人気フォトグラファー・桑島智輝氏 仕事の流儀「エンターテインメントすることが僕に求められていること」
いいものを作るために妥協なく、編集者からの絶大な信頼
「僕はもともとグラビア畑だったわけではなく、『ヤンジャン』のオファーでAKB48の撮影がグラビアデビューです。当時のAKB48の撮影って、同じスタジオで1日に何媒体もやるような感じ。そのなかで、ほかの媒体とどう差別化できるか、『ヤンジャン』として“らしさ”をどう表現するか。景色がいいわけでもない白ホリ(=白ホリゾント=白壁があるスタジオ)で0から何かを作らなければいけない。僕も編集者もすごく真剣に考えて、いろんな意見を出し合って撮影に臨んでいました。グラビア撮影の最初がこんな感じで、そのあとも同じ感じでやっていたので、だいぶ鍛えられましたね。
商業カメラマン/写真家の2面性
「写真家としてのコアな部分は、『妻を撮り続けること』。自分の中で、その2つは干渉しないんです。欲張りなので、両方やりたい。(商業写真の第一人者である)篠山(紀信)さんと(私生活をカメラに収めた)アラーキー(荒木経惟)の両方にあこがれる部分があるんですよね」(桑島氏)
“写真”をどうとらえるか。桑島氏の中に存在する相反する2つの考えは、彼の唯一無二の感性の原点なのかもしれない。
今目の前にいる被写体と向き合うこと
「撮影するときに、その人のことを事前に調べたりしないんですよ。アイドルであろうと、女優であろうと、声優であろうと、目の前にいるひとりの女性として見る。そのほうが純粋に、かわいいな、きれいだなって思えるんです。事前情報を入れて変なフィルターをかけるのではなく、素直にその人と向き合う。もちろん相手にもよります。向き合ってくれる人もいれば、そうでない人もいる。人間って感情も含め、日々変わるじゃないですか? カメラを通して向き合って、相手を見ながら、アンテナで敏感にキャッチして、いろいろ変えてやっていますね。例えば、『そこに寝っ転がって、おしりを突き出してみて』って言われると、女の子は『えっ』ってなりますよね。でも『ちょっとそこ横になって。いいね、じゃあ少しずつ、腕を前にだしてみようか』っていうとだんだん、近いポーズになる。相手のことを思うことが大事なことだと思います」(桑島氏)
「〇〇の写真と言えば桑島」と言われるようになりたい
「写真集が売れてる現状は素直にうれしいです。昔は、写真集といえば『ハードカバーで大判、一冊3000〜4000円します』みたいなのがスタンダード。完全にfor menだったように思うんですけど、今の写真集は女の子も観たりする。それによって、ソフトカバーで2000円みたいな、手に取りやすいサイズ、価格、表紙になってくる。そういう変化から、男性だけでなく、女性にも広がっていることを感じがして、うれしいです」(桑島氏)
取材の最後、今後の目標を聞いた。
「グラビアって、印象に残ったら勝ちだと思うんです。篠山(紀信)さんの撮ったグラビアってすごく印象に残っている。だから『〇〇の写真と言えば桑島」と言われるように、強い表情を残していけたらと思います。今、世間では、『桑島智輝といえば安達祐実』になっているので(笑)、そうじゃないということを見せていかないといけないから、日々戦っていきます(笑)」(桑島氏)