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瞬間接着剤の代名詞『アロンアルフア』60周年、アメリカでは『クレイジーグルー』で認知
日本初の一般向け瞬間接着剤、開発に3年「すぐに固まるが故の苦労がありました」
「アロンアルフアの主成分は、微量の水分や金属分により、瞬時に固まる性質を持っています。“すぐに固まる”という特長がある故、製造過程や、完成した製品の分析工程でも、水分に反応して固まってしまったり、取り出そうとするとくっついてしまったりと、全工程において未曽有の瞬間接着剤ならではの苦労が多々ありました」
「営業マンが、釣り好きのお客様から『仕事で使っている工業用のアロンアルフアを、趣味の釣りで釣り具を固定するのに使ったら便利だった』と聞いたんです。それで、一般用にもニーズがあるかもしれないと開発することになったそうです」
当時は木工用ボンドやセメダイン、のりなどの接着剤は発売されていたものの、『アロンアルフア』のように「とにかく早くて、なんでもくっつく」という家庭用瞬間接着剤はなかった。一般消費者にも大きなインパクトを与え、驚きを持って迎えられることになった。
「ロングセラーの慢心がありました」9年ぶりCM再開の背景に“衝撃的な危機感”
アメリカでの認知拡大につながったのは、ユニークなCMの効果が大きかった。かぶっているヘルメットが天井にくっついている“ハンギングマン”は大きな反響を呼び、そのままキャラクターに。アメリカでの反響を受けて、成功事例を逆輸入。日本でも独特なCMを制作することで、消費者への効果的な認知を狙った。バイクがウィリーしたまま壁にくっついてしまう映像は、多くの人の記憶に残っているのではないだろうか。
「接着の速さを説得力を持ってお伝えできるように、原則としてワンカットでの撮影を心がけています。壊れた物を修理する映像などで、編集してしまえばわからないカットでも、実際にアロンアルフアで接着して撮影しています」
「社名の認知度は低くとも、弊社製品は多くの人に知っていただけているという慢心がありました。CMをあまり放映していなかった間に、『アロンアルフア』を知らないという子どもたち世代が出てきたんです。衝撃的な危機感を感じて、またCMを再開しました」
『アロンアルフア』はCMを見て“すぐに欲しい”となる嗜好品ではない。即座に売上に結び付く商品ではなく、必要な時に思い出してもらう“潜在的認知”が求められる。また、発売から50年以上が経った今、商品自体にインパクトを感じてもらうことは難しい。だからこそ、毎度CMでは「驚き」を追求し、地道な認知拡大・人気維持を図っているという。
60年間進化し続け、現在はプラ素材にも対応「緊急補修のイメージ破りたい」
「アロンアルフアは緊急補修のイメージが強く、8割ぐらいが補修、何かを作るために使うのは2割程度と、DIYなどの場面ではまだまだ力不足な状況です。そのため、模型作りにも便利な『アロンアルフア 光』など、活用していただくシーンが増えるようラインナップを増やしています」
アメリカ生まれの瞬間接着剤だが、日本の工業技術によって、世界に誇るロングセラー商品と化した『アロンアルフア』。60年に渡り、国内外の企業に追従を許さなかったのは、同社の弛まぬ努力と鍛錬の賜物に違いない。2019年には、「一般消費者向け瞬間接着剤最長寿ブランド」としてギネス世界記録に認定された。これを箔に、今後は輸出国の幅をさらに広げていく予定だ。『アロンアルフア』だけでなく、「東亞合成」の社名が日本から世界に広まっていくことを願いたい。
(取材・文=辻内史佳)