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「瓶の方がおいしく感じる」は本当? 令和も瓶牛乳作り続ける明治に“瓶マジック”のからくりを聞いた

 戦後、日本人の成長と健康維持に貢献し続けてきた瓶牛乳。小学生時代には給食で味わっていた人も多いだろうが、現在では学校給食の約8割以上が紙パックに移行。今年3月には小岩井乳業が瓶商品の販売終了を発表した。そんな中、明治は今でも約3,000店の宅配販売店から、全国各地に瓶牛乳を届けている。紙パックやプラスチック容器が普及した今も、瓶牛乳を製造し続ける思いとは。また、コーラやビール等も同様に、瓶ならではの美味しさを感じられる“瓶マジック”のからくりも聞いてみた。

紙容器販売で需要は激減するも、平成時代にはV字回復 超高齢化社会に欠かせない理由

 明治の瓶牛乳の始まりは、1928年(昭和3年)。両国工場で、「明治牛乳(瓶180ml)」を発売し、宅配がスタートした。「瓶牛乳を取り巻く環境は、発売から現在に至るまで、多くの変化がありました」と、明治・牛乳マーケティング部の小島秀人さんは語る。

「戦後、1950年に牛乳の自由販売が解禁になると、『明治牛乳』に加え、『明治コーヒー牛乳(瓶180ml)』や『明治フルーツ牛乳(瓶180ml)』など、商品ラインナップの拡充を図りました。『明治牛乳』も、500mlや900mlといった家族層をターゲットにした大型瓶を発売。消費者の購買行動としては、牛乳は瓶容器で牛乳販売店に宅配してもらう時代で、1976年ピーク時の弊社の宅配保有軒数は、約350万軒となりました」

 その後、1967年に明治牛乳を1000ml紙容器で発売すると、冷蔵庫の普及や量販店の台頭により、瓶牛乳・宅配顧客数が減少していった。衰退する瓶牛乳・宅配事業を立て直すべく、1984年、初めて宅配専用商品として『明治ラブエース(瓶180ml)』を発売。1993年に発売した『明治のびやかCa牛乳(瓶180ml)』は、通常の牛乳よりもカルシウムを強化した特長を明確化し、大ヒットを記録する。
 さらに、商品をより安全・衛生的なものにするため、それまでの紙キャップからポリエチレン製のキャップにした新しい瓶を1998年から導入。密閉性が格段に向上し、さらに汚れやホコリを防ぐシュリンクフードを巻き付けた。これら商品力と併せて営業力も強化し、瓶牛乳・宅配事業は90年後半から00年でV字回復を果たした。

「現在も、1日分のカルシウムと鉄分を1本で摂れる『明治ミルクで元気(瓶180ml)』が人気商品ですが、瓶商品は、『明治プロビオヨーグルトR-1(瓶100ml)』や『明治メイバランスのむヨーグルト(瓶100ml)』などが、牛乳類の売上を上回って推移しています」(小島さん/以下同)

 紙パックやプラスチック容器が普及した今では、瓶牛乳ならではの「新鮮」「おいしさ」といった特別感が味わえる。同社では、それに「宅配専用」「機能強化」という付加価値を付与することで、健康課題を抱える高齢者を中心に一定の支持を維持している。

 利用者の約4割が70代以上、約3割が60代で、定期的に家に届くために買い忘れがなく、飲むことが習慣化することから、影ながら超高齢化社会の健康を支えている。さらには、今となっては希少な定期的な対面サービスであることから、配達スタッフが高齢者の健康状態を把握することができ、『地域包括ケアシステム』の構築も期待できる。

プラ容器よりも4倍の“ひんやり感”、芳醇な香りに情緒的な付加価値も

 宅配のみならず、瓶牛乳と言えば銭湯が思い浮かぶ。風呂上がりに腰に手を当ててグイッと飲むには、やはり瓶のほうが風情があると思う人も多いはずだ。それに加えて、科学的な要因もあると小島さんは推測する。

「瓶は、その他の容器と比較して、“ひんやり感”が強いことが科学的にわかっています。マグカップやプラスチックコップに比べても、瓶は飲み口の接触面積が多いため、プラスチックカップの約4倍の“ひんやり感”が強く、冷たさも比較的持続しやすいのです。お風呂で火照った体をクールダウンさせたいという気持ちが、瓶を選ぶ心理的な部分もあるのではないかと考えます」

 コーラやサイダー、ビール等の炭酸飲料も、いまだに瓶型が多く見られる。「これは、ひんやりとした触感を感じやすい瓶容器が、爽快感を求める炭酸飲料との親和性が高いためと推測しています。瓶には高級感、特別感も感じられるため、差別化という点も大きいと考えています」と小島さんが言うように、これだけ技術が発達した現代においても、“瓶マジック”は重宝されている…どころか、今だからこその“情緒的な価値”まで付与された。

 明治の紙パックと瓶の牛乳の製造方法において、基本的に容器への充填、包装工程以外に違いはない。しかし、瓶牛乳の場合、上方向に上がろうとする香りがキャップ部分に凝縮するため、開けた瞬間に濃厚な香りが広がりやすいという取柄もあるそうだ。

販売は保健所への届出必須「意外とハードルが高い」が話題に、期待される再利用資源

 意外にも、瓶牛乳は誰でも自由に販売ができるわけではない。衛生管理が厳しく求められていた時代からの名残から、これまで銭湯をはじめ、販売には保健所の許可が必要だったのだ。先月から届出制に変更されたことを機に、このことがSNS上で拡散されると、「知らなかった!」「ハードル高かったんだ」「ありがたい飲み物」「味わって飲もう」などの声が寄せられ、大きな反響があった。

「食品に係る営業を営もうとする場合、公衆衛生に及ぼす影響の大きい営業については、営業許可が必要とされています。しかし、食品衛生法の改正によって、食中毒などのリスクや、企画基準の有無、過去の食中毒の発生状況を踏まえ、営業許可が必要な業種の見直しが行われ乳類販売業は許可ではなく届出制に変更されました。しかし、変わらず食品衛生責任者の設置が求められます」
 また、比較的“古い”とされる瓶牛乳だが、次世代を担う容器となる可能性も秘めている。運搬や洗浄、殺菌コストの課題はあるものの、リデュース、リユース、リサイクルの3R活動によって資源を有効活用し、その活動を通じて、昨今世界的に注目されるSDGsに貢献しているからだ。

「弊社では、180ml瓶の外側をコーティングすることで、耐久性向上及び軽量化を実現しています。また、海洋プラスチック問題など地球破壊への影響も考慮し、ポリキャップも再資源化しています。瓶のリユースという価値は、今後さらに高まってくると考えられます。そこで、さらなる瓶の軽量化や耐久性の向上、割れやヒビの防止など、瓶の進化による付加価値が求められると考えています」

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