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安易に天才と言う勿れ… 『ミステリと言う勿れ』P語る配役の理由「整くんは菅田将暉しかあり得なかった」

菅田将暉主演ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)

菅田将暉主演ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)

 人気漫画を実写化するのは、話題性と固定ファンがいるメリットがある分、原作ファンから批判を浴びるリスクも伴う。現在放送中のドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)は、放送前から主人公演じる菅田将暉に対し賛否の声が挙がっていたが、第1話から見逃し配信再生数がフジ最高記録を大幅更新(FOD、TVer、GYAO!、Yahoo!の合計値)、視聴率はその後も連続2桁、ORICON NEWSが行ったドラマ満足度ランキングでも1位をキープしている。累計発行部数1400万部を超える人気コミックを実写化するにあたり、どのようにアプローチしていったのか。草ヶ谷大輔Pに話を聞くと、改めて菅田将暉という俳優の凄みが浮き彫りとなった。

映像化の問合せ殺到していた超人気作、余計なオリジナリティは排除 主演の菅田は即決

  • 原作の『ミステリと言う勿れ』第1巻(フラワーコミックス)

    原作の『ミステリと言う勿れ』第1巻(フラワーコミックス)

 『ミステリと言う勿れ』は、天然パーマがトレードマークの大学生・久能整が主人公。社会では当たり前とされている常識にも常に疑う視点を持ち、普通は見逃してしまうわずかな違和感にも気づいて、結果的に難事件を解決。同時に人の心の闇も晴らしていく。

――第5話までの放送を受け、反響はいかがですか。

草ヶ谷大輔 原作を読んでいらっしゃらない方々からは、「ストーリーが予測不能で面白い」「整くんの言葉が響く」といった声が多いです。原作を読んでいらっしゃる方からは、放送前は特に皆さん不安視されていたんですが、徐々に「これはこれで面白い」とか「菅田将暉の整くん良い」といった声も見られるようになりました。
――本作は、実写化する上で、どのような原作とのバランスを目指したのでしょうか。

草ヶ谷大輔 過去には、原作を如何にドラマで面白く魅せるか考える上で、改変だったり、ドラマ独自のオリジナリティ出したりする面に心を砕いていました。ですが今回は真逆で、作者・田村由美先生の哲学が詰まったこんなに素晴らしい原作と台詞、ストーリー展開を我々の手で壊してはいけないという想いがまずベースにありました。

全テレビ局、各映画会社から、ものすごい数の映像化の問合せが殺到していた作品で、まさかフジテレビが奪取できると思っていませんでしたが、そんな素晴らしい原作を如何に壊さず、余計なオリジナリティを排除して映像を作っていくか。そうしてキャスティングを考えた時、菅田将暉さんしか思いつかなかったのです。

――その理由は?

草ヶ谷大輔 また、久能整は感情を表に出さない、基本的に仕草や動作もないので、役者の表現範囲が狭まるんですね。その状況でも説得力のある言葉を発せる方、間違えたら説教くさくなってしまうので、きちんと人の心に響いていく表現をしてくださる方と考えると、菅田将暉さんしかあり得なかった。そして菅田さんがこれを見事に演じていただけたことが、今の反響につながっているのでは、と考えています。

「自ら原作者への取材を懇願した俳優は初めて」菅田の原作へのリスペクトと表現力に田村由美も感嘆

似てる? 久能整を演じた菅田将暉(C)フジテレビ

似てる? 久能整を演じた菅田将暉(C)フジテレビ

――役作りにおいて、菅田さんとはどのような話を?

草ヶ谷大輔 実は菅田さんは最近、これまで続いていた原作モノはしばらく控えようと考えていたそうです。ですが我々のオファーを受け、同作を読んだら「是非やりたい」と。整くんの既成概念に囚われない言葉、斬新な切り口での考え方にすごく共感したとおっしゃっていました。そして、本作は田村先生が日頃から思っていることが台詞になっている作品。だから田村先生に取材を行いたいと。俳優から原作者に取材をしたいと言われたのは初めてでした。驚きましたね。
――田村由美先生は、現場にもよくいらっしゃったと伺いました。

草ヶ谷大輔 そうです。田村先生は菅田さんの演技を見て、「整ってこういう風に喋るんだという発見があった」とおっしゃいました。それは「イメージ通り」「イメージと違う」とかを超えた、最高の褒め言葉ですよね。初回放送が終わった直後には、「とにかく素晴らしい、泣きましたよ」と電話で言っていただきました。

原作の整くんは多くの台詞を喋っていますが、口が開いている描写がないんです。1コマでものすごい情報量の台詞を話していますから、その“間”…話しながら口を動かしている表情や雰囲気を読者に想像させているんですね。それを映像化するには、その“間”を役者が芝居で埋めなければいけない。監督も交えて菅田さんとお話したんですが、整くんは友達も恋人もいない風変りな人物だが、人の気持ちもわかるし、表に出なくても感情がある。痛いものは痛い。その“人間味”で、キャラクターを立体化してもらいました。

久能整を“キャラクター”ではなく“人間”として演じた菅田に脱帽「天才である以上に努力家」

――原作者も唸った菅田さんのお芝居、プロデューサー目線で感じたことは?

草ヶ谷大輔 僕が個人的に驚いたのは、第1話。藪刑事(遠藤憲一)に胸ぐらをつかまれ、「結婚もしてないお前に俺の気持ちの何が分かるんだ」と怒鳴られた時に「分かりません。けれど、僕は子どもだった時があるから、子どもの立場でものを言っているんです」という台詞があるんですが…。

――その場面は、菅田さんご自身も印象に残る台詞として挙げてらっしゃいました。

草ヶ谷大輔 あのシーンは菅田さんの言い方や表情がすごく“人間”なんですね。原作のイメージでは淡々としているんですが、整からすれば、胸ぐらをつかまれる理不尽さも含めて、「だからと言って罪のない人を犯罪者にしてはいけない」というある種の怒り、さまざまな感情を含めて放った一言なんです。菅田さんは、久能整を“キャラクター”ではなく“人間”として演じた。彼は頭で考えて演じていない、感情があるのが伝わるんです。現場で見て鳥肌が立ちました。憑依型だとは知っていましたが、ここまでとは。
――どれぐらい憑依しているのでしょう。

草ヶ谷大輔 例えば整くんは、目につくものや気になるものは全部口に出してしまうんです。その整くんが憑依しているので、撮影期間中は菅田さんもちょっとしたこと…カメラが回ってないところでも「どうして非常口を示す灯りは緑なんですかね」と、整くんのような反応をしていました。また、本作は1年以上前に撮影したのですが、当時の「菅田将暉です」という挨拶と、こないだ会った時の「菅田将暉です」は全然違う。整くんを演じていた時は、目の力、話し方も穏やかで、今の方が鋭いんです。

――普段から、“久能整”が彼の中に憑依していたんですね…。

草ヶ谷大輔 第4話ではユナボマーという実在の連続爆弾魔の話が出ましたが、「この人、こうだったらしいですよ」と素性を調べていた。第5話では、哲学者マルクス・アウレリウスの『自省録』が登場。作品では暗号でのみ使われましたが、菅田さんはさらっと「『自省録』ってめちゃめちゃ面白いですよね」と。なんと、全部読まれていたんです。
――台本だけではなく、小道具の本まで。

草ヶ谷大輔 彼は天才と言われています。もちろん天才ですけど、それ以上に努力家。その役を自分のものにするために考えられない量の努力をする。天才とはそういうものなのかもしれない。菅田将暉さんを見て、私はそう思いました。

――ドラマ版『ミステリと言う勿れ』の今後の展開がますます楽しみになりました。

草ヶ谷大輔 回を増すごとに、整くんがぼんやり見えてたものが、段々とバックボーンや考えていることまで見えてきます。様々な事件に巻き込まれ、いろんな人と出会い、いろんな会話を交わしていく中で、ハッとさせられるような言葉の数々が出てきます。当たり前にそこにあるもの、当たり前とされている常識みたいなものが、なんでなんだろう、誰が決めたんだろう、と考える。それをちゃんと、感情を抜きにしてみんなで意見を交わし合える世の中になっていけば、何かが変わっていくのではないかと思います。本作を通して、菅田さん演じる久能整のセリフを通して、当たり前や常識に流されず、自分の考えや意見を持って相手に話していく大切さが伝わればうれしいです。


(文/衣輪晋一)

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