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結局“あざとい”が強い? 本田翼、弘中綾香、吉岡里帆…今年活躍した女性陣に見る逆転劇

  • 今年多方面で大活躍だった本田翼、吉岡里帆、弘中綾香(C)oricon ME inc.

    今年多方面で大活躍だった本田翼、吉岡里帆、弘中綾香(C)oricon ME inc.

 今年の『タレントCM起用社数ランキング』(ニホンモニター調べ)で、初の1位に輝いた本田翼。『好きな女性アナウンサーランキング』(ORICON NEWS調べ)では、弘中綾香アナが3連覇。2年連続のレコ大司会が発表された吉岡里帆も、CM起用にドラマ主演、アニメ声優、ラジオパーソナリティと、多方面で大活躍だった。それぞれブレイク当初は「あざとい」などと同性からの批判がピックアップされることもあったが、なんだかんだ嫌われず、むしろ徐々に同性人気も広げている印象だ。結局“あざとい”が強いのだろうか。

悪口から褒め言葉に昇格した「あざとい」 “カワイイ”への努力惜しまぬ田中みな実が立役者に

 前述3者の共通項と言えば、「あざとい」の言葉が浮かぶ。ブレイク当初こそ同性からの批判的意味合いで使われていたが、いまや褒め言葉として使われている印象もある。そもそも、かつては「あざとい」も「ぶりっこ」も、「媚びている」というネガティブな意味合いで使われていた。「あざとい」を漢字で書くと「小聡明い」。つまり「小ずるがしこい」といった、相手を上から目線で軽んじる言葉だった。

 「ぶりっこ」は「かわいいふりをする」から、「かわいこぶる」→「かわいこぶりっこ」と経て成立。漫画家の江口寿史が『すすめ!!パイレーツ』(集英社)の中で使ったことから拡がり、松田聖子のデビュー、そして1981年に山田邦子が『邦子のかわい子ぶりっ子(バスガイド篇)』というレコードを出した頃には一般化されたといわれる。いわゆる「猫かぶり」であり、「本性は違う」「嘘つき」「異性の前だけでかわいい振りをする」という蔑み言葉だ。

 これらは珠緒や小林麻耶、小倉優子らに使われていた頃は総じて、ネガティブなイメージで使用されていた。だが、近年の「あざとい」は「ぶりっこ」とは一線を画し、“カワイイ+賢さ”を併せ持った褒め言葉にも使われており、実際に「あざとかわいい」という言葉まで浸透した。
 「この傾向を決定づけた象徴といえば、やはり田中みな実さんでしょう」と話すのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。局アナ時代は「ぶりっこ」として、“女に嫌われる女”代表格であったが、男性ファンを中心に人気アナとして活躍。しかし2014年にフリー転身後、闇キャラや自虐コメントも開放。「ぶりっこ」ではなく、“場面によって適切なキャラを使い分けている”といった「あざとさ」が見て取れるようになると、2016年に『好きな女性アナウンサーランキング』(ORICON NEWS調べ)初TOP10入り。

 その後も、美容に対するストイックな姿勢や弛まぬ努力も発信するようになると、“自分のことを可愛いと思っている人”というよりは、“めちゃくちゃ努力して美を保っている人”として、同性の憧れの対象に。「あざとい」が努力の一部として認められるようになった立役者ともいえるだろう。彼女が紹介したコスメ等はヒット連発し、ファッション誌や美容誌にも数多く登場。2019年、2020年には同ランキング2位をキープし、局アナ時代とはまた違った支持を確立した。

弘中綾香から学ぶ“あざとさ”の中の“賢さ” 愛される&嫌われる境界線とは

 そんな田中みな実を凌ぐ人気っぷりを発揮しているのが、今年、同ランキング3連覇となった弘中綾香だ。昨年より、田中みな実と『あざとくて何が悪いの?』MCを務め、時には「あざとい」一面を見せながらも、大物や男性にも「媚びない」姿勢が彼女らしさ。6年間担当した『Mステ』で鍛えられたのか、どんな大御所相手でもひるまない堂々とした立ち振る舞いと歯に衣着せぬトークで、これまでにないアナウンサー像を形成した。

 誰彼構わず相手に媚びるのが「ぶりっこ」だとしたら、その場の空気を読み、時には可愛さをもって相手をコントロールできる対応力が「あざとさ」と言えるかもしれない。もともとは他局のアナウンサーの先輩で、ともすればキャラ被りしそうな田中みな実とも、『あざとくて〜』番組内で上手く後輩らしさを見せながらも、求められれば「あざとかわいさ」も披露する弘中の立ち振る舞いは、まさに“賢さ”として映る。異性同性ともに人気を集め、3連覇達成するのも納得だ。
 本田翼、吉岡里帆も同様。女優として「ぶりっこ」っぽいポーズや役をCMやドラマで見事に演じていたことから、当初は男性人気が集中。しかし、本田翼はYouTuberとしてゲーム好きな一面を見せたり、『ぐるナイ』のゴチメンバー、『中居大輔と本田翼と夜な夜なラブ子さん』MCなど、バラエティでも活躍の場が広がってくると、「実際は真面目で良い子」といった印象が同性にも浸透。「ぶりっこ」イメージも、女優として役を全うしていただけだと視聴者が認識したのかもしれない。

 吉岡里帆はグラビアやどんぎつねのCMの印象が今もあるが、ラジオパーソナリティやレコ大司会、ファッション誌、バラエティ出演などを通して、最近は同性人気も上がってきた。どんぎつねは今やコスプレの定番ともなり、ハロウィン時期やアイドルの卵の撮影会でかなりの確率で遭遇できる。

「“あざとい”の言葉のイメージには“計算高い”があり、これが“モテテク”として少女漫画雑誌、ファッション雑誌などでマニュアル化されたことも大きい。ギャル界でも2000年代に『小悪魔ageha』(主婦の友社)がヒット。“小悪魔”要素を、媚びないタイプの女性が“カワイイ”としたことも、“あざとい”が認められる素地を作ったと考えられる。さらに昨今では、男性にも“あざとい”という言葉が使われています。“媚びる”、“ぶりっこ”にはない傾向で、さらに“あざとさ”が広く受け入れられている証拠なのでは」(衣輪氏)
 さらに「あざとい」が人気を獲得する背景には、本人たちの“批判を受け流す強さ”と世間の“期待の低さ”もあるかもしれない。もともと「あざとい」という言葉は、ポジティブでもネガティブな意味合いでも、当然「カワイイ」と思っていなければ出てこない言葉。「あざとい」と言われてしまうのは、「カワイイ」人の宿命ともいえる。「カワイイ・美人=性格が悪いに違いない」といった妬み…もはや“願い”もあるかもしれない。「ここに“減点法”が働く」と衣輪氏。最初からあまりに清楚で潔白なイメージがあるより、マイナスから入る分、「実は良い子」のギャップが生まれやすい。ただ、そこまでには本人たちの批判を受け流す忍耐力を要する。

「また、ネガティブなイメージも“貫き通す”ことでプラスに転じる現象があり、田中みな実さんは特に当てはまる。手越祐也さんはチャラ男の空気感(もちろん背景に歌唱力のギャップもあるが)を貫いて、むしろ愛されキャラに。出川哲朗さんも“抱かれたくない男No.1”からカワイイキャラへ。Kis-My-Ft2の宮田俊哉も『ラブライブ』の“にわか”じゃないガチな姿勢が好感度。松坂桃李も、カードゲーム『遊戯王』の、貫ききったガチオタクであることで男性人気が急上昇しました」
「弘中さんについては何度もインタビューしていますが、媚びた返答やサービス的嘘っぽい言葉もなく、笑顔もむしろ少ない方。淡々と話し続けられる方で、反面、カメラの前では求められたことにしっかりと答えているイメージ。クリエイター思考もあるのでセルフプロデュースに長けている頭のよい方」(衣輪氏)

 ポジティブな「あざとい」の言葉の裏にあるのは可愛さ・賢さ・そして強さ。もし自身にネガティブなイメージをつけられても、この三要素をうまく備えれば、逆転劇も起こりうるということを彼ら・彼女らは教えてくれているようにも思える。


(文/西島亨)

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