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看護師が泣きながら救った「汚い猫」、太陽の光が原因の腫瘍を抱え…今では子猫の面倒を見るまでに快復
保護主は看護師、泣きながら「汚い猫」を案じた
きーちゃんを発見した保護主は、職場の人からそう聞いて、仕事中も気になって仕方なかったらしい。「保護された方は看護師さんで、仕事が終わった後、急いで見に行ったということです。すると、真っ黒に汚れ、やせている猫を発見し、泣きながら『ねこけん』に相談してくれました」と溝上氏はきーちゃんを拾ったときの経緯を説明する。「大丈夫だから、まず捕まえて病院へ連れていってください」とアドバイスすると、保護主は家へ戻り、キャリーバッグに猫を入れると病院へ急行した。
保護主はなんとか猫を家族に迎えようと頑張ったが、どうにもならない事情があり、引き取ることはできなかった。
「申し訳なさそうに泣いて謝る保護主さんに、『大丈夫ですよ、ありがとうございます』と伝えました。ただ、『シェルターの空きが出るまでほんの少しだけ預かっていただけますか』と伝え、しばらくの間、預かっていただきました。この方は、なんとか保護した猫を助けようとする、とても責任感の強い方。猫を引き取りにいったときも申し訳なさそうに何度も謝られて。そこまで考え、行動してくださった保護主さんの心意気にうれしくなり、本当に感謝しています」
そのとき保護主は、当面の医療費として寄付もしてくれたそうだ。
白猫に多い、太陽の光に当たるだけで耳に腫瘍が?
「耳だけだったので、耳を切って腫瘍を取り除けば、助かる可能性が十分ありました。これが顔にまで進行していたら、手の施しようがありません。そこまでいくと顔も3倍ぐらい腫れあがってしまうんです」
ただ、きーちゃんが路上でうずくまっていた原因は、扁平上皮がんで弱っていたからではなかった。
「風邪で弱っていたため、きーちゃんは路上にうずくまっていたんです。それを、たまたま心優しい方が保護してくださったからこそ、きーちゃんは助かりました。ある意味、幸運だったといえるでしょう」
風邪の治療をして、体力が落ち着いてから、きーちゃんの耳の腫瘍は無事に切除された。
「扁平上皮がんのひとつの原因は紫外線です。お日様に当たる耳の先端で発症することが多く、なぜか白い猫に多いようです」
「器物扱い」から徐々に変化も…、警察官から保護猫の相談が増加
「なかでも顕著に増えたと思うのが、警察からの相談です。今まで保護猫案件は、すぐに愛護センターへ送られることがほとんどでした。でも今は、猫を助けようとしてくれる警察官の方が増え、まず保護団体に連絡をしてくれるケースが増えました。特に、若い警察官の方に多いですね。おそらく、以前よりも動物愛護について勉強されているんじゃないかと思います。猫を器物ではなく、ちゃんと命として扱ってくれる警察官の方が増えたことは、とても心強いことです」
いまや、ほかの子猫の面倒を見るまでに元気になったきーちゃんは、預かりメンバーの家でのんびりと暮らしている。保護主が行動に移さなければ、おそらく今のきーちゃんはなかっただろう。そんな幸運をつかみ、病気に負けずに生き延びたきーちゃんに待っているのは、きっと希望に満ちた世界だけだ。
(文:今 泉)
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