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「男だってネイルしたい…」日本初の男性専門ネイルスクール代表が語る“メンズネイル”の現在地

 職業におけるジェンダーギャップがない社会が求められている。しかし実際には、多くの職業が性別と色濃く結びついているのが現状だ。女性の職業としてのイメージの強いネイリストも、その1つかもしれない。一方で近年は、男性の美意識の高まりからメンズネイルサロンも増えている。職業としての男性ネイリスト、そしてメンズネイルの現在地と未来への期待について、日本初の男性専門ネイルスクール「Vision〜ヴィジョン」代表の鈴木光昭さんに話を聞いた。

名刺交換で目立つ爪をキレイに…ビジネスパーソンの間でもネイルケアが浸透

 東京・立川で日本発の男性専門ネイルスクール「Vision〜ヴィジョン」の代表と講師を務める鈴木光昭さんは、20年にわたって不動産関係に勤めた後に、ネイリストになったという異例の経歴を持つ。

「2014年、42歳のときでした。きっかけは親の介護でしたが、前職に情熱を失っていたこともあり、新しい挑戦がしたかった。妻もネイルサロンとスクールを運営していたため理解があったのですが、周りからは『おっさんがネイリストに…』とかなり驚かれましたね(笑)」

 ネイリスト修行をするなかで「世間にはどれくらい男性ネイリストがいるのか?」と調べたところ、男性がネイリストを目指す上で多くのハードルがあることを知る。

「ネットには『女性ばかりのスクールに通うことに抵抗がある』など、ネイリストになりたい男性のさまざまな悩みが上がっていました。同じ美容のプロでも美容師やヘアメイクは、男性も女性も関係なく働けるのに…。この現状を変えたい、メンズネイリストを職業として確立したいという熱い思いがフツフツと湧いてきたのが、スクールの立ち上げに繋がりました」

 近年はメンズネイルを楽しむハリウッド俳優やK-POPアーティストが増えた。国内ではMattやEXITのりんたろー。が、メンズネイルを積極的に発信している。とはいえ、“ネイル=女性のおしゃれ”というイメージも根強い。スクール運営と並行してネイリストとしても活動する鈴木さんの顧客もほとんどが女性だという。

「職業柄、華やかなデザインやカラーのネイルができない方は女性でも多いですし、まして男性はさらに難しいのでしょう。一方でスポーツ選手やギタリストなど、爪の補強のためにジェルネイルをされる職業もあります。より一般的なケースですと、名刺交換の際に目立つ爪をキレイにしておきたいと、ビジネスパーソンの間でネイルケアはだいぶ浸透してきましたね。若い世代だけでなく、それ以外の世代にも需要が広がりつつあります」

人材不足のネイル業界…性別の偏りをなくすことでハラスメントのない職場環境にも

 近年は都市部を中心にメンズネイルサロンも続々と開業している。

「従来のネイルサロンには“男性お断り”のお店もありますし、そもそも女性的な雰囲気のサロンには入りにくいという男性は多いですから、需要は十分にあると思います。また、女性が好むデザインカタログしか置いていないお店が多いなか、男性が好むようなデザインが試せることも大きいでしょう」

 スタッフは女性が多いが、男性のネイリストを雇用するネイルサロンも徐々に増えているという。

「オーナーさんによると、ネイル業界は常に人材不足なのだそうです。その原因の1つに性別の偏りもあるようです。やはり女性ばかり、男性ばかりの職場はどうしてもハラスメントが起きやすいんですね。男性のネイル業界への進出は、職場環境の安定のためにも大いに意義があると思っています」

 男性専門ネイルスクール「Vison〜ヴィジョン」からは、これまで多くのネイリストが巣立ってきた。従来は女性の職業のイメージが色濃かったネイリストだが、男性ならではの活躍ができる強みはあるのだろうか。

「まず男性ネイリストは女性に比べて力が強いですから、手先をより優しく扱うという意識があります。また僕の生徒には、『プラモデル作りが得意』『細かい絵を描くことが好き』など、職人気質な人が多い。ただ手先の器用さはあまり関係なく、いかに丁寧に仕事ができるかが大切です」

 男性のネイル需要が増えたとはいえ、現状はまだ女性客が多い。対面で異性に手を触れられることに抵抗がある人もいるだろう。

「もちろんなかには、『男性に手を触られるのはちょっと…』というお客さまもいます。そうしたことが起こらないためにも、予約の際に男性のネイリストが対応することを確認する必要があります。ですが、大半のお客さまが施術の時間を楽しんでいただいているようです。1対1である程度の時間を共有するため、家族や友人ではない第三者の異性だからこそ話せることもあるようです」

セカンドキャリアとして独立開業の“おっさんネイリスト”も続々

 もう1つ重要なのが、職業としての確立だ。ネイルプリンターなどの進化やセルフネイル市場の拡大で、ネイリストが「10年後にはなくなる職業」として挙げられることも多い。鈴木さんも「たしかに淘汰はされていくでしょう」と市況を俯瞰する。

「しかしネイリストというのは、単に技術を提供するだけの職業ではないんです。技術は大前提ですが、それよりも重要なのは人間力。実際、施術中にはお客さまから恋愛や人生相談を受けることも多く、どこかカウンセラーのようなものを求められているのかなと感じることもあります。僕の生徒にもセカンドキャリアとして手に職を付けて独立開業した“おっさんネイリスト”が多いのですが、彼らも人生経験を大いに役立てて活躍しています」

 一方で年齢の若い生徒はサロンに就職するケースが多いが、一般にネイル業界は低賃金で労働時間も長い。

「ネイリストはお客さまに感動を与えられる素晴らしい職業なのに、旧態依然とした業界の仕組みに心が折れてしまう人が多いのはあまりに残念です。後進の育成とともに、ネイリストの地位向上や収入の底上げにもさらに尽力していきたい。小学生の男の子が『僕の将来の夢はネイリストになることです』と堂々と言えるような状況にまで持っていきたいですね」

 今後はネイルサロンも技術の提供だけでなく、さまざまな付加価値が求められる。例えば、イケメンだけをスタッフに揃えたネイルサロンが舞台となった韓国ドラマ『ネイルサロン・パリス〜恋はゆび先から』のようなサービスも現れるかもしれない。野心とアイデアに溢れた男性ネイリストたちの活躍に期待したい。

(文/児玉澄子)
◆日本発の男性専門ネイルスクール「Vision〜ヴィジョン」(外部サイト)

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