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(更新: ORICON NEWS

メタバースから霊視体験まで? “Z世代で賑わうスーパー”目指す「ベルク」、その斬新過ぎるマーケティング手法とは

 埼玉・群馬を中心に展開する地域密着型スーパーマーケット「ベルク」。2006年にイオンと提携し、現在は関東地方で129店舗(2022年10月時点)を展開。毎年、右肩上がりに店舗数を拡大している。アイドルや声優とのキャンペーンや、大手食品メーカーとのコラボなど斬新な企画が大きな反響を呼び、普段スーパーに頻繁には通わない若年層からも確かな支持を得ている。Z世代を取り込み、躍進を続ける同社の取り組みを聞いた。

スーパーが“霊視体験”キャンペーン!? 斬新過ぎる企画で “ディープ”な顧客獲得に奮闘

  • ベルク1号店

    ベルク1号店

 1959年、埼玉県秩父市に「主婦の店秩父店」として誕生した「ベルク」。地域の住民に寄り添った経営で着実に店舗数を伸ばし、現在は埼玉、群馬を中心に関東圏で129店舗を持つまでに成長した。激戦を強いられる関東圏大手スーパーの中でも、同じ埼玉県発の「ベルクvsヤオコー」の構図が生まれるなど、業界の活発化に一役買う存在となっている。
 特徴的なのは、Z世代を中心とした新規顧客獲得への様々な取り組み。従来のチラシでの販促に限界を感じ、2020年には、生活者、小売業、メーカーをデジタルでつなぐMMSマーケティングを導入。第1弾として“霊視体験招待”の販促キャンペーンを行なった。レシート画像を送付すると、抽選で“生霊が見える芸人”による霊視体験ができるという斬新な企画。提案を受け、現社長の原島一誠社長が「おもしろそう」と即決、実行へ移した。
「商品だけではなく、サービスを提供するという切り口もおもしろいと思い決断しました。下から上がってきた企画であれば、“そんな企画はふざけてる!”と途中で却下されてしまったかもしれませんが、私がやると決めてしまったのでその後の展開は早かったですね」(原島社長/以下同)

 ターゲットは主に、占いに興味のある女性。イベントで心を打たれ涙を流す人もおり、人数は多くなかったが一人一人の満足度の高さを実感できる結果に。商品を売らなくても消費者に満足度を与えられる手応えを掴み、MMSマーケティングを加速させるきっかけとなった。

MMSマーケティングの第1弾として実施された霊視体験の企画

MMSマーケティングの第1弾として実施された霊視体験の企画

 その後も女性アイドルとのコラボや人気声優が店内ナレーションを担当する企画など、ディープなファンにささる企画で、今までスーパーに足を運ばなかった層へもアプローチ。チラシと違い、効果がはっきりとわかったこともメリットの一つだと原島さんは語る。
「今までは、チラシを配っても売り上げとの因果関係ははっきりしませんでした。しかし、MMSマーケティングの販促キャンペーンは、如実に結果が立証されます。SNSでの“声優さんのナレーションを聞きに行ってきた”という声やハッシュタグで、反響がリアルタイムにわかったことは、社員のモチベーションにもつながりました」

 社員のモチベーションにつながったことは、社内の活性化にも。声優イベントの際は、声優好きの社員が店内販促用のポスターイラストを作成したり、収録に立ち会うなど積極的に参加。アイドルのイベントではアイドル好きの社員が企画提案するなど、それぞれの好きなことや強みを活かして仕事ができる環境を整えた。
「好きなものやコトをどうアピールするかを考えて実行することは、与えられて毎日作業をするより大きな喜びを得ることができます。採用でも、イベントをきっかけに知ってくれた若者の応募が増えたりと、変化を感じています」

 店舗数が多すぎない地域密着型スーパーだからこそ、スモールスタートで思い切った施策ができるのも大きな強み。「声優さんでも、趣味のバーベキューでも、人それぞれ好きなことや胸にささるものは無限にあるので、販促のタネも無限」と原島社長が語るように、可能性は広がる。

コンビニへ向かう若者をいかにスーパーに誘導できるのか? SNSはもちろんメタバースにも参画

 ベルクの大きな目標の一つとして掲げられているのは、コンビニに向かう若年層をスーパーへ呼び込むこと。“スーパーは主婦が行くところ”という思い込みから足が遠のく若者を導くのに、コンビニで成果を上げていたMMSマーケティングは大きな指標となった。実際にSKE48とコラボしたマルサンアイの販促キャンペーンでは、半年分の同社商品の売り上げをわずか1ヵ月で達成するなど、大きく貢献した。
 さらに、実際に足を運んでもらった時に目を留めてもらえるよう、商品ラインナップにも力を入れた。まず目をつけて展開したエナジードリンクは、想像を上回る売り上げで結果を残す。開発するだけではなく、展開の仕方も新たな試みで若者世代に訴えかけた。
「8月に、YouTubeのメタバースの展示会に出展しました。メタバースの中で、カートに乗ってタイムを競うレースを展開し、エナジードリンクを取るとスピードアップするなど、仕掛けを考えました。その世代に合わせた商品開発は、常に心がけています」

メタバースの展示会に出展

メタバースの展示会に出展

  • 若者向けに開発された『あのC班が作ったビーフジャーキー』

    若者向けに開発された『あのC班が作ったビーフジャーキー』

 他にもプロテインやサラダチキンなど、若者に向けた商品を多数展開。お菓子でもSNSを意識した商品パッケージや、ネーミングにもこだわりを持って開発。例えばビーフジャーキーの商品名は、『あのC班が作ったビーフジャーキー』。“あのC班ってなんなの?”と気になるようなネーミングにし、SNSでの拡散を煽った。価格と量のバランス、味や品質にこだわるのはもちろん、尖った商品開発で他とは一線を画した商品を生み出している。

 アイドルとのコラボでも、新たな客層を開拓。各店舗に違うメンバーの等身大パネルを置くことでファンが来店し、SNSでどの店舗にどのメンバーのパネルがあるかを拡散。ファン同士の絆が、新たな客層を呼び込むことにつながった。

 また、イベント時のTwitterも、社内の若手やアイドル好きの社員が担当。現在同社提供のラジオ番組『乃木坂46の乃木坂に相談だ!』が放送中のため、担当者がTwitterにベルクの“うちわ”を作って投稿。すると、ライブ会場に実際にそのうちわを作ってもっていくファンも。こういった取り組みが“共感マーケティング”につながり、関東圏に住んでおらずベルクに馴染みのない人が、ライブで訪れた際に同店舗に足を運ぶなど、輪が広がっている。
「自分が推しているグループに関与していることで、親近感を持って見てもらえることもあり、認知してもらえる機会が増えました。認知の面に関しては、リアルな店舗にしばられず、無限の層がいるなと実感しています」(原島社長)

本社前に“墜落した日清焼そばU.F.O.”を実際に設置 若手社員の感性とスピード感を重視

 さらに、『日清焼そばU.F.O.』のキャンペーンでは、新聞社も加わり、本物のUFOが表れたという号外を配布。本社前にも“墜落した巨大な日清焼そばU.F.O.”を設置し、記念撮影されたものがSNSで拡散されるなど大きな話題に。これによりU.F.O.の売り上げも、180%伸長することとなった。

「原材料が高騰する中、メーカーさんも今のお客様を保持しながら、新しい世代に届けたいという思いはお持ちのはず。ブランドの若返りやリブランディングを考えた時に、新しい層に買っていただける販促はありがたいと言っていただけています」
  • ベルク本社前に巨大な『日清焼そばU.F.O.』を設置

    ベルク本社前に巨大な『日清焼そばU.F.O.』を設置

  • 『日清焼そばU.F.O.』キャンペーンで実際に出た号外

    『日清焼そばU.F.O.』キャンペーンで実際に出た号外

 新しい世代に訴えかけるため、同社では社内の若手教育にも力を入れている。先日もアメリカへの研修旅行へもZ世代の社員を連れて行き、最先端のスーパーを見学。そこで感じた意見や、若い感性も大事に育てている。

 若い芽をつぶさないため、原島社長が社内に浸透させているのが“荒川の法則にならないこと”だ。
「創業の地、秩父に雨が降りそれが川になって荒川に。最初は大きくとがった石も、最後には丸く小さくなってしまうんですよね。大きなアイデアが、荒川の法則で小さくなってしまわないよう、意見を途中で握りつぶさないシステム作りを心がけています」

 もう1つ大事にしているのは、スピード感。実際に売り場で体現してやってみて、消費者の反応を確認。フィードバックして次のサイクルにつなげるPDCA(Plan-Do-Check-Act)を“爆速”で回すことを意識しているという。

 チラシを配り、来店した顧客に商品を提供するのが従来のスーパーの仕組み。おすすめの商品や、夕食の献立などを提示する“提案型”が定番で、どちらかと言うと受け身の姿勢だ。対して同社は顧客を来店させる仕掛けを繰り出す“アクション型”。消費者がアクションしたくなる店舗作りを行っていることが、若者を取り込む一因に。「商品を売っていればそれでいい」という時代から、移り変わる今。同社の新たな取り組みは、これからのスーパー業界に新風を吹き込んでくれるだろう。

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