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ヤンキー用語かと思ったら…最初は漢字表記だった『ピップエレキバン』、日本の肩こりに向き合い50年

 恵麗喜絆――「夜露死苦」「愛羅武勇」のようなヤンキー用語を彷彿させるような物々しい4文字。これは、“エレキバン”と読み、1972年に誕生し昨年50周年を迎えた『ピップエレキバン』のこと。今ではカタカナ表記でおなじみだが、発売当初はパッケージに大きく書かれたのは漢字表記だったという。日本の国民病ともいわれる“肩こり”に向き合い、50年。ピップエレキバンの歴史と意外なトリビアを聞いた。

「恵麗喜絆」のパッケージは販売当初の短命で終了「読みづらかったんですかね…」

  • 短命だった漢字メインの『ピップエレキバン』パッケージ(画像提供:ピップ)

    短命だった漢字版パッケージ(画像提供:ピップ)

  • その後登場したカタカナ表記メインのパッケージ

    その後登場したカタカナ表記メインのパッケージ

 まずは商品名の由来を同社へ聞いてみると、「本当はエレキバンは磁石なので、電気は関係ないんですが…」と話し始めたのはエレキバンブランドマネージャーの松浦由典さん。
「磁石、電気、静電気…エレキテルとなって“エレキ”という単語を採用しました。そこに“バン”は絆創膏の“バン”になります。その2つを造語として使いました」

 加えて、当時は『オロナイン』や『パンシロン』などカタカナ5文字で「ン」で終わる商品がヒットするという法則がまことしやかなにささやかれていたことから、それに倣って同社も商品名を『エレキバン』と名付けた。

 そして物々しい雰囲気を漂わせている漢字表記について。なぜ漢字だったかの理由は残っていないそうだが、使われている漢字は「恵」「麗」「喜」と良いイメージが並ぶ。肩こりが和らいだ時のポジティブな気持ちを表現していたのだろうか。

 当初のパッケージを見ても「恵麗喜絆」という漢字がメインにドンとデザインされており(小さくカタカナ表記もある)、かなりのインパクトを放っている。しかし、同社によるとこの漢字メインの商品パッケージは短命で、すぐにカタカナ表記メインに変わったそうだ。「読みづらかったんですかね…」と松浦さんも苦笑い。

 ちなみに、社名にも入っている「ピップ」の由来は、1970年に発売した生理用ショーツ『ピップショーツ』に由来するという。
「当時、女性用生理帯に対する暗いイメージを払拭するため、英語で『すばらしい人(物)』という意味を持つ“ピップ”を名付けたそうです。破裂音もはじける躍動感も連想させますし、軽快な語感が親しみやすいこともあって、その後の『ピップエレキバン』にも採用したとのことです」

「米粒を絆創膏につけて肩に貼る」社員から着想も、発売後5年は鳴かず飛ばず…商品名の連呼CMが起死回生

  • コリポイントに直接アプローチ

    コリポイントに直接アプローチ

  • 1つではなく気になる箇所にいくつか貼るのがおすすめだそう

    1つではなく気になる箇所にいくつか貼るのがおすすめだそう

 『ピップエレキバン』は自社製品としては4番目となる。商品開発の背景は、もともと卸として様々なメーカーの商品を取り扱っていたため、それらと競合するものでなく、ニッチな商品を作らなければならいという絶対条件があったという。そんななか誕生した『ピップエレキバン』は、意外なところからアイデアが飛び出した。
「社員が製品開発に試行錯誤しているなか、背中に絆創膏を貼っている社員がおりまして…。理由を聞くと『硬くなった米粒を絆創膏でくっつけて肩に貼ると(ツボ押し効果で)気持ちが良い』と言うんです。当時磁器ブレスレットが流行っていたこともあり、そこで『米粒の代わりに、磁石を絆創膏で貼り付ける』という商品アイデアが生まれました」

 最初に商品化を思いついてから発売まで実に2年の歳月を要した。しかし開発の苦労よりも、商品を発売してから売れるまでの方が大変だったと松浦さんは話す。
「当時は『磁石がついた絆創膏』と説明しても、なかなか価値を理解してもらえませんでした。薬局を一軒一軒当たって店頭に置かせてもらったり、販売店向けの勉強会を開いたり…。そうした地道な活動を行ないましたが、発売して5年間ぐらいは鳴かず飛ばずでしたね」

 社内からは「もう止めたら?」という声もあがったそうだが、「これを貼ったらコリが良くなりました」という消費者の声をバネにヒットを目指しプロモーションを行なっていた。

 そこで発売から5年経った1977年のこと、“最後の賭け”として打ったのがテレビCMだった。
「九州のエリアに絞ってテレビCMを打ってみて、『これがダメだったら諦めよう』というところまで追い込まれていました。いざフタを開けたらそのCMが大ヒットして、一気に世間に認知されました」

 CMは当時同社の会長だった横矢勲氏が自ら出演し、「ピップエレキバン!」と商品名を連呼するシンプルな作りだった。今でこそ、商品名を連呼したり、社長が自ら出演するCMは多いが、当時はそれが珍しく、お茶の間に強いインパクトを残した。この話題性がヒットして、その後、横矢会長が樹木希林、片岡鶴太郎ら有名人と共演するシリーズも作られることに。「当時は『藤本株式会社』の社名でしたが、CMのおかげで『ピップ』の方が有名になったため、『ピップフジモト』と社名変更しました。それだけCMの影響力は大きかったそうです」

インバウンド需要にも貢献“世界が認めた日本のすごいもの”

現在展開中の『ピップエレキバン』の商品ラインナップ

現在展開中の『ピップエレキバン』の商品ラインナップ

 CMによる認知向上により、低迷期を脱し安定した売上をキープ。過去50年余の歴史の中で「ブランドの立場が脅かされるほどの危機的状況はなかった」と松浦さんは証言する。ただし、昨今のコロナ禍によるダメージは少なからずあったという。
「実は意外とインバウンド需要が大きかったんです。『エレキバン』のような磁気治療器と東洋医学との相性は良くて、特に台湾、韓国の方々にはよく買っていただいていました。それがコロナ禍で一度凹んだ時は大変でした。最近ようやく回復傾向が見えていて、また盛り返してきています」

 2013年には台湾で合弁会社を設立し、海外展開している同商品。それから10年経った今では、ブランド認知度は8割程度とかなり浸透している。
「地方の個人薬局に至るまでの配荷に加えテレビCMも流していますので、台湾ではかなり支持いただいています。韓国は比較的最近展開を始めましたので、ブランド認知はまだ高くないですが、今後の伸びしろはあると思います。ボリュームゾーンとしては日本と同じ40〜50代だと思います」

 磁気治療器の考え方が西洋医学よりも東洋医学とマッチしており、当面はアジアでの展開に注力していくとのこと。
「まだまだアジアで拡大する余地がありますので、軸足をアジアに置いている状況です。まずは台湾、韓国、中国で根付かせ、その後にA.S.E.A.N.諸国などに広げられたらと思っています」

 昨年50周年を迎え、長年にわたり国民病と言われる「肩こり」を追求してきた同社。毎年行っている調査では90%以上の人が『エレキバン』を知っていると回答。しかし認知度に反し購買に直結していないのが目下の課題だと松浦さんは言う。

 昨今は、教科書やタブレットにより小学生のランドセルが重くなっていたり、スマートフォンの利用により姿勢が悪化したりと、年々「肩こり」の若年齢化が進んでいる。ピップはそんな人々の悩みを少しでも緩和することが使命と考える。
「人間の体の構造上、肩こりが完全になくなることは多分ないでしょう。ただ、ご自身の状態に合わせて解決策を選択することで、少し軽くしたり、感じにくい状態を維持することは可能だと思います。私たちとしては、肩こりを感じずに過ごしていただける方が増えればいいと思いますし、解決策の中で、できればピップエレキバンを取り入れていただけると幸いです。エレキバンを使ってくださったお客様から『こんなに肩が軽くなるんだ』『自分の体って、本来こんなに楽な状態で過ごせるんだ』といったお声をたくさんいただけるように、これからも価値を発信していきたいと思っています」

(取材・文/水野幸則)

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