を憎たらしく怪演し、バラエティ番組では北野武監督からエキセントリックな怒鳴り方を絶賛されていた安田に、初参加となった北野組について、いろいろな顔を見せる俳優業について聞いた。

僕は悪い人間なんだと思います(笑)

――まずは本作への出演が決まったときの感想から教えてください。
安田シンプルな言葉で言うと“あの”北野映画に! という感じで驚きとうれしさがありましたね。“あの●●”と“あの”がつくものって、そうそうないと僕は思いますので。

――脚本を読んで、どのように役へのアプローチをされましたか?
安田具体的に(作品世界を)つかみ始めたのは(撮影前に行われた)脚本の読み合わせの段階で、なるほど“こういう形でこういうテンポで”ということがわかり、現場に入ることで、あぁこういうふうに北野監督は捉えようとしているのかなと感じていきました。役についてのリサーチはしましたけど、結局、自分のなかにないものって(役にはにじみ)出てこないと思うんですよね。今回に限らず(演じた役について)、例えば「いい人で良かったです」と言われたら“自分のなかにも、いい人の優しさがあるのかな。それが役としての役目をちゃんと果たせているんだな。どうもありがとう”と思いますし、逆に「すごくイヤなヤツですね」と言われれば“あぁ、自分のなかにイヤな部分があるから、役目を果たせたのかな。ありがとうございます”って思うんです。今回演じた西という人間も、自分のなかにあるものでしかないと思っています。僕は悪いことをしてお金を稼いだことはないですけど……悪い人間なんだと思います(笑)。
――老人たちからオレオレ詐欺やインチキ商法で金を巻き上げつつも、巧妙に法の網を逃れて、やくざではないと言い張る、いかにもな悪役の西が、アナーキーな老人たちの逆襲に震撼してからの……痛快なカーチェイスアクションには、大笑いしました!
安田僕も完成作を観たとき、あそこのシーンも笑えました。とくにあのときの(西の)逃げ足の速さなんかは、西をやらせていただいて良かったなあと思うんですよね。西のとても狡猾な部分でしょうし、そのあと車で逃走するときに、真っ先にシートベルトをするところなんかも。やっぱり命根性の汚いヤツなんですよ。そういうしみったれた部分がやれて、とても良かったと思います。人間臭いっていうかね。

――藤竜也さんをはじめ、8人のメインキャスト陣との演技合戦、さらにビートたけしさん演じる村上刑事に顔を殴られるシーンもありました。現場でのテンションは相当高かったのでしょうか?
安田やっぱり大先輩の胸を借りるわけですから、全シーンにおいて膝がガクガク震えるくらい、緊張はします(苦笑)。ただ、お仕事としてビビっていても仕方がないので、そこはきちんと向き合える形を取らせていただいたつもりです。とにかく撮影現場では余裕がなく、また撮影のテンポも早かったので、逆に余計なことを考えずに済む感じでしたね。余計なことを一切考えず、いただいた言葉で演じていくだけでした。

男としての色気を失わない大先輩たちのように

――北野監督から、何かアドバイスはありましたか?
安田(撮影前に行われた)脚本の読み合わせのときに、少し早口過ぎたので「テンポはそのままで、もう少しゆっくりめに」とおっしゃってくださいました。現場では時々、このシチュエーションならこう言った方がいいねということで、セリフの微調整がありました。
――完成作をご覧になって、いかがでしたか?
安田自分が出ているので、まだ冷静には観られませんが、お客様が笑ってくだされば成功だと思っています。もちろんおもしろかったですよ! 品川徹さんの手がいきなり震え出しちゃうところとか、笑ってしまいましたし。クライマックスについても、すごく残酷なんだけど笑えちゃう。日常のなかだと、おもしろいけど笑っちゃいけないことってあると思うんですが、この映画は“王様の耳はロバの耳”じゃないけれど、笑っちゃいけない部分も、腹を抱えて笑えるっていう。さすがだな、素晴らしいなと思いました。

――平均年齢73歳の大御所俳優陣との共演で、刺激を受けたことはありますか?
安田大先輩たちより30歳以上も年下の、40過ぎの若造の僕がいちばん不摂生をしているなと思いました。みなさん、ここまで現役でちゃんとジジイを演じられるということは、相当な節制をされていると思いますし、かくしゃくとしていらっしゃるからこそ、僕らは(安心して)笑えるんだと思います。男としての色気を失わない大先輩たちとやれて、光栄です。僕は不摂生なので、たぶんみなさんの年のころには生きていないと思いますけど、もしも生きていることができていたら、そのときは節制したいと思います。「健康のためなら死んでもいい」ってジジイになりたいです(笑)。

「はんかくさい」一面を持ち続けながら役者を志す

――本作をはじめ、近年は一人で何十役も演じ分けたり、ギターの調べにのせてひとり芝居を打ったかと思えば、大学生役にゲイ役にと、難役を嬉々として引き受けている印象を受けます。あえてハードなお仕事を選んでいらっしゃるのでしょうか?
安田いえ、僕は仕事を選んだことは一度もありません。たしかに「大変な役どころですね」と言ってくださる方もいらっしゃいますが「大変じゃない役って、何なんでしょうね?」って聞きたくなっちゃいますね(笑)。自分が好きだと思えることを仕事にさせていただいているので、とても幸せだと思っています。
――十分なキャリアをお持ちだと思いますが、ご自身のなかでは、まだ“役者を志している”というスタンスでお仕事をされているのですか?
安田はい。この作品のメインキャストのみなさんを前に、お仕事をさせていただいているわけですから、役者を志している状態だと思っています。役者を志して、これからもやっていきたいと思います。

――安田さんにとっては、どういう状態になったときに“役者になった”と自覚されるのでしょうか?
安田うまく伝えられませんけど、振り幅をずっと持っていたいと思います。北海道の方言に「はんかくさい」(ばかげた、あほらしい、という意味)という言葉がありますが、北海道のバラエティ番組で育ててもらった、そういう「はんかくさい」一面は持ち続けつつ、こういう作品に出させていただいたときに、それを忘れさせることができたなら、そのとき自分は役者になれるのかなって。応援してくださるファンのみなさんは、いろいろな面を全部応援してくださるので、作品を観たときにその役としてしか自分が映らなくなればいいなあと思います。まぁ、そういうことだけでもないんですけどね(苦笑)。

――夏は、TEAM NACSの3年ぶりの舞台『悪童』も楽しみです。
安田古沢良太さんの脚本と、マギーさんの演出で、きっとまた新しい楽しさがあると思います。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:鈴木一なり)

龍三と七人の子分たち 4月25日公開

 ヤクザを引退したジジイたちは、普通のジジイになれず毎日くすぶっていた。?ある日、オレオレ詐欺にひっかかってしまう元組長(藤竜也)。若い者に勝手な真似はさせられねぇと?、昔の仲間を呼び寄せ、世直しに立ち向かうが、行く先々でとんでもない騒動を引き起こす……。

監督・脚本:北野武
出演:藤竜也 近藤正臣
中尾彬 品川徹 樋浦勉 伊藤幸純 吉澤健 小野寺昭?安田顕
2015年 4月25日(土)全国ロードショー
【予告編】【公式サイト】(外部サイト)
(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

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