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がんサバイバー・木口マリ氏が作り上げた、心温まるネットコミュニティ 「不安や恐怖に押し潰されることはない」

「どんなときでも楽しみは作れる」ことを伝えるためにがん写真展を開催

 抗がん剤治療を終えた後も、合併症による腸閉塞を起こし、丸1年で9回の入院、4度の手術。その間に人工肛門を造設するという過酷な体験をする。そのときばかりはポジティブな木口氏も、自身の体に起こっていることに絶望的になり、心を閉ざしたという。しかし、それもわずかのあいだだけだった。ある日、陽の明かりを見て気持ちを再び持ち直し、それからは「がんになったことは、プラスでしかなかった」と語っている。

「がんになったことのないほとんどの方は、『がんって大変なんだろうな』『死んでしまうのかな』と想像すると思うんです。もちろん、心も体もグッタリしてしまうときはあります。だけどそれ以上に得られたのは、がんにならなかったら出会えなかった人、気づけなかった自然の美しさ、一瞬の時間の楽しさ──。それは私の人生において、かけがえのない価値のあるものなんです」

「ポジティブすぎる性格であることは自覚しています」と木口さんは笑う。すべてのがん患者が、自分と同じようにすぐに立ち直れるわけではないことも理解していた。同じ病棟には体の状態は改善しても、落ち込んでベッドに座り続けるしかない患者もいたという。それでも「どんなときでも楽しみは作れる」ことをすべての人に知ってほしい。そんな思いから最後の手術を終えた木口さんは、仲良くなった看護師と協力し病院内での写真展を企画する。

「全国のがん患者さんやご家族、お友だち、医療者などから募った写真を展示する、『がんフォト*がんストーリー』の原点となった写真展です。100点以上寄せていただいた写真を1枚1枚プリントアウトして、額も自作して、展示場となったがん治療センターの待合室をカフェみたいにオシャレに飾って。その頃は仕事ができなかったので、時間だけはあったんです(笑)。寄せられた写真もステキなものばかりで、観に来てくださった方もたくさんコメントを残してくれました。そのコメントを応募してくださった方に1つ1つお返ししたところ、とても喜んでくださいました。なかには『がんになって初めてよかったと思いました』とおっしゃっていた方もいました」

不特定多数に開かれたネットの世界での活動へ「不安はなかった」

 東京の一病院に全国から多数の写真が集まったのは、自身の経験をテーマにしたブログ「ハッピーな療養生活のススメ」での呼びかけも大きかったという。このブログが、木口さんの「世の中のがんに対するイメージを変えたい」という思いから始まった最初の活動だった。

 人工肛門造設手術の直後に始めた同ブログは、がんの体験を綴った内容ながら、そのタイトルが表すようにポジティブでハッピーな空気が漂っている。コメント欄はがん患者や家族といった当事者の交流の場にもなっているようで、アクセス数からも人気ブログとなっていることがうかがえる。
「その前は友だちと交流するためのSNSしかやっていなかったんです。だけど、ブログでオープンに発信したところ、たくさんの仲間ができたり、それこそ病院での写真展にもたくさんの写真が集まったりと、ネットの可能性ってすごいなと実感しました」

 不特定多数に開かれたネットの匿名の世界では、ときにネガティブなリアクションもある。その最たるものが、コメント欄をオープンにしたブログやSNSに集まりがちな悪意だ。闘病で苦しんでいる人でさえ、匿名による攻撃にさらされるケースもある。しかし木口さんはブログを始めるにあたって、「とくにそこへの不安はなかったです」とあっけらかんと話す。

「どんなことも『やっちゃえ!』という感じで始めるほうなんです(笑)。ただ、一番気をつけなければいけないのは、私は良くても、傷ついている状態の人をさらに傷つけてはいけない、ということでした。ブログを見てくださる方の多くはがんの当事者や家族、医療者なので、もしもそういった人を傷つけるようなコメントが書かれたら、そのときはきちんと対処するつもりでした。でも、誹謗中傷とか攻撃的なコメントなどは、今のところまったくないです」

提供元: コンフィデンス

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