コンテンツホルダー直営「MIRAIL」、プラットフォーマーに依存しない配信ビジネスの可能性
コンテンツをすべて自社の管理下でコントロール
MIRAILの最大の特徴は、同サイトだけでなく、作品公式サイトやコンテンツホルダーの自社サイトから直接ユーザーにコンテンツを販売/レンタルする機能を実現していること。また、配信作品のラインナップや配信期間や価格は、作品ごとに自由に設定できる。いまやほとんどのコンテンツホルダーが多様な動画配信サービスで作品を流通させているが、MIRAILではコンテンツをすべて自社の管理下で100%コントロールすることが可能になる。もちろん“直販”であるため、他の配信サービスと比較して利益還元率は高い。
また、ビデオマーケットはエンコードに伴う画質、音質のクオリティへのこだわりが高く、ハリウッドで腕を振るってきたエンコードのプロをアドバイザーとして置くなど、ポストプロダクションレベルの自社のエンコード体制を持つ。
「画質、音質のクオリティについては、Netflix、Amazon、iTunes Storeが世界的に評価されていますが、2K(フルHD)の同じ素材であれば、弊社のエンコード技術はその3社よりも高いと自負しています」
そこにこだわる理由は、ビデオマーケットは無料動画や見放題サービスも提供しているが、メインは作品の購入/レンタルごとの都度課金モデルであるからだ。
「定額制配信サービス(SVOD)が世界的な潮流である今、都度課金(TVOD、EST)を利用していただくには、そのぶんだけの価値を提供する必要があります。そういう意味では、ユーザーにとって思い入れのある作品ほど選んでいただけるサービスだと考えています」
プラットフォーマーSVODからコンテンツホルダー直販への流れ
また、MIRAILは、そうしたコンテンツ内容による差別化だけでなく、サービスそのもののプロモーションも行っていない。
「その作品に興味を持ったユーザーは、まずタイトル名で検索します。するとほぼトップには、作品の公式サイトが表示されます。そこにボタンを設置し、直接購入/レンタルしてもらうのがMIRAILの仕組み。つまりユーザーをサービスに集めるのではなく、作品から入ってきてもらうのがコンセプトです。プロモーションコストをMIRAILにかけるより、作品そのものに費やしてください、という考え方です」
動画配信サービスのトレンドは長らくプラットフォーマーによるSVODに傾いていたが、ここにきてアメリカではディズニーやワーナー、NBCユニバーサルなど、大手メディアカンパニーが次々と自社による動画配信サービスの開始を発表。コンテンツホルダーにとって収益率の高い直販モデルへの流れは、世界的な潮流として確実に来ているようだ。
ただし、自社のみでの運営には、相当の企業的体力を要する。その点では、業界全体でプラットフォームを共有しながらコンテンツの直販ができるMIRAILは、パッケージのシェアも下がりつつある今の日本のコンテンツホルダーにとって理想的なツールとなりそうだ。
あとは、それをシーンのスタンダードにできるか。ここ数年で動画配信市場は右肩上がりで拡大の一途を辿っているが、後発としてその流れにどう切り込んでいくか。日本のコンテンツホルダーが一致団結して動き出せば、先行サービスと競合、共存していくメジャーになりうる可能性は大いにあるだろう。そんなポテンシャルを秘める同サービスの今後の動向は、シーンの行方を左右するカギになっていくかもしれない。
(文/児玉澄子)