• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • カワウソ顔のタキシード猫、“人馴れ度ゼロ”からのフミフミに感動
ORICON NEWS

カワウソ顔のタキシード猫、“人馴れ度ゼロ”からのフミフミに感動

  • 特徴的な模様と顔立ちのタキシード氏(写真:ねこけんブログより)

    特徴的な模様と顔立ちのタキシード氏(写真:ねこけんブログより)

 まるでタキシードを着ているような模様と、ずんぐりした顔立ち。「タキシード氏」と名付けられた猫は、仲間たちと組体操のようなポーズをとり、いつも人間を避けていた…。人馴れしていない猫の悲しい過去、そして変化とは? 一般の人にもできる、猫を人間に慣れさせるコツについて、NPO法人『ねこけん』代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。

タキシード柄の猫、仲間たちと組体操する理由は?

  • 人を避け、ケージの上に固まる猫たち(写真:ねこけんブログより)

    人を避け、ケージの上に固まる猫たち(写真:ねこけんブログより)

 白黒ばかり、似た模様の猫たちが、ケージの上でおかしなポーズをとっている。まるで組体操のようなその様子から、この猫たちがいる保護部屋は「シルク・ドゥ・ソレイユ部屋」と呼ばれているそうだ。猫たちは体の使い方がとてもユニークで、なかでも模様が特徴的な猫は「タキシード氏」と名付けられ、面構えまで立派。どこか、カワウソを思わせる絶妙な顔をしている。「シルク・ドゥ・ソレイユ」的なフォーメーションを組むときも、リーダー格のような貫禄を見せているそうだ。

 ただ、猫たちはなにも曲芸を楽しんでいるわけではなく、この動きには理由があった。それは、「人馴れしていないから」。恐怖心があるから、人間が部屋に入るとできるだけ遠ざかり、ケージの上に一かたまりになる。不自然な体の動きをするのは、なるべく人間から距離を取りたいからだ。

 タキシード氏たちは、多頭飼育崩壊から救い出された猫たちだった。人間に飼われていたものの、ゴハンをもらうことはあっても、多くの猫がひしめく環境は劣悪。愛情は行き届かず、人を怖がるのも無理はない。

 「飼っていたのは、90歳を過ぎた居酒屋のおばあさん。不妊・去勢手術をせずに繁殖してしまったものだから、『虐待では?』とSNSや近隣から批判されていたんです」

 だが、おばあさんに猫への愛情がなかったわけではない。手術のために病院に連れて行こうとしたが、体力のないおばあさんに、慣れていない猫はまったく捕まえられない。手術の予約をするものの、断念してキャンセル…ということが続いていた。結果、猫たちは手に負えないほど増えてしまった。

 「おばあさんのお家が立ち退きにあったのをきっかけに、『猫を手放してもらえませんか?』と伝えました。もし飼い続けても、また飼育崩壊することが目に見えています。おばあさんは、『この子たちを幸せにしてください』と託してくださいました。実際に私が捕獲にいったときも、猫たちはまったく人馴れしていなくて。いつもなら秒で捕まえられるんですが(笑)、1時間ほどかかりました」

慣れていない猫を保護したらどうする? プロが教える人馴れ作戦

  • 人馴れして撫でられるようになったタキシード氏(写真:ねこけんブログより)

    人馴れして撫でられるようになったタキシード氏(写真:ねこけんブログより)

 そんな過去を持つタキシード氏たちは、『ねこけん』に来てもしばらく「シルク・ドゥ・ソレイユ」状態が続いた。だが、ボランティアメンバーの根気強い人馴れ作戦により、少しずつではあるが、人間への恐怖心が落ち着いてきたようだ。『ねこけん』ブログには、猫たちに徐々に近づく様子、鼻をちょこんと触る様子などが投稿されている。なかでもタキシード氏は、顔に似合わず猫一倍、人馴れスピードが速い模様だ。

 多くの猫を保護してきた『ねこけん』にとっては人馴れ作戦もお手の物ではあるが、一般の人でも、慣れていない猫を保護する場合がある。そんな猫を慣れさせるには、どのようなプロセスが必要なのか。

 「人間は怖くないと思わないと、猫は遊びにも反応してくれません。どうやって馴れさせていくかというと、おいしいゴハンを手から食べさせたり、ちょっとケージを開けて猫じゃらしで外に出してみたりしていきます」

 ブログには、猫をハブラシで撫でる映像もアップされているが、これはなぜなのだろうか。

 「慣れていない猫は、安易に触ろうとすると咬みつきます。なので、まずはハブラシで頭をなでなで、よしよしするんです。これは、猫の舌の感触に近いから。母猫の舌で舐められているようで、安心するのだと思います。これをクリアしたら、次は軍手を付けた棒で撫でる。人間の手の形に慣れさせ、もし咬んでも大丈夫なように。このように、人馴れさせるには段階が必要ですし、人間がケガしないような注意もいります」

 タキシード氏もまた、こうした段階を踏み、現在は人に撫でられながら、脚をフミフミする様子まで見せるようになった。

 「SNSなどでも猫のフミフミは可愛いと人気ですが、これは子猫が母猫のおっぱいを求めてお腹をフミフミしていた名残り。甘えたい表現なので、かなりリラックスしている状態だと見られます」

 多頭飼育の大変な環境を生き抜き、今やっと人間の愛情を素直に受け取れるようになったタキシード氏。そろそろ譲渡会に出られるのでは…と思いきや、移動用ケージに入れようとしたら大暴れ。人には慣れてもケージに慣れていない、というオチもついた。だが、いずれ他の猫も含め、譲渡会に出て、新たな家族を見つけることもできるだろう。

 「人馴れするのに10年かかる子もいます。過酷な環境で生きてきたのなら、怖いのは当たり前ですから。ゆっくり、ゆっくりでいいんです。もし、みなさんが慣れていない猫を保護するようなことがあれば、焦らず接していただきたいですね」


■NPO法人『ねこけん』(外部サイト)

■『ねこけん』オフィシャルブログ(外部サイト)

あなたにおすすめの記事

 を検索