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柳葉敏郎、矛盾した気持ちを認めて前進「室井慎次がいなくなることはない」【インタビュー】
柳葉去年の夏です。
――その時、どのような感想を持ちましたか?
柳葉正直、嫌だなと思いました。
――それはどうしてですか?
柳葉1997年の連続ドラマの時に、4話目くらいまで撮った段階で、プロデューサーの亀山氏に「殉職」を申し出たほど、室井という役がつまらなくて(笑)。台詞も「…」が多いし、自由に動けないし。現場でものすごい孤独を感じた。ただ、オンエアを観た妻が「かっこいいじゃん」と言ってくれたおかげで続けることができたんです。
そうしたら、「室井慎次」のイメージがついてしまって。「室井慎次みたいな…」というオファーも増え、ありがたいことだと思いつつも、いろいろな役をやってみたいという俳優としての楽しみが奪われてしまったようにも思えて、とても苦しみました。「室井慎次」のイメージを払拭したいとずっと思っていましたね。
柳葉そうです。でも、(亀山氏から)脚本家の君塚氏からメールが送られてきたことが発端なんだと、その経緯を聞かされて。そのメールには室井慎次への熱い思いがつづられていて、それに心を打たれました。亀山氏も元々、自分自身を室井慎次に投影している部分があったので、2人の熱意に最終的には屈した形です(笑)。3度目に話し合った時、ようやくお互い納得がいき、出演を決めました。自分でも親友のように思っている室井慎次というキャラクターに対して、恩返しをしたいと思うようになりました。
――出演するにあたって何か要望したことは?
柳葉室井は湾岸署があってこその室井なんです。それが大前提としてありました。ただ一つ、和久さん(演:いかりや長介)と当時の吉田副総監(演:神山繁)の会話を室井が立ち聞きしてしまったシーンがあって(2003年公開『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』)、2人の関係性がのちの青島と室井に発展したら面白いな、とは思っていました。
今回、亀山氏から、室井は秋田県出身で東北大学出身という異端の経歴があるので、「秋田に戻る」という設定はどうか、という提案がありました。それにはとても感謝しています。僕自身、今は秋田で生活しているので、地元の人たちへの恩返しになれば、という思いもありました。そこは、気持ちが一致しましたね。脚本を読んで、警察を辞めた室井慎次、いわば鎧を脱いだ室井を演じられることに新鮮さも覚えました。
柳葉室井はいつも何かに悩んでいるキャラクターです。被害者家族・加害者家族の子どもたちの里親になっても悩んでいたと思います。僕も子育てを楽しみながらも、悩むことが多かった。自分自身が悩む姿を見せることが、皆さんに一番伝わるんじゃないかと思って演じていました。それにしても、空き家をリフォームしたり、キャラ弁に挑戦したり、室井って器用なんだなと思いました(笑)。
――青島とは異なる新城との因縁も熱いですよね。
柳葉室井は熱意ある青島(演:織田裕二)と出会い、一緒に働くことによって、変わっていきます。青島は室井にとって全てが新鮮な存在でした。そんな室井のふるまいに影響されたのが新城です。室井の後を継ぐ存在に徹してくれたと感じています。新城を演じる筧利夫くんも素晴らしい役者です。今回、新城との最後のシーンでは、新城/筧くんへの感謝の気持ちがあふれて涙が止まりませんでした。
柳葉初号試写を見終わって、意味がわからない涙が出てきたんです。室井の悔しさが一瞬、私の中を通り抜けていって、涙となってあふれ出てきたんです。あの瞬間は、今でも強く記憶に残っています。
――悩みや葛藤を経て、室井慎次を再び演じて改めて思うことは?
柳葉室井を払拭したいなんて言ってしまいましたが、やはり室井というキャラクターほど、多くのことを教えてくれた役はほかにない。ここまで強いイメージが定着した役は、後にも先にも室井慎次だけです。だから、柳葉の中から室井がいなくなることはないと思います。それを受け入れて、今後もさまざまな役に挑戦しながら、視聴者をいい意味で裏切るような仕事をしていきたいですね。
『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』
柳葉敏郎
福本莉子
齋藤潤
前山くうが・前山こうが
松下洸平
矢本悠馬
生駒里奈
丹生明里(日向坂46)
松本岳
佐々木希
筧利夫
甲本雅裕
遠山俊也
西村直人
赤ペン瀧川
升毅
真矢ミキ
飯島直子
小沢仁志
木場勝己
稲森いずみ
いしだあゆみ
プロデュース: 亀山千広
脚本: 君塚良一
音楽: 武部聡志
監督: 本広克行
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