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再び“高級志向”に回帰? 「美味しいだけではダメ」再定義されるパイナップルの価値

芳醇な香りと甘さが特徴の「スウィーティオパイナップル」(写真左)。より甘みを際立たせた“高級ライン”「スウィーティオパイナップル ゴールド」(写真右)

芳醇な香りと甘さが特徴の「スウィーティオパイナップル」(写真左)。より甘みを際立たせた“高級ライン”「スウィーティオパイナップル ゴールド」(写真右)

 スーパーやコンビニで手軽に手に入り、親しみある果物として日常生活に定着しているパイナップル。しかし、かつては滅多に口にすることができない“憧れの食べ物”だったことをご存じだろうか。お菓子やスイーツなど様々な商品として広がるパインの価値はどのように変遷を遂げているのか。日本で本格的に輸入が開始されてから約60年、品質改良や技術革新により、再び“高級志向のパイン”に回帰する流れもあるという。

高嶺の花だったパイナップル、“忘れられない味”としての記憶

 1493年、コロンブスらによって西インド諸島で発見され、大航海時代の波に乗って他の大陸に広まったといわれるパイナップル。その希少価値と独特な味わいで、当時は「王の果実」の異名で国王の富と権力の象徴として君臨していた。

ジェームス・ドール氏

ジェームス・ドール氏

 世界最大の青果物メジャーであるドールの歴史も、1901年、パイナップルの栽培から始まったという。ハーバード大学で園芸学と農業の学士位を取得したジェームス・ドール氏がハワイのオアフ島でパイナップルの栽培に着手。さらに日持ちがしないパイナップルを遠隔地に輸送するために、加工工場を農場に隣接して設立した。この現地一貫生産加工システムがもたらした功績は大きく、その後、世界中のモデルとなりパイナップルの普及に貢献した。

 しかし、日本では生のパイナップルはもちろん、缶詰でさえ手に入れることが困難な、“高級品の時代”が続いた。それはこんなエピソードからもわかる。

 1951年、「パイン缶の美味しさをみんなが手軽に味わうことができたらどんなにすばらしいだろう」という思いからパイン株式会社がパイナップル味のパインアメ第1号を発売。“パイナップルらしい味”を再現したものだったが、「あのパイナップルを飴で食べられるなんて!」と大評判、模倣品も出回るようになるほどの人気を呼んだという。

そんな高嶺の花であったパイナップルは国民の“忘れられない味”として記憶されている。象徴的なのは、昭和40年代が舞台となったアニメ作品『おもひでぽろぽろ』だ。家族みんなに見守られながらパイナップルに包丁を入れる。果実の重みを感じる音、南国を思わせる香り、熟していないまま食べてしまったときの落胆。それほどパイナップルへの期待値が高かった証左と言えるだろう。

 実際に日本人にとって身近な存在となったのは、1990年、缶詰の輸入自由化がきっかけだった。それ以前は2万トン以下だった輸入量が、4年後の1994年にはなんと8万トンに伸長。円高のタイミングも重なり、一気に日本全国の食卓へと広がっていった。

“甘さ”や“香りの豊かさ”求める日本独自の傾向が、高級ラインの再定義に

パイナップル畑

パイナップル畑

 こうして日常生活で身近な青果となったが、日本と海外ではパイナップルに求められる“味わい”にも差が見られるという。「消費者調査から、日本人は甘くて香りが高い果物を好む傾向があった」と話すのは、ドール マーケティング部の木沢健太氏。

「日本向けに新たな品種を生み出すべく、新種の開発を進めていました。調査を進めると、より“甘さ”や“香り”が際立つほうが日本人の好みだということがわかったんです。そこで、フィリピンの自社農場において品種改良を重ね、日本人の味覚に合うパイナップルを作り上げました」(マーケティング部 木沢健太氏)

 こうして2003年に販売を開始したのが、芳醇な香りと甘さが特徴の「スウィーティオパイナップル」。さらにその後、2022年には同社初の機能性表示食品として「スウィーティオパイナップル ゴールド」を発売した。「スウィーティオパイナップル」の熟成期間を7〜10日間長くし、より甘みを際立たせた“高級ライン”のパイナップルとなる。

「スウィーティオパイナップルは、酸味と甘みのバランスがとれていることが特徴ですが、さらに甘みを追求したゴールドを作り上げることで、お客様に用途や好みに合わせて選んでいただけるようにしたいと考えました」(木沢氏)

 その選択は、缶詰、ドライフルーツ等の加工食品にも反映されていった。輪切りのスライスタイプ、一口大に切られたカットタイプ、繊維質を含むコア(芯)の部分も入れたフルーツカップ、ドライフルーツにしたパウチタイプなど、今ではスーパーの売り場にも様々なタイプの商品が並ぶ。

「用途に応じて形状を選んでいただけることはもちろんですが、缶詰ならジューシー、コアの部分はシャキシャキ、ドライフルーツはソフトな噛み応えなど、パイナップルをいろいろな食感で楽しんでいただきたかった。今はどこでも買えて、レシピもネットでたくさん出回るようになりました。そんな時代だからこそ、嗜好品から日常品に変わったパイナップルを“必需品”に。まだ伝えきれていないパイナップルの可能性をさらに引き上げたいんです」(加工食品本部 野吾雅史氏)

 とはいえ、加工品に対しては、「砂糖がいっぱい使われてそう」「カロリーが高そう」「熱を通しているから栄養価が低そう」「添加物を使っていそう」など危惧を抱いている人も多いことだろう。しかし、野吾氏は言う。

「ぜひ裏面表記を見ていただきたいと、お伝えしたいです。なかでも、当社の商品はみなさんが知っているシンプルなものだけしか入っていないことが分かりますので、安心していただけると思います。果実を浸している液が甘すぎる、健康に影響するのではという声にも対応しています。『スウィーティオパイナップル ゴールド』は缶詰にもなっていますが、液部は果汁100%で砂糖を使用していません。果物だけの美味しさを追求しています」(野吾氏)

砂糖不使用でナチュラルな果汁の甘さを感じられる『スウィーティオパイナップル ゴールド缶』

砂糖不使用でナチュラルな果汁の甘さを感じられる『スウィーティオパイナップル ゴールド缶』

「ただ美味しいだけではダメ」時代が果物に求める付加価値とは?

友達の家にお呼ばれして食べたり、体調が悪い時に出してくれたり、人によって缶詰のフルーツには様々な思い出がある

友達の家にお呼ばれして食べたり、体調が悪い時に出してくれたり、人によって缶詰のフルーツには様々な思い出がある

 子どもの頃、熱を出した時の定番メニューだった“缶詰のフルーツ”。せっかく子に食べさせるのであれば、より良いものを選びたい親心もある。健康志向が高まりを見せるなかで、パイナップルの青果や缶詰に“高級ライン”が登場したこの流れは、時代のニーズに合致していると言える。

 「美味しさと健康は、両軸で追求されるべきもの。ただ美味しいだけではダメなんです」と木沢氏。

 長年研究を続けてきた同社では、「スウィーティオパイナップル」と「スウィーティオパイナップルゴールド」の2商品について、果物の分野では初となる肌の機能性に関する「機能性表示食品」を取得している。

果物として初めて機能性表示食品となった「スウィーティオパイナップルゴールド」(左)と「スウィーティオパイナップル」(右)

果物として初めて機能性表示食品となった「スウィーティオパイナップルゴールド」(左)と「スウィーティオパイナップル」(右)

「バナナは体にいいから食べるという声が多いですが、パインに関していうと圧倒的に『美味しいから食べる』という声が多いんです。美味しいから食べていたものが、健康にもいいということを学術的なエビデンスで示すことで、パイナップルの価値の高さを再定義することにもつながります。毎日食べるものとしてさらに消費者に浸透させていくことが、今後の取り組みとして重要になります」(木沢氏)

 パイナップルは、意外にもSDGsの取り組みをいち早く担ってきた果物でもある。皮は絞って保存液やジュースに、コア(芯)の部分は豊富な食物繊維とシャキシャキ感を活かしてフルーツカップに、繊維質は粉末化してグルテンフリーのパイナップルパウダーに。搾りかすや外皮からはバイオガスを取り出し、熱源として利用される。葉から作ったパイナップル繊維は、天然の皮革代替品のヴィーガン・レザーにして、アパレルブランドに提供する流れもあるという。

 美味しいだけでなく、美容と健康、SDGsにも貢献しているパイナップル。「王の果実」から「果実の王」として、今後その存在感をますます増していきそうだ。

取材・文/河上いつ子

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