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“教本”としての役割も果たした『ゴルゴ13』 近代史・世界情勢の「知のきっかけ」に
理髪店に行けば必ず存在した『ゴルゴ』、思春期における“通過儀礼”としての役割も
劇画という手法は、手塚治虫の出現以降、独自に進化を遂げた日本の漫画カルチャーにおいて、カウンターとなる「大人が読むべき漫画」だった。一方、子どもにとっての『ゴルゴ13』は、「背伸びをするための漫画」であり、同作に興味を持ち、ある程度その内容を理解できたという喜びは“大人になるための通過儀礼”そのものだった。
「近代史と世界情勢はゴルゴから学んだ」インテリジェンスの教科書としての役割
旧ソ連のアフガニスタン侵攻に端を発し、現在のタリバン支配へと続く中東情勢、冷戦時代における大国間のにらみ合いとその代理戦争…デューク東郷の視点から描かれる世界情勢には、常に“リアリズム”が漂う。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏も熱狂的な『ゴルゴ』ファンとして知られており、外務省高官の間でも同作を“回し読み”していたと明かしている。外務省による「海外安全対策マニュアル」とのコラボレーションや、先ごろ行われた自民党・加藤官房長官の記者会見における哀悼の意などからも、決して“ネタ”ではないことがわかる。情報の世界に身を置く“プロ”たちも、綿密な取材に裏づけされた作品世界に魅了されているのだ。
また、実在する秘密結社・薔薇十字団や、コロンビアを拠点とする巨大麻薬密売組織・メデジンカルテルなどの名称を知ったのも『ゴルゴ13』からという読者も多いだろう。世界情勢における“暗部”を切り取った、文字通り「教科書では教えてくれない世界史」からの学びだ。
漫画としての功績は計り知れないが、教本としての役割も果たしてきた『ゴルゴ13』。さいとう・たかをさんの意志を受け継ぎ、連載は継続。デューク東郷による、世界を股にかけた“暗躍”は終わらない。同時に「インテリジェンスの教科書」としての役割も引き継がれていく。