韓国ミュージカル特集『若者文化の発信地、韓国・テハンノで活況を呈する創作ミュージカル』
少しずつ演出に変化をもたらすことでよい影響を―― チャン・ユジョン
『あの日々』『あなたの初恋探します』(原題『キム・ジョンウク探し』)『兄弟は勇敢だった?!』などヒット作をたて続けに生み出し、ザ・ミュージカル・アワードの脚本賞、作詞作曲賞、ベスト小劇場ミュージカル賞など数々の賞を受賞。そんな今韓国の演劇界最注目の新鋭演出家のひとりであり、日本上演される『兄弟〜』の演出も手がけるチャン・ユジョンに話を聞いた。
――ミュージカルはいつ頃からどんなきっかけで始めたのですか?【ユジョン】 イギリスに留学した1997年頃が『キャッツ』『オペラ座の怪人』など大型ミュージカルが現地で盛んな時期で、そこでこんな世界があるんだという感銘を受けました。ただ、そのときは自分が携わることになるとは考えてもいませんでした。その後、1999年からインドのボリウッドでミュージカル映画を勉強して、こういう作品を自分で作りたいと思ったところからスタートしています。インド留学が終わって、韓国総合芸術学校に入り、そこで書いた作品がテハンノのコンテストで当選して、そこからこの道を歩き始めました。
――すべての作品で台本と演出を手がけているのですか? 【ユジョン】 作詞、台本、演出の3つを手がけています。『あなたの初恋探します』『兄弟は勇敢だった?!』『オー!あなたが寝てる間に』は学生のときに作った作品で、テハンノのコンテストから本公演まで進むことができました。ただ、再演されている演目などでは、別の演出家が演出している公演もあります。
――『兄弟〜』の日本公演で、オリジナルと演出を変えているところは? 【ユジョン】 野田秀樹さんの舞台が好きなんですが、韓国で上演されたときに観劇させていただき、日本の舞台について考えました。日本の舞台は、能とか歌舞伎などの伝統芸能があるためか、身体の表現がとてもうまくできていると感じています。また、その身体の動きは、日本だけに限らずどこの世界でも通用するところがあります。『兄弟〜』では、韓国の打楽器を利用して、そういった身体表現をあわせたシーンをとり入れています。韓国オリジナルのカラーを変えるというよりは、日本で観ていただけるお客さまに少しでも楽しく感じてもらうための努力をしないといけないという意識があります。すごく大きなものではありませんが、少しずつ演出に変化をもたらすことで公演自体にもいい変化が出ています。
――日本で受け入れられる自信は? 【ユジョン】 『兄弟〜』は数ある韓国ミュージカルのなかでも、とても韓国的な作品です。この作品にはお葬式が出てくるので、日本のお葬式も勉強しましたが、似ている点をたくさん発見することができました。また、作品のテーマである親子の反発や母への愛は世界共通なので、準備をしている段階で自信を持てました。日本ではお葬式を題材にしている映画が多いですよね。実は今『兄弟〜』も映画化を進めています。
――好きな日本映画はありますか? 【ユジョン】 中島哲也監督の作品が大好きで、影響を受けています。『嫌われ松子の一生』のような家族の話で、最後にすごく大きな悲しみが押し寄せる、そういう話を作りたいと思いました。中島監督に会って話をすることが今の夢です(笑)。
――若者に支持されるヒット作を多く輩出していますが、演出のポリシーとは? 【ユジョン】 作品がおもしろくあってほしいということに尽きます。お客さまに感動してもらうことは大切なんですけど、なによりも足を運んでくださったお客さまが楽しんでくれて、心を豊かにして、なにかを持ち帰ってもらうことを一番に考えています。
(文:武井保之)
公演情報
兄弟は勇敢だった?!
韓国ザ・ミュージカル・アワードのベスト小劇場ミュージカル賞受賞作品。これまでに5回の再演を重ね、観客が選ぶ一番人気のあるミュージカルにも選ばれている。
ストーリー:
兄のソクボンと弟のジュボンは父親の訃報を聞き、3年ぶりに安東の実家に帰ってくる。久しぶりの再会にもかかわらず、2人は会うや否や口げんかを始める。葬式が行われる日の夜、美しく神秘的な女性オ・ロラが兄弟を訪ねてくる。法律事務所から来たというロラは、亡くなった父親が宝くじの1等を当て、実家のどこかにその当選券が隠されていると告げる。
見つけたものが賞金を独り占めしてもいいという遺言に、事業に失敗したソクボンと、就職に失敗したジュボンは、人生の逆転を夢み、宝くじとロラを手に入れるため壮大な兄弟げんかを繰り広げる。やがて2人がみつけた真実とは……。
作・演出:チャン・ユジョン
出演:キム・ドヒョン チ・チャンウク <7/30(火)〜 8/15(木)>
キム・ジェボム チョ・カンヒョン <8/16(金)〜 9/1(日)>
公演スケジュール、チケット情報など詳細は【公式サイト】へ
(C)AMUSE
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