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【話題のマンガ試し読み】競合多い“ファンタジー×タイムリープ”、縦読みマンガでどう読者を惹きつける? 作り手の葛藤とは
読者のカタルシスを得やすいwebtoonの操作性×主人公のギミック
猫子先生一言で作品を言い表せる“個性”になるキーワードがほしいなと考えていました。主人公の設定としてあまり対抗馬がおらず、かつwebtoonらしいクールさやスタイリッシュさを出せる戦い方として、最初に<重力使い>を設定しました。好きな要素をふんだんに盛り込んだ後に、キャラクターたちをより魅力的に魅せられる背景やストーリーラインを組み立てていきました。
フーモア・遠藤拓己さん(作画・着彩ディレクション担当)最初に<重力使い>の設定を見た瞬間に「(縦スクロールの)webtoonととても相性がよさそう!」と思ったのを覚えています。重力という時空間に「落ちていく力」や「引っ張る力」は、webtoonの特徴である「上から下へ」の演出にぴったり。中でも主人公・伊駒の必殺技である「隕石落とし(メテオスラッシュ)」はwebtoonの長所とうまく噛み合った技で、スクロールの操作感と合わせてより読んだあとのカタルシスを得やすい構造になっています。
──一方で、“重力”という目に見えないものを表現する難しさはいかがでしたか?
遠藤さん一般的な重力のイメージである黒色や透明色はモノクロでは映えますが、それだとフルカラーのwebtoonの優位性がなくなってしまう。重力演出をどうにか魅力的に表現できないかと考えて選んだのが、少し重々しく高貴な印象、かつエフェクトも派手に魅せられる紫色でした。結果、色自体は派手でありつつも神秘的でミステリアスな雰囲気となり、伊駒自身の佇まいにもぴったりだったと思っています。
猫子先生まずは自分の中の「かっこいい! こうありたい」といった理想像の要素を洗い出し、その後にwebtoonという媒体でどういった主人公が求められるかを掘り下げました。読者の方が共感できる側面と憧れを抱ける側面を両立させることも意識しました。クールで計算高い天才肌として描きつつ、苦悩しているシーンや人間味、可愛らしさを随所で見せることで親近感を持ってもらえるよう設計しました。
──伊駒はもとより、その仲間や敵との関係性も物語に深みを出しています。原作に命を吹き込み、魅力的に視覚化するキャラクターデザインについてお聞かせください。
ちくわ先生キャラクターデザインで一番悩むのは、やはり顔でしょうか。顔の持つ情報量は1ピクセル動かすだけでもガラッと印象が変わるくらい、人間は表情の変化に敏感です。なので、たとえば目線や普段のノーマルな表情にも、キャラクターごとの性格や心境を反映させるといったことは気にして描いています。
──コメントでは「ヒロインが可愛い」などサブキャラに注目する声も多く見られます。
ちくわ先生ヒロインの沙月は、当初は少し困ったような自信のない感じでした。それが伊駒との出会いをきっかけに、「強くなりたい! 弱い自分に負けたくない」と心が変化し、成長していきます。なので途中からはノーマルな表情にも、あまり不安やオドオドした印象は描かないように。さらに戦闘中には「もう迷わない!」みたいな静かな闘志のようなものを、瞳や表情に含ませて作画しています。ただそれは、眉の位置や口角、瞳孔の大きさなど非常に小さな変化です。そうした小さな心の機微をどう表現するかは難しいところですが、作中ずっと出てくるキャラクターは特に当初のデザインに引っ張られすぎないようにとは個人的に考えています。
連載中でもネームをリニューアル 読者の興味を引き続ける努力
猫子先生もともとweb小説家として活動していましたが、webコンテンツの宿命として類似した要素を持つ作品が多くなる傾向にはあると感じていました。ただ物語を組み立てていく上での要素、分岐や選択肢は無限です。自分のアイデアや好きなポイントを中心に魅せていくことさえ忘れなければ、作品としての差別化に対してあえて強く意識する必要性は、それほどないのかなとも考えています。ただ、キーとなる要素や構造を調べてみて、あまりにそのまま被っている従来作品があれば、企画段階で断念するようにしています。
──webtoon脚本を手がけるにあたって、web小説とは意識する点も異なるのでしょうか。
猫子先生web小説とwebtoonでは連載形式が異なります。web小説は基本的に無料で提供され、商業小説として出版されても読者の方は1冊単位で作品を楽しむことができます。一方でwebtoonは、1話ごとに1週間の間隔が開き、加えて更新のたびに無料話で普段読んでいる読者さんに「先読みするか否か?」を迫る必要があります。そのためweb小説以上に読者さんの興味を常に引き続けることの重要性が高く、毎話ごとの見せ場のシーンをより意識し、話の引きでのフックを強く持つ必要があると実感しています。
──「読者の興味を引き続ける」ために、作画やネームでこだわっていることは?
フーモア・太田綾乃さん(作画・着彩ディレクション担当)実は先日、<重力使い>の人気を受けて、第1話の冒頭箇所を新規描き下ろしでリニューアルしました。リニューアルのネーム作業では“読みづらさの払拭”に焦点を当てています。読んでいる途中で離脱されることが一番の損失です。気持ちよくスクロールできるか、セリフが読みづらくなっていないかといった“画面構成”にはこだわっています。
今の成果をきっかけに「縦読みマンガをメインステージに戦う人が増えてほしい」
猫子先生作品を「多くの方々に楽しんでもらいたい」というのが創作の一番の原動力なので、とてもうれしいです! 本作は多くのクリエイターさんが集まるスタジオ体制の制作だけに、作品の心臓部である企画・脚本で足を引っ張りたくないという思いが従来より強く、こうして大きな成果を得られたことにとても安堵しています。
太田さんこれだけ多くの方に楽しんでいただけたことを心からうれしく感じます。結果にあぐらをかかずに、ここがスタート地点だという気持ちで、さらに良い作品を提供していきたいですね。
──日本で生まれたwebtoonが増えてきたとはいえ、人気作には韓国作家による作品が多い印象。日本ならではの強みとして感じている部分は?
太田さん本作についてはキャラクターデザインを国内ですべてまかなえることで、トレンドや文化的背景、キャラクター等身のイメージについて、認識のズレや違和感を抱えずに制作できたメリットがありました。また翻訳作品と比べて、オノマトペ(効果音)の自由度が格段に広がっていると思います。パースやキャラクターに合わせてオノマトペを配置できるのは、国産ならではだと思っていますし、これからの他作品と差をつけていきたい箇所です。
──日本のwebtoon作品がさらに飛躍していく上で、何が必要だと感じますか?
太田さんwebtoonそのものの認知度は上がってきましたが、個人作家が少ない印象です。プロアマ問わず、もっと個人作家がライトにwebtoonを投稿できる場が増え、縦読みマンガをメインステージに戦う人が増えてくれたらいいなと思います。
──最後に今後の展望をお聞かせください。
遠藤さんフーモアでは2023年、多くの制作に携わり、経験とノウハウを蓄積して参りました。今後、webtoon市場は国内外で急拡大していくと考えております。フーモアでも国内に止まらず世界で多くの方に喜んでいただける作品を、作家さんはじめ原作者さんや版元さんを巻き込みながら届けていきたいと思っています。
猫子先生webtoonをはじめ、webを主戦力にした媒体では“女性向け作品群”が大きな市場となっています。また作風を広げるために女性向け作品は挑戦したいジャンルでもあります。短編の習作を書いて反響を見たり、女性向け作品の統計データを作成したりしてるので、2024年内には本格的に着手したいです。
『2周目冒険者は隠しクラス<重力使い>で最強を目指す(外部サイト)』/猫子(原作・脚本)ちくわ(キャラクターデザイン・作画)
「LINEマンガ」にて毎週水曜先行配信中
次元の穴から魔物が襲来し、それに対抗できるレベルやスキルなどの能力が発現するようになった現代。早期に限界が来ることを知らずに〈盗賊〉というクラスを取得したイコマはS級冒険者まで登りつめたものの、能力的に伸び悩み落ちぶれてしまっていた。そんな時、住んでいた都市が凶悪なドラゴンに襲われる。果敢に立ち向かうが、相手にならず致命傷を負ってしまうイコマ。しかし、奇跡的に〈盗賊〉のスキルでドラゴンから時間を巻き戻すレアアイテムを奪うことに成功する。十年前に戻ったイコマは、一周目で得た知識を用いて隠しクラスと言われていた〈重力使い〉を取得する。「今度こそ俺は……最強の冒険者になってみせる!」
■マンガの続きはコチラから『2周目冒険者は隠しクラス<重力使い>で最強を目指す』(外部サイト)
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