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【大阪・関西万博】産業ガス会社がなぜドリンクスタンド? ヒトとロボットで作り上げる“ミライの一杯“

ヒトとロボットが協働する 未来の飲食店 「AIR WATER NEO MIX STAND」(画像提供:エア・ウォーター)

ヒトとロボットが協働する 未来の飲食店 「AIR WATER NEO MIX STAND」
(画像提供:エア・ウォーター)

 グルメも楽しみな大阪・関西万博。大阪ヘルスケアパビリオンには「ミライの食と文化」を体験できるフードエリアが広がる。中でも一際目を引くのが、ロボットがミックスドリンクを作って提供する「AIR WATER NEO MIX STAND」だ。出展するのは大手産業ガス会社のエア・ウォーター。1970年の大阪万博にも出展した同社が体現する「ヒトとロボットが協働した未来の飲食店のあり方」や、こだわりのメニューについて話を聞いた。
和辻徹さん

監修者 和辻徹さん

エア・ウォーター株式会社 執行役員 大阪万博推進プロジェクト担当

“縁の下の力持ち”産業ガス会社が、なぜフードエリアに出店?

 大阪・関西万博でお腹が空いたら、大阪ヘルスケアパビリオンに足を運んでみよう。ここには「ミライの食と文化」と題されたフードエリアが設置されている。その入り口にお目見えするのが、大手産業ガスメーカーのエア・ウォーターが出展する「AIR WATER NEO MIX STAND」だ。

 産業ガスとは家庭で使う都市ガスやプロパンガスとは違い、工場や病院、食品などで使われる酸素や窒素などのガスで産業界のあらゆるシーンで使われている。まさに私たちの暮らしを支える“縁の下の力持ち”といえる存在だ。

 なぜそんな産業ガスを扱う会社がなぜジュースを? という疑問もありつつ、何より目を惹くのが、2台のロボットが器用にドリンクを作って提供するという、まさにミライを感じさせる店舗オペレーションだ。

「ここで提供するミックスドリンクには、ガス事業をベースに『地球の恵みを、社会の望みに』というパーパスのもと、事業領域を広げてきた弊社の技術のすべてが結集しています」

 そう語るのは、同社の大阪万博プロジェクト担当執行役員・和辻徹さん。

 「弊社のフード事業の中でもドリンクは主力商品の1つ。今回は弊社の創業の地である北海道産食材にこだわりました。野菜や果物の鮮度と栄養価をキープしながら、産地から全国にお届けする高度な物流技術は、極低温の産業ガスの輸送で培ってきたものです。またスムージー等に使用する冷凍キューブは、-196℃と極低温である液体窒素などを扱う産業ガス技術を応用。さらにガスプラント事業を通して培ってきたロボティクス技術が、ジュース作りや提供担当のロボットとして活躍しています」(和辻さん/以下同)

味が薄くならない秘密は“冷凍キューブ” 振って冷やして味変も

  • 『北海道産野菜と果物のスムージー』<br>(画像提供:エア・ウォーター)

    『北海道産野菜と果物のスムージー』
    (画像提供:エア・ウォーター)

  • 『NEO北海道×大阪ミックスドリンク』<br>(画像提供:エア・ウォーター)

    『NEO北海道×大阪ミックスドリンク』
    (画像提供:エア・ウォーター)

 前述で紹介してくれたのはほんの一部で、「実はそのほかにもさまざまなエア・ウォーターの技術が、1杯のジュースにミックスされています」とのこと。とはいえ一般消費者には少々マニアックなようなので、まずはメニューを見てみたい。

 メニューは「北海道産 野菜と果物のスムージー」「NEO北海道×大阪ミックスドリンク」「ALL北海道産トマト 12種野菜のジュース」「北海道レッドアイ」の4種類で、いずれもフレッシュな野菜や果物が使用されたコールドドリンク。「今年の夏も暑くなりそうですので、歩き疲れたらぜひここで喉を潤してください」とのことだ。
  • ”冷凍キューブ”(画像提供:エア・ウォーター)

    特製の冷凍キューブ
    (画像提供:エア・ウォーター)

 カップの代わりにシェイカーで提供される「北海道産 野菜と果物のスムージー」「NEO北海道×大阪ミックスドリンク」には、氷ではなくジューシーな果汁や果肉を急速冷凍した特製の冷凍キューブが入っている。

 「大阪名物のミックスジュースは果実を無駄なく最後まで使い切るという、今で言うサステナブルな発想から生まれたものだそうです。この精神を受け継ぎつつ、冷凍キューブが溶けることで味変したり、シェイカーを振ることで冷たいシェイクに仕上がるといった楽しさやワクワク感も提供したいと考え、これらのメニューを開発しました」

 大阪・関西万博なのに北海道産の食材を使っていいものか? という懸念もあったが、審査員からはむしろ「大阪は天下の台所」との好評価があったという。大阪の商人の"もったいない精神"を、現代の技術で体現したのがNEO MIX STANDのドリンクメニューというわけだ。

ヒトとロボットが一緒に働く…あえて“完全自動化”にしなかった理由は?

  • 実際の店舗の様子(画像提供:エア・ウォーター)

    実際の店舗の様子
    (画像提供:エア・ウォーター)

 2台のロボットアームが人間の手のように動き、ジュース作りや提供をする光景は驚きとワクワクに満ちている。しかしNEO MIX STANDは完全自動の店舗ではなく、レジやオーダーなどには人間が配置されている。

「もちろん技術的には完全自動化にすることも可能でしたが、あえてロボットと人間がそれぞれの得意分野を活かした形としました。なぜかというと、人間の仕事がロボットに奪われた社会のあり方というのは、弊社のパーパスである"社会の望み"ではないだろうと考えたからです」
  • テキパキ働くロボットを見るのも楽しい!<br>(画像提供:エア・ウォーター)

    テキパキ働くロボットを見るのも楽しい!
    (画像提供:エア・ウォーター)

 飲食の目的はお腹を満たすことだけではない。温かい接客やサポートといったコミュニケーションもまた、飲食業が提供できる食の喜びなのではないか。そう和辻さんは言う。

 「お店にはお子さまや、障がいを持ったお客さまも来られるでしょう。そうした方への細やかなケアやアテンドも、人間だからこそ担えるものです。一方で確実においしく調理する、提供するといった作業面はロボットが得意とするでしょう。NEO MIX STANDは、そうした未来の"ヒトとロボットのハーモニー"を形にした店舗なのです」

 なお、NEO MIX STANDに設置されたロボットは、従来の産業用ロボットとは異なる制御プログラムが組み込まれた「協働ロボット」と呼ばれるもの。従業員や客の安全を担保しながら、同じ空間で共に働くことを可能にするために開発されたロボットだ。

 「1970年開催の大阪万博では、当時の最新機器だった自動販売機が大勢の来場者の喉を潤しました。それから55年経った今、飲食業における人手不足はさらに深刻な問題となっています。自動化・省人化の技術である自動販売機が今や当たり前になったように、NEO MIX STANDではロボットと人が協働する未来の飲食業のあり方を提案します」

 ちなみにエア・ウォーターも、1970年の万博に出展している。当時の社名は「ほくさん」で、寒さの厳しい北海道に暮らす人々の生活を豊かにするべくLPガスの供給事業を推進。さらにLPガスによる日本初のユニットバス「バスオール」を開発し、銭湯が一般的だった時代に共同住宅への導入を進めていた頃だった。

 それから55年。時代ごとの社会課題に取り組んできたエア・ウォーターが万博の地で表現する未来の社会のあり方。そしてここから加速させるイノベーションに期待したい。

取材・文/児玉澄子

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