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少子化に活用広がるAI教材、家庭教師の需要と市場動向は? 業界最大手の見解

政府が「異次元の少子化対策」を打ち出してから1年。いまだ少子化傾向の反転は不透明で、各業界への影響は、今後さらに加速していくことが予想されている。そんな中、市場規模の縮小が懸念されるのが「家庭教師」だ。生徒数という母数の減少は明らかで、さらに教育現場では「AI教材」の導入が進められている。果たして今の家庭教師ニーズと市場動向とは。「家庭教師のトライ」に話を聞いた。

市場規模は縮小傾向も“個別指導の需要”は増加 低年齢からの利用も続々

「少子化の問題はもちろんあります。ですが、家庭教師というサービスの必要性を強く感じてご相談いただくケースが以前と比べて増えています」

 そう話すのは、トライグループ執行役員・阿部正純さん。2022年「オリコン顧客満足度」家庭教師部門にて、総合1位を獲得した「家庭教師のトライ」を手掛ける業界最大手だ。阿部さんによると、昨今の教育事情は中学、高校、大学入試の複雑化により、学習塾で一斉に授業を受ける形から、個別学習塾、家庭教師へと、より“個”の需要が増してきているという。

「以前の家庭教師というのは、受験に対しての最終手段と捉えられていて、塾でダメだったら家庭教師に頼む、というような役割だったんです。しかし現在は、大学受験の早期化・中学受験熱の高まりによる受験対策の細分化や、志望校ごとの個別対策の必要性が増したことによって、一人ひとりの目標に寄り添い、早期からきめ細かく指導をしてほしいというご要望にお応えすることが多くなりました。利用する年齢は年々若年化してきていますね」

 生徒の一番のボリュームゾーンは中高生ながら、中学受験ニーズの高まりによって、「特に東名阪では小学4〜6年生の親御さんからの問い合わせが増えている」と話す。一方で、「競合他社との差別化が見えにくい」という業界の特性も挙げる。

「家庭教師は基本的に教師と生徒、1対1の授業形態です。一見すると授業システムに違いが少なく見えるため、選ぶ側からは会社ごとの差が分からず、価格の安さのみを軸に決めてしまう方も多くいらっしゃいます」

 中学受験など低年齢で受験する人数が増え、家庭教師の必要性を感じる家庭が増えたとしても、選ばれなければ意味がない。こうした課題に対して、「家庭教師のトライ」が重視しているのが「サービス品質」だ。

「弊社は価格競争に進むのではなく、お客様満足を重視しています。実績の豊富な『プロ家庭教師』や進路相談など教育全般をサポートする正社員の『教育プランナー』といった今までこだわってきた『人』のサービスに加えて、最新のAIやデジタルの技術をどのように掛け合わせるか、模索をしています。」

 創業当時から一貫して「人は、人が教える。人は、人が育てる。」という教育理念のもと、マンツーマン教育にこだわってきた「家庭教師のトライ」。“人ありき”の授業を掲げる一方で、2019年以降、「トライ式AI学習診断」や「入試問題的中AI」などを開発。いち早くAI技術の導入に意欲を見せている。

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2022年「オリコン顧客満足度」家庭教師部門 

「AI単体ではツールに過ぎない」、求められるのは“伴走型”教師

「お客さまの要望で多いのは、やっぱり合格実績です。『〇〇大学や〇〇中学の受験合格が〇人』という突出した実績を持つ先生を希望する方もいます」

 現在の受験形態は小学生から高校生まで、それぞれ多様化している。合格者の約半数が高校の推薦入試によって占められる大学もある。だからこそ、それぞれの志望校に直結する受験ノウハウを提供できるかが、顧客満足度を高めるポイントになる。

「もちろん、実績のある先生をご紹介することは重要です。かといって、合格実績を持つ先生がすべての子どもの学力や特長にマッチするとは限りません。そこで、例えばAI技術を活用し、蓄積した合格者の学習データをカリキュラムとして取り入れる。そうすることで、より最適な学習プランを自分に合った先生と一緒に進めることができ、夢や目標を叶える生徒が増えると思っています」
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 「家庭教師のトライ」が将来的な発展を目指しているのが、2023年8月から導入したラーニング・マネージメント・システム(LMS)だ。

「家庭教師業界では、先生と生徒の指導状況が見えにくいということがかねてより課題でした。いまトライでは授業の内容のほとんどをデータで取っています。これがどんどん集積されていくことで、学習者によってどういう傾向があるのか、またどういう先生をマッチングしたら成績がどれくらい伸びたかということが定量的に分かるようになります。前述したカリキュラムとかけ合わせれば、個人別にもっとも成績が上がりやすい学習の仕方というのが見えてくる。こうしたことを考えています」

 こうしたデジタルやAIを活用した展望を見据えつつも、あくまで子どもを教え導くのは教師という“人”であり、AIは効率的に学習を進める「武器」のようなものだと語る。

「実体験からというと科学的な根拠に欠けるかもしれませんが、人がいないサービスって長続きしないと思うんです。機械が授業を行う場合、いつでも受けられるという利便性はあるかもしれませんが、本人の強い意志がないと続かない。やっぱり、先生があさって来るとか、勉強が苦手でも受け入れて教えてくれるとか、子どもが勉強をしやすい環境を作る必要があります。弊社としては人による教育を大切にしながら、いかにしてそこにAI技術を掛け算していくか、ということを重要視しています」

 目まぐるしく変わりゆく教育の場。AI導入も必然の流れであり、人×AIによってさらに効果を高めていくというのが持論のようだ。

「効率の良いカリキュラムはAIによって導き出せるとは思いますが、それを学ぶのは「人」です。AIが用意したものをただそのままやらせるのではなく、教え導くにはしっかりとしたコツがあるんです。これまではいかにわかりやすく生徒に教えるか、ということが大切だと思われてきましたが、いまは伴走というか、いかに生徒を導いていくのかが重要だと考えています。授業においても60分や120分という時間をただ教科指導するだけではなく、『いかに生徒のモチベーションを上げられるか』や、『次回の授業までの課題を確実に取り組ませられるか』ということも、AIを導入した際に先生としての重要なポイントになります」

多様化するニーズ「塾と家庭教師の併用型というのも一つのトレンドに」

 また塾と家庭教師の併用型というのも一つのトレンドであるという。

「塾のメリットもやっぱりあるんですよね。塾で競争心を保ちながら幅広い科目を学びつつ、苦手な部分の強化や補足として家庭教師を使われる方も多い。その際は学習塾の内容に合わせて教えるというやり方もありますし、AIなどを活用して特に苦手な部分を洗い出して、ピンポイントでお手伝いするという方法もあります」

 今後の家庭教師業界について、デジタルツールを取り入れつつもそれと共生できる家庭教師が残っていくのでは、と未来を語る。

「AIが発展すれば、より効率の良いカリキュラムを一人ひとりに合わせて作成できるようになると思いますから、デジタル技術を取り入れていくことは非常に重要です。ただし、受験合格などのゴールまでの道のりを提示するだけが教育ではありません。デジタルやAI技術を理解・活用しつつ、子どもたちを“導く”ことができる先生が求められるのではないでしょうか」

 効率化、合理化ということが重視されている高度に情報化された社会のなか、家庭教師のニーズも多様化してきた。教育業界においてもAIはゲームチェンジとして期待される部分も多いが、あくまで「家庭教師のトライ」では人と“共生”することで、よりサービス品質を上げるというポリシーのもと、さらなる極みを目指す。

(取材・文:磯部正和)

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