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メタバースから霊視体験まで? “Z世代で賑わうスーパー”目指す「ベルク」、その斬新過ぎるマーケティング手法とは
スーパーが“霊視体験”キャンペーン!? 斬新過ぎる企画で “ディープ”な顧客獲得に奮闘
「商品だけではなく、サービスを提供するという切り口もおもしろいと思い決断しました。下から上がってきた企画であれば、“そんな企画はふざけてる!”と途中で却下されてしまったかもしれませんが、私がやると決めてしまったのでその後の展開は早かったですね」(原島社長/以下同)
ターゲットは主に、占いに興味のある女性。イベントで心を打たれ涙を流す人もおり、人数は多くなかったが一人一人の満足度の高さを実感できる結果に。商品を売らなくても消費者に満足度を与えられる手応えを掴み、MMSマーケティングを加速させるきっかけとなった。
「今までは、チラシを配っても売り上げとの因果関係ははっきりしませんでした。しかし、MMSマーケティングの販促キャンペーンは、如実に結果が立証されます。SNSでの“声優さんのナレーションを聞きに行ってきた”という声やハッシュタグで、反響がリアルタイムにわかったことは、社員のモチベーションにもつながりました」
社員のモチベーションにつながったことは、社内の活性化にも。声優イベントの際は、声優好きの社員が店内販促用のポスターイラストを作成したり、収録に立ち会うなど積極的に参加。アイドルのイベントではアイドル好きの社員が企画提案するなど、それぞれの好きなことや強みを活かして仕事ができる環境を整えた。
「好きなものやコトをどうアピールするかを考えて実行することは、与えられて毎日作業をするより大きな喜びを得ることができます。採用でも、イベントをきっかけに知ってくれた若者の応募が増えたりと、変化を感じています」
店舗数が多すぎない地域密着型スーパーだからこそ、スモールスタートで思い切った施策ができるのも大きな強み。「声優さんでも、趣味のバーベキューでも、人それぞれ好きなことや胸にささるものは無限にあるので、販促のタネも無限」と原島社長が語るように、可能性は広がる。
コンビニへ向かう若者をいかにスーパーに誘導できるのか? SNSはもちろんメタバースにも参画
「8月に、YouTubeのメタバースの展示会に出展しました。メタバースの中で、カートに乗ってタイムを競うレースを展開し、エナジードリンクを取るとスピードアップするなど、仕掛けを考えました。その世代に合わせた商品開発は、常に心がけています」
アイドルとのコラボでも、新たな客層を開拓。各店舗に違うメンバーの等身大パネルを置くことでファンが来店し、SNSでどの店舗にどのメンバーのパネルがあるかを拡散。ファン同士の絆が、新たな客層を呼び込むことにつながった。
また、イベント時のTwitterも、社内の若手やアイドル好きの社員が担当。現在同社提供のラジオ番組『乃木坂46の乃木坂に相談だ!』が放送中のため、担当者がTwitterにベルクの“うちわ”を作って投稿。すると、ライブ会場に実際にそのうちわを作ってもっていくファンも。こういった取り組みが“共感マーケティング”につながり、関東圏に住んでおらずベルクに馴染みのない人が、ライブで訪れた際に同店舗に足を運ぶなど、輪が広がっている。
「自分が推しているグループに関与していることで、親近感を持って見てもらえることもあり、認知してもらえる機会が増えました。認知の面に関しては、リアルな店舗にしばられず、無限の層がいるなと実感しています」(原島社長)
本社前に“墜落した日清焼そばU.F.O.”を実際に設置 若手社員の感性とスピード感を重視
「原材料が高騰する中、メーカーさんも今のお客様を保持しながら、新しい世代に届けたいという思いはお持ちのはず。ブランドの若返りやリブランディングを考えた時に、新しい層に買っていただける販促はありがたいと言っていただけています」
若い芽をつぶさないため、原島社長が社内に浸透させているのが“荒川の法則にならないこと”だ。
「創業の地、秩父に雨が降りそれが川になって荒川に。最初は大きくとがった石も、最後には丸く小さくなってしまうんですよね。大きなアイデアが、荒川の法則で小さくなってしまわないよう、意見を途中で握りつぶさないシステム作りを心がけています」
もう1つ大事にしているのは、スピード感。実際に売り場で体現してやってみて、消費者の反応を確認。フィードバックして次のサイクルにつなげるPDCA(Plan-Do-Check-Act)を“爆速”で回すことを意識しているという。
チラシを配り、来店した顧客に商品を提供するのが従来のスーパーの仕組み。おすすめの商品や、夕食の献立などを提示する“提案型”が定番で、どちらかと言うと受け身の姿勢だ。対して同社は顧客を来店させる仕掛けを繰り出す“アクション型”。消費者がアクションしたくなる店舗作りを行っていることが、若者を取り込む一因に。「商品を売っていればそれでいい」という時代から、移り変わる今。同社の新たな取り組みは、これからのスーパー業界に新風を吹き込んでくれるだろう。