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瞬間接着剤の代名詞『アロンアルフア』60周年、アメリカでは『クレイジーグルー』で認知

 1963年、工業用として発売された『アロンアルフア』。現在では“瞬間接着剤”の代名詞として、80%以上の国内認知度を誇るロングセラー商品だ。開発のきっかけはアメリカで生まれた瞬間接着剤だったが、今では20ヵ国以上で販売しており、アメリカでも『クレイジーグルー』として広く親しまれているという。半世紀以上に渡って、国内外企業の追従を許さない同商品の開発秘話、ロングセラーの秘訣をメーカーの東亞合成に聞いた。

日本初の一般向け瞬間接着剤、開発に3年「すぐに固まるが故の苦労がありました」

 『アロンアルフア』開発のきっかけは、1958年にアメリカのメーカーが瞬間接着剤を発売したことだった。この接着剤が、東亞合成が当時初めて工業生産に成功した塗料などの原料「アクリル酸エステル」の化学構造と似ていることを、研究員が発見。これを機に、1960年から本格的な商品開発に着手した。しかし、発売に至るまで、実に3年の歳月がかかった。

「アロンアルフアの主成分は、微量の水分や金属分により、瞬時に固まる性質を持っています。“すぐに固まる”という特長がある故、製造過程や、完成した製品の分析工程でも、水分に反応して固まってしまったり、取り出そうとするとくっついてしまったりと、全工程において未曽有の瞬間接着剤ならではの苦労が多々ありました」
 試行錯誤の末、1963年に最初は工業用として発売された。高度経済成長期真っ只中で、様々な産業が発達していた時期だった。自動車や工業製品の生産において、今まで接着するまで数時間待たなければいけなかった工程が1分で済むなど、生産性が格段に上がる画期的な商品として、瞬く間に様々な産業に評判が広まった。医療用・歯科用を経て、1971年には一般家庭用が発売されるが、そのきっかけは、顧客のひと言だったという。

「営業マンが、釣り好きのお客様から『仕事で使っている工業用のアロンアルフアを、趣味の釣りで釣り具を固定するのに使ったら便利だった』と聞いたんです。それで、一般用にもニーズがあるかもしれないと開発することになったそうです」

 当時は木工用ボンドやセメダイン、のりなどの接着剤は発売されていたものの、『アロンアルフア』のように「とにかく早くて、なんでもくっつく」という家庭用瞬間接着剤はなかった。一般消費者にも大きなインパクトを与え、驚きを持って迎えられることになった。

「ロングセラーの慢心がありました」9年ぶりCM再開の背景に“衝撃的な危機感”

 現在、日本で約80%の圧倒的シェアを占める『アロンアルフア』。世界でも、工場のあるアメリカや中国を中心に20ヵ国以上で販売されている。中国の工場は南部にあるため、香港でのシェアが特に高く、70%程度。日本での開発数年後にすぐ販売を始めたアメリカでは『クレイジーグルー』の名で親しまれ、日本と同等の認知度を誇るという。

 アメリカでの認知拡大につながったのは、ユニークなCMの効果が大きかった。かぶっているヘルメットが天井にくっついている“ハンギングマン”は大きな反響を呼び、そのままキャラクターに。アメリカでの反響を受けて、成功事例を逆輸入。日本でも独特なCMを制作することで、消費者への効果的な認知を狙った。バイクがウィリーしたまま壁にくっついてしまう映像は、多くの人の記憶に残っているのではないだろうか。

「接着の速さを説得力を持ってお伝えできるように、原則としてワンカットでの撮影を心がけています。壊れた物を修理する映像などで、編集してしまえばわからないカットでも、実際にアロンアルフアで接着して撮影しています」
 CM効果もあり、日本での認知も確固たるものになった。確かな自信を得た同社は、一時期、CM放映をしていなかった。しかし、2016年に再びユーモラスなCMを大々的に展開。その背景には、「危機感」があったという。

「社名の認知度は低くとも、弊社製品は多くの人に知っていただけているという慢心がありました。CMをあまり放映していなかった間に、『アロンアルフア』を知らないという子どもたち世代が出てきたんです。衝撃的な危機感を感じて、またCMを再開しました」

 『アロンアルフア』はCMを見て“すぐに欲しい”となる嗜好品ではない。即座に売上に結び付く商品ではなく、必要な時に思い出してもらう“潜在的認知”が求められる。また、発売から50年以上が経った今、商品自体にインパクトを感じてもらうことは難しい。だからこそ、毎度CMでは「驚き」を追求し、地道な認知拡大・人気維持を図っているという。

60年間進化し続け、現在はプラ素材にも対応「緊急補修のイメージ破りたい」

 発売から半世紀以上、いつも変わらず我々の緊急時を救ってくれたように思う『アロンアルフア』だが、液、容器ともに改良を加え、絶えず進化してきた。最初は接着できる素材が木材、プラスチック、金属だけだったが、成分や粘度を変え、適用範囲が広がっている。唯一接着できないポリエチレンに関しても、1987年に『アロンアルフア プラスチック用』を開発した。

「アロンアルフアは緊急補修のイメージが強く、8割ぐらいが補修、何かを作るために使うのは2割程度と、DIYなどの場面ではまだまだ力不足な状況です。そのため、模型作りにも便利な『アロンアルフア 光』など、活用していただくシーンが増えるようラインナップを増やしています」
 また、世界から広く評価を受けている理由は、容器の品質の高さも大きいという。『アロンアルフア』は空気や水分に触れると固まりやすいため、一昔前は一度使うと固まってしまって、しばらく経ってから使おうとすると使えないこともあった。しかし、その問題も容器の気密性を向上する改良を施し、容器内に乾燥材をしのばせることで解決。今は、蓋をきちんと閉めれば、2〜3ヵ月はサラサラのまま使えるように改良されている。

 アメリカ生まれの瞬間接着剤だが、日本の工業技術によって、世界に誇るロングセラー商品と化した『アロンアルフア』。60年に渡り、国内外の企業に追従を許さなかったのは、同社の弛まぬ努力と鍛錬の賜物に違いない。2019年には、「一般消費者向け瞬間接着剤最長寿ブランド」としてギネス世界記録に認定された。これを箔に、今後は輸出国の幅をさらに広げていく予定だ。『アロンアルフア』だけでなく、「東亞合成」の社名が日本から世界に広まっていくことを願いたい。


(取材・文=辻内史佳)

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