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“門外漢”が制作したことで共感得た『関ジャム』が音楽の構造を極める理由「『Mステ』がA面なら、『関ジャム』はB面」

  • (C)テレビ朝日

    (C)テレビ朝日

 昭和時代、「歌番組」はテレビの花形だった。だが『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)や『ザ・ベストテン』(TBS系)のような「ザ・歌番組」は姿を消していき、今となっては『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)のような歌唱をメインで押し出す番組は地上波では数少ない。そんな中、異彩を放っているのが関ジャニ∞の冠番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)だ。セッションあり、裏方の音楽情報あり。同番組出演をきっかけにブレイクするアーティストもいる。そんな『関ジャム』だが、実は音楽班メインで制作された番組ではない。同番組の“特殊さ”にスポットライトを当ててみた。

『ロンドンハーツ』スタッフが制作する異色の「音楽番組」

  • (C)テレビ朝日

    (C)テレビ朝日

 『関ジャム 完全燃SHOW』は、バンドとしても活動する関ジャニ∞が、ゲストアーティストとセッションをしたり、音楽業界をけん引するプロデューサーや裏方の人間らと、制作の裏側や専門テクニックなどを掘り下げる音楽バラエティ。

 夫であり音楽プロデューサーの松任谷正隆が登場した「松任谷由実特集」、「アルバムで聴いてほしいJ−POPの名盤」、「歌い手特集」、音楽プロデューサーによる「プロが選ぶ年間マイベスト」など、音楽を演奏して魅せるだけでなく、音楽を“語る”という点で他の音楽番組とは一線を画している。

 番組スタートは2015年。当初は関ジャニ∞とゲストの持ち歌コラボだけではなくパーソナルを掘る企画も行われていたが徐々に方向性が変わっていく。番組起ち上げから制作に携わる藤城剛プロデューサー(演出兼任)は、こう語り始める。

「僕は元々、音楽畑の人間ではないんです。現在でも『ロンドンハーツ』(テレ朝系)はずっとやっていて、いわば番組で落とし穴を掘ったり、隠し撮りをしていた人間なんです(笑)。その僕が携わる初めての音楽番組。しかも関ジャニ∞さんも初めてというところで、バンドセッションを見せていただき、ほかゲストアーティストの音楽面だけではないプライベート面も扱えたらいいなという感じで始まりました」

 同番組のターニングポイントとなったのは、ゲスの極み乙女のゲスト回。それまでは楽曲面の分析などはあったが、事前の川谷絵音との打ち合わせで、川谷が「曲は音楽スタジオでその場で作ることが多い」と聞き、それを実際に収録中に行うことは可能かと提案。快諾してもらい、曲作りをそのままOAした。「そのドキュメント性が面白く、音楽を詳しく知らない人でも、目の前で楽曲制作が行われている様は見ごたえがあるなと感じました」

山下達郎が音声出演も テレ朝の財産『Mステ』があるからこそ出来た挑戦

  • (C)テレビ朝日

    (左から)いしわたり淳治、あいみょん、Sundayカミデ(C)テレビ朝日

  • 番組起ち上げから制作に携わる藤城剛プロデューサー(演出兼任)(C)テレビ朝日

    番組起ち上げから制作に携わる藤城剛プロデューサー(演出兼任)(C)テレビ朝日

 もう一つは番組の準レギュラー的存在であるヒャダインと蔦谷好位置の存在だ。「特に蔦谷さんはプロデュースメインの方なので、僕のような音楽に詳しくない人が知らない良い楽曲を挙げてくださり、この曲のここがいい、など解説してくれたんです。それが面白かったので、ヒットチャートに載っている方だけではない、これからの、まだテレビにはあまり出演していないアーティストさんたちの分析なども始まりました」

 こうして現在、毎回放送のたびに、「#関ジャム」で感想がSNSに多数寄せられるようになった。なかでも2週に渡って放送された「山下達郎特集」の回は、本人が音声で登場。普段インタビューでも聞くことができない音楽観を垣間見れ、「関ジャムの山下達郎特集は良かった!ずっとファンでいてよかったと思わせる内容だった」「どの質問も質問を遥かに超えた素晴らしい回答で、最後の海外ライブの可能性は? の回答が素晴らしすぎて泣いてしまったよ。」などのコメントがネット上に踊った。

 本来はバラエティ班で、音楽番組は“門外漢”。だが、それでも音楽をここまで深く追求できたのは、もちろん彼や担当ディレクターの勉強の成果もあるが、『Mステ』の存在も大きい。「山下達郎さんは僕がお話を聞いたのですが、専門的すぎて、僕もよく分からない部分も多々あったんです。ですが、その“プロが語る本気のトーク”の迫力はすさまじく、それはそのまま伝えるのが良いと判断しました。そんな中、『Mステ』からのスタッフの協力が心強い。音楽のプロが語る難度の高い話をどこまでわかりやすくして良いか?その辺の匙加減を、音楽を専門とするスタッフと練り直すことが、関ジャムの個性の一つだと思います」

 そんな専門性も功を奏した。番組で特集された翌日サブスク上位にランクインしたり、玉置浩二をはじめ、アルバムやライブDVDの売り上げが上昇する現象も起こっている。

「僕たちとしては『関ジャム』がそれだけの影響があると言っていただけるのは、本当にありがたいの一言です。ただ僕は過去の音楽番組を勉強しているわけではない。『Mステ』という王道音楽番組がテレ朝に歴史にあり、それがあるからこそ『関ジャム』をやらせてもらっているという意識がある。アーティストが楽曲をいかに格好良く生放送で披露するか、という『Mステ』がA面なら、『関ジャム』はそのB面。それぞれ違う伝え方の音楽番組ができないか。その王道の音楽番組の裏側ではどんなことが行われているか。そうしたことを『関ジャム』で伝えて補完しているような感じがします」

サブスクの登場で音楽視聴の変化によって「音楽番組」も姿を変えた

 これまでもタモリやKinKi Kids、ヒャダインや岡崎体育らによるディープな音楽番組はいくつもあった。だが、『関ジャム』が唯一無二の光を放っているのは、バラエティ班という門外漢が、専門外の音楽番組を作っているからかも知れない。基礎の基礎から分からないところは聞き出し、さらにはセオリーや“当たり前”も吹き飛ばしてトライする。実際、音楽Pの松尾潔からは「バラエティを作る人が制作しているから『関ジャム』ってこういう番組なのかな」と言われたこともあると言う。

「それに本筋のバラエティ番組でここまでのトライができるかと言われると、出来なかったかもしれない。それぐらい『関ジャム』ではいい意味で冒険させてもらってます」
  • 藤城剛プロデューサー(演出兼任)(C)テレビ朝日

    藤城剛プロデューサー(演出兼任)(C)テレビ朝日

 もちろん、関ジャニ∞の功績は言うに及ばずだ。「出会った当初から、音楽に撃ち込む真摯な姿勢は舌を巻くほど。さらに、ゲストから話を聞き出す時にも、本筋の質問に入る前にゲストが話しやすくなるトークで場を温めてくれる。打ち合わせも台本は読んでもらった上で10分ほどで終了。そこからしっかりと場を回し、深堀りしてくれる」

 メンバー脱退など関ジャニ∞自体に変化はあるが「ボイトレ回など関ジャニ∞さんに密着して感じたのは、どんな変化があってもそれに対応し、変化に合わせて進化していこうとすること。それでいて、いまだ僕も把握できないほどにそれぞれの個性が強い。素晴らしい方々と仕事ができて光栄です」と称賛している。

 また「音楽番組」が減ってきていると先述したが、藤城氏によれば「見せ方が変わり、過去のベストテンのようなものが減っただけで、『関ジャム』をはじめ、音楽を取り扱う番組の数自体は減ってない。今はサブスクなど音楽の聞き方も変わった。それならば音楽番組も姿かたちを変えるのは自然」と分析する。

「今後も、“置き”にいかず、失敗をおそれずトライしていきたい。関ジャニ∞さんの番組なので、音楽番組の∞(無限大)の可能性を探求していきたい」と藤城氏。『関ジャム』が、また「音楽番組」が今後どう進化していくのか、音楽好きとしてもワクワクしてくる。

(取材・文/衣輪晋一)

【関ジャム完全燃SHOW】

あいみょん企画
あいみょんが影響を受けた『人生のラブソング5曲』&最近、グッときた『令和のラブソング』2曲を紹介
9月4日(日) よる11時〜 テレビ朝日系
公式HP https://www.tv-asahi.co.jp/kanjam/

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