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「動かない脚で、一歩前へ!」骨盤がない子猫、ヨチヨチ歩きでも負けない…好奇心旺盛に前進
骨盤がない子猫、もずく
自力で排せつができず、ちゅ〜るも一口だけ 骨盤がない子猫
「もずくは『ねこけん』のメンバーが見つけ、拾ってきました。後ろ足が動かず、いくつかの病院に連れて行きましたが、骨盤自体がないことが発覚したんです。これまで奇形で骨盤自体がとても狭かったり、脚が動かなかったりする子もいましたが、骨盤のない猫は初めてでした」
動かない2本の後ろ脚は前に突き出され、前脚だけでなんとかヨチヨチと歩ける状態。保護したときは生まれて3〜4ヵ月の子猫に見えたが、食事がまともに取れなかったであろうことを考えると、実際は5〜6ヵ月経っている可能性もあるという。
手脚が不自由になってしまう猫は、意外に多い。事故によるケガなどが原因となるだけでなく、神経疾患により脚が麻痺してしまう猫もいる。そういった猫は飼い主がいれば治療やケアをできるかもしれないが、外で生きる猫にはほとんど望みがない。もずくは、メンバーに発見されるという奇跡を呼び込み、なんとか生きながらえる可能性をつないだ、幸運な猫だった。
骨盤がないもずくは、自力で排せつができない。時間を見て、圧迫排尿をするケアも必要だ。常におむつを付けているが、うんちが漏れてしまうこともある。食べ物にも制限があり、うんちが詰まらないよう可溶性繊維のご飯を食べ、大好きなちゅ〜るもひと口しか口にできない。しかし、ヨチヨチと歩きながらも、表情は好奇心旺盛な子猫そのもの。前脚だけで一歩、また一歩と前へ進んでいる。
一生高いところへ登れなくても…それでも、もずくは生きている
「今後、もずくがどのように育っていくかはわかりません。自分で排泄ができるようになるのか。たとえ排泄できるようになっても、おそらく定期的に病院へ通わなければいけないので、お金もかかります。解決できないような重大な病気・障害を持つ子は、里親さんに譲渡するのが難しい場合も多い。そのため、もずくが寿命をまっとうするまで、うちで面倒を見たり、ボランティアメンバーが引き取る可能性も高いです」
これが人間であれば、何かしら行政の力に頼ることもできる。だが動物には、そのような補助はない。重い病気や障害があれば、それは命を失うことに直結する。もずくは、『ねこけん』による保護とケアがなければ、おそらく生きてはいけなかっただろう。
そんなもずくだが、この子猫に悲愴な表情は見えない。もずくにとって後ろ足が動かないことは、当り前なのだ。それでも生きている。一生、大好きな高いところへは登れず、歩くことさえままならないもずく。それでも、普通の子猫と同様に好奇心いっぱいな顔をして前へ進んでいる。前足だけで、一歩ずつゆっくりと、愛情に包まれた幸せな未来へ向かって。
(文:今 泉)
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