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「世界で勝てない日本作品」現状打破への挑戦、『日本沈没』で見せる“地上波ドラマ”の矜持
地震に噴火、災害続く日本でなぜ今?「今からでも遅くない」ドラマ化への思い
「本作は、悲劇が現実に起こらないようにするにはどうしたらいいかを描いた作品。このニュースには驚きましたが、もちろん災害は起こらないでほしいと常に願っております」。
原作は、1973年に小松左京が発表したSF小説。空前のベストセラーとなった本作は、相次いで映画・ドラマ化された。2006年には草なぎ剛、柴咲コウ主演で再び映画化、2020年にはNetflixでアニメ化もされている。このように何度も映像化されてきた名作を、なぜ今、地上波ドラマで描いたのだろうか。
「東日本大震災から10年という節目で、この不朽の名作を読み返しました。そこで改めて感じたのは、環境の問題。人間が犯した行為によって災害が引き起こされるという壮大な仮説にシンパシーを感じたのと、大洪水や山火事など世界中で異常気象による災害が起こっている状況が結び付きました。今からでも遅くないから何か手を打てないのか、一人一人がやれることがあるのではないか。そんなテーマも感じ取り、大胆なアレンジをして映像化に踏み切りました」。
地上波ドラマはスケール感でVODに勝てない? “世界で戦える作品”が大命題
「最初、小栗さんも『これを今、やるんですか』と日本沈没という設定の大きさにそのような反応をしていましたが、我々の思いを伝え、“今やる意義”に共感していただきました。小栗さんが日曜劇場に出演するのは、実に11年ぶり。生半可な作品にはできないし、エンタメとして楽しめつつ、深いテーマを探る内容にしたいという意図もありました」。
このように、不朽の名作が原作であり、深い思いの詰まった本作。だが、制作が発表された時、ほんのりと不安を感じたのは筆者だけではあるまい。
日本のドラマは、故・向田邦子さんや橋田壽賀子さんの脚本のような“4畳半のリアル”を描くのは上手いが、スケール感のあるエンタメ大作となると、チープな部分が目につくことが多い。これは映画でも同じだ。黒澤明や小津安二郎が、世界の映画に影響を与えたのも今は昔。とある映画プロデューサーから、「現在、多くの邦画はヨーロッパなどではほとんど相手にされず、フィルムが倉庫に眠っている。邦画というだけでビハインドがある」と明かされたこともある。
特にNetflixなどのVODが台頭した今、スケール感のある大作は予算が潤沢な配信ドラマとして制作されることが多い。それをなぜ地上波ドラマで、日曜劇場でドラマ化しようと考えたのか。
「本作も放送直後にNetflixで配信されます。つまり、“世界で戦える作品であること”が、そもそもの大命題としてありました。VODによって、地上波、配信ドラマ、映画が一つの端末で観られることから、今のユーザーはジャンルの垣根をあまり意識しなくなっている。大事なのは地上波云々ではなく、“作品として面白いかどうか”なのです」。
実際、Netflixで世界配信された第1話は、さまざまな国で称賛を浴びた。ある外国人識者に反響を聞くと、「世界は“環境”をビッグイシューと捉えるフェーズに入っている。『日本沈没』は大元は日本人向けの作品だが、第1話の描かれ方に外国のユーザーもワールドワイドのスケール感を感じ、非常に話題になっていた」という。“世界で戦える作品”の第一歩としては、ひとまず合格点と言えるだろう。