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『あたしンち』の母は“毒親”なのか? 作者が感じる時代の変化と、令和の新作に込めた想い「日常は得がたい“宝”」

  1994年に読売新聞で連載を開始し、2002年にはアニメ化、その後映画化もされた人気漫画『あたしンち』。2012年に連載が終了し、最終巻と銘打った21巻で完結したかに思えたが、2019年に週刊連載を再開。昨年新たに『あたしンちSUPER』第1巻が発売された。新刊には、キャラクターがスマホを所持し、コロナ禍でのマスク姿も描かれている。再開した『あたしンち』が令和の時代にもたらすものとは。原作者のけらえいこさんに話を聞いた。

10年前の最終回…母が空を飛んだ真相「ふつうの日常エピソードで終わらせたかった」

――17年以上連載を続けていた作品を、2012年に一度を終了されたのはなぜだったのでしょうか。

『あたしンち』は旦那に執筆活動をサポートしてもらっていて、共同作業者のように物語も一緒に考えてもらっているのですが、夫婦で体調を崩したことが一番の理由です。当時のインタビューでは「主人公の年齢を、自分が超えてしまったから」と理由をつけていましたけど、それは内容サイドの理由。もう一つの理由は、体力の限界でした。かなり根をつめて作業していましたから。

――読売新聞で連載していた時の最終回、お母さんが空を飛んでいるというストーリーが話題になりましたが、その真意は?

私としても、ふつうの日常エピソードで終わらせたかったんですけど、「17年間の有終の美を飾る」エピソードが浮かびませんでした。日常の話でそういうのを描くのは、すごいパワーが要るんですけど、その時はそこまでの体力がなかった。

でもあの、ミュージカル風のエンディングは、自分としては気に入ってるんです。お印、だけになっちゃったけど、がんばったので。その後、一部でザワザワされたことを知って、ビックリしました。描いてる側は、読んでる側よりも自由なのかもしれません。

――そんな最終回から7年半、お休みの期間を経て、2019年に週刊誌『AERA』にて連載を再開されました。もう一度描こうと思えた理由は何だったのでしょう。

それは、ネットの反響のお陰です。世の中が変わって、みなさんの反応がメチャクチャ作者に届くようになって、また読みたいと思ってくれてる人がたくさんいることがわかったからです。休んだお陰で、体力も戻りました。

母が「毒親」と言われることも「それでも私にとっては可哀相で、超面白い人」

――『あたしンちSUPER』では令和版にアップデートされ、みんながスマホを持っていたり、料理のオンライン注文サービスを利用しようとする父の姿が見られたりと、現代を反映させた内容となっています。日常系の漫画・アニメ作品の通例にあわせず、物語の時代背景を変化させたのはなぜだったのでしょうか。

以前は、わざと、時事的なことを入れないようにしていました。そのほうが古びないと思ったので。でも年を取った今は、そういう作戦を立てずに好きに描いています。もし連載の途中で、急に、スマホが登場していたら、変だったと思いますけど、7年もインターバルがあったので、新しくしやすかったです。

――逆に変えないようにしているところは?

人を笑わせるのはむずかしいけど、できるだけ笑わせたい、というスタンスです。

――時代の変化を取り入れながらも、「笑わせたい」という想いは変わらず、これまで通年で約20年『あたしンち』を描き続けてこられましたが、読者の受け取り方や反響などで、変わったなと思うところはありますでしょうか。

20年前と今の世の中は、人の考え方や感覚が大きく変わりました。私自身が未熟で、母の描き方を失敗して、ネットで「毒親」と書かれることもあります。昔は、ネットもなかったし、そう感じる人自体も少なかった気がします。

母は、私の実母がモデルで、マンガそっくり。「未熟で不器用で必死」な人です。私にとっては、可哀相で、超面白い、漫画のネタになる人。

意外と複雑なキャラで、読者さんの反応も、複雑なんです。陽キャだから、憧れる人もいるし、態度が悪くて、傷つく人もいる。ビックリするのは、食事が貧しくて傷つく人の多さです。時代をいちばん感じます。けど、マンガなので、楽しく見てほしい(笑)。

今は多少気をつけてますけど、昔はそういうこと全く考えずに、のびのび描いてました。

長く愛されたのは「声優さんのおかげ」 初めて明かす“母”の設定とは

――しかし、そんな中でもYouTube公式チャンネルには約60万人もの登録者がおり、現代でも多くの人に『あたしンち』は届き、愛され、そして楽しまれています。時代が急激に変化していても、『あたしンち』が視聴者に受け入れられ続けている理由は何だと思われますか。

私は、声優さんの力がすごく大きいと思っていて。友達じゃないのに、ほんとの友達みたいな感じがするんです。遭難したとき遠くに民家の灯りが見えたみたいな「人がいる感」「安心」を感じる、声。私自身、あの声優さんたちの声は、日常の「手すり」と思っていて、心の支えになってます。そういう、現実の友達感がいいのかな?と思ってます。

――最後に、令和の『あたしンち』で届けたいものを教えてください。

私は、“映えない日常”を少しでも楽しく過ごしたいと思っていて。特に笑えるようなことじゃなくても、その日常の実感は、得がたい“宝”だと思うんです。『あたしンち』は、全部、私が実感したこと。特に、その人が、その人らしくある、ってことに、キュンとします。届けているのは、そういう“宝”だと思っています。

最後に、ファンの方は驚かれるかもしれませんが、言っていなかった設定があるんです。それはあたしンちの母が専業主婦ではないということ。漫画では専業主婦だと書いたことはない気がする。モデルである私の母は、パートで必死に働いていたので、マンガの母も、そうさせる予定でした。でも取材に行く余裕がなかったんです・・トホホです。インターネットのない時代、取材は、今よりはるかに手間がかかるものだったので、そのうち、そのうち…と思っていたら、連載が終わってしまいました。パワーがあれば、そんな、やり残したお話しを描きたいと思っているので、よろしくお願いします。

『あたしンちSUPER』第1巻

帰ってきたタチバナ家の、令和の日々♪ 母、みかん、ユズ、父は、楽しく日常を送っていますが、スマホもあれば、コロナもたいへん。

全62話の、SUPERサイズで、お届けします。

定価990円(税込)128頁 オールカラー

朝日新聞出版刊

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