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「自分だけに向けたルッキズムはあっていい」元祖ジェンダーレス男子・とまん、“反ルッキズム”の流れに想うこと

 中性的なファッションやメイクで存在感を放ち、“ジェンダーレス男子”と呼ばれ、ファッション業界での新たなトレンドとして注目されたとまん。現在は俳優業をメインに据え、ドラマや舞台を中心に活躍している。ビジュアル至上の世界に生きるなか、「自分の見た目で好きなところはひとつもない」と言っていた約10年前を振り返り、反ルッキズムの風潮をどのように見ているのか。いち個人としての思いを率直に語ってくれた。

SNSでの誹謗中傷も…たくさん傷ついたから自然に自分と向き合う方法が見つかった

――4月期のドラマ『俺の美女化が止まらない!?』(テレビ東京)では、インフルエンサーの女装男子・うにぴょ役を演じています。役が決まってからは「可愛さの研究の日々」だったとのことですが、どのように研究したのでしょうか?

とまん うにぴょは“可愛いの求道者”なのですが、まずそれってなんだろうって考えました(笑)。それで、誰もが可愛いと思える人でありたいと思った時に、自分にとっての可愛さは愛嬌だと思って。僕は韓国アイドルが好きなのですが、彼女たちには日本人にないような愛嬌がたくさんあるんですね。そういう所作を見て、可愛らしさを勉強しました。カメラが回っていないところでも共演者の皆に愛嬌を振りまいて遊んでいました(笑)。

――ドラマでは、女装した姿で生き生きと働くうにぴょを演じています。とまんさんご自身は、レディースの服を着たりメイクをしたりと中性的でいることに対して、「男らしくない」といった一方的な価値観を押し付けられることはありましたか?

とまん 当時は否定的な言葉をぶつけられることもよくありました。でも気にしません。こんなに大きな世界に生きていたら、自分と違う考えを持っている人がいて当たり前。理解してもらおうと思わないし、してほしいとも思わない。そういう多様な社会で自然に向き合える人が増えてくれたらうれしいというくらいです。皆自分以外の人間のことはわからない。それでいいと思います。

――2015年のORICON NEWSのインタビューでは「自分の見た目で好きなところはひとつもない。だから、少しでもよくなりたくて、ファッションや美容(メイク)に気を遣っている」と話していました。いまはどのように自分を見ていますか?

とまん 当時の自分の言葉を聞くとネガティブでかわいそう(笑)。そばにいてあげたいと思っちゃう。“とにかくキレイになりたい”“スタイルよくなりたい”と見た目に重きを置いていたんですよね。歳を重ねていろいろな経験を積んでいくなかで、自分と上手く向き合う方法が見つかったというか、自然に自分の見た目より中身を愛していけるようになった気がします。

反ルッキズムの社会的な風潮に違和感も…「自分自身だけに向かうルッキズムはあってもいい」

――上手く自分と向き合えるようになったのは、きっかけがあったのでしょうか?

とまん SNSの第三者の声でも、身内の人間関係でも、生きていく上で傷つくことがたくさんあって。そういうなかで自分の存在価値を考える時期がありました。苦しい思いをしているけれど、自分を必要としてくれる人や自分が力を与えられる人もいる。そういう未来を信じて生きていくしかないと思うようにしていたら、いま一緒に暮らしている猫と出会ったんです。

――一緒に暮らす猫との出会いが心の拠り所になったのでしょうか?

とまん 家に帰ったら可愛い猫が待っていてくれる。その生活の中で、いままで考えていたネガティブなことは、自分が思っているだけで相手にとっては気にもされていないことで、自分が卑屈になりすぎていただけって気持ちを切り替えることができたんです。その時から、嘘いつわりでもいいから明るい自分を作って素敵な言葉を発していこうと思って。それが自然に自分になっていきました。どこが転機かわかりませんが、たくさん傷ついたら自然にこうなっていきました(笑)。

――昨今では多様性を認めようという流れがある一方、見た目で人を選別したり、優劣をつけたりするのはよくないという“反ルッキズム”の社会的な風潮もあります。社会的立場にかかわらず、見た目を気にするのはごく自然なことであり、その努力や評価を一方的に否定する社会には違和感を覚えます。

とまん 両方の考え方が理解できます。見た目に関しては、自分のことだけを考えていればいいと思います。それがキレイだと思われたいとかよく見られたい、気分を上げるためであってもいい。自分のためにやっている努力だからこそ、他者が言うことではないと思っています。

――“ルッキズム”も自分のためであるならいいと。

とまん 例えば企業の顔採用のような見た目だけの選別があるならば、それはよくないという思いはあります。多様性を認める社会で見た目を気にしてはいけないという意見もわかります。でも、自分自身だけに向かうルッキズムはあっていいし、社会がそれをどっちと強制するものではないと思います。この問題だけでなく、ジェンダーに関しても、当事者ではない他者が騒ぎすぎていると感じることがあります。問題視されることで問題が正当化されていく。自分が正しいと信じて声高に主張する他者が多いことを、個人的には感じています。

SNSで誹謗中傷する人が叩かれる時代 男女区別の概念を捨てる社会になることが理想

――とまんさんにもSNSなどでアンチの声が届くことがありますか?

とまん デビュー当時は応援コメントが見えないくらい否定的なコメントばっかりになることが多くて、SNSを怖くて見れないくらい気にしていました。でも、そういう言葉に自分が傷ついたから、他の人にはそんな思いをしてほしくないと思えました。支えてくれる友だちもいました。今にして思うと、このことがあったことで優しさや愛をたくさん知ることができて、現在の自分を形成していくいい時間でした。当時は、本当につらかったですけど…。

――SNSは切り離せないけれど、それで心を傷つける人も多い。どのように対処したらいいと思いますか?

とまん SNSはたくさんの情報を得られるし、自分を表現できる一番のツール。たくさん自分を見せられるし、それにリアクションがあるから、どんどん執着してしまう。だからこそ、SNSと自分を切り離すことも必要。僕は月に1〜2日はスマホを触らない日を作っています。そうすると、SNSはそこまで大事ではなかったと思えてきます。大事なツールだけど離れる時間を持つことも必要です。

――ジェンダーレスやルッキズムへの世の中の捉え方が変わってきていますが、SNSのリアクションにもそういう変化を感じますか?

とまん 変わりました。今は否定的な意見を言う人がほとんどいません。逆にそういうことを言う人が「まだその時代に生きているの?」と叩かれる時代になっています。自由に表現する人たちが徐々に増えていって、自然に周りにそういう人がいるようになった。そうなると否定できないじゃないですか。生きやすい社会になりました。

――ジェンダーレスが叫ばれながらも、いまだ社会のいたるところに性別の区分けはあります。これからの世界にどんなことを望みますか?

とまん 普段からレディース服を着たりメイクもしているから、男性用トイレに入ると驚かれたりします。普通に生きているなかで、性別で区切られているからこそ生きにくいこともあります。でも、すべてを統一するのは難しいので、共同化できるところをもっと増やしてほしい。男女区別の概念を捨てる社会になってくれたら理想的です。

――今年9月に30歳を迎えます。30代をどのように見据えていますか?

とまん 特にないですね(笑)。年齢にとらわれずに生きてきて、その歳にしたいことをしてきました。でも、落ち着きたいという気持ちもあります。何歳になっても気持ちが幼いというか、いろいろな人から憧れられる存在になりたいです。あと、歳を重ねるごとに、自分より誰か他の人を輝かせたいという気持ちも芽生えています。化粧品やファッションのプロデュースもしていますが、自分の仕事でたくさんの人が素敵になれたり、生きやすくなる。そういう仕事をしていきたいです。

(文/武井保之)

『俺の美女化が止まらない!?』(テレビ東京)

大学進学を機に家賃1万円の破格物件に下宿することになった斉藤晴臣(楽駆)。下宿先で出迎えてくれたのは、恋々乃(ココノ)という女の子。しかし、晴臣は女性と話をすると顔が赤くなってしまう赤面症に悩んでいた。そのため恋々乃とも上手く話せないが、上京を機にこんな可愛い女の子と同居できるなんてと心が躍っていた。ある日、恋々乃がお風呂に入っているところに遭遇した晴臣は慌てて自分の部屋に戻ろうとするが、なかから出てきたのは男性だった。恋々乃から事情を聞くと、この下宿先は女装カフェ&バー「スピカドール」が営業しており、下宿に住むものは「スピカドール」で働かなければいけない契約なのだという。そんな話を聞いていなかった晴臣は、大学デビューを前に、女装デビューすることになってしまう…。

【放送日時】毎週水曜日 深夜3時20分〜放送

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