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加速するオンライン授業化、“対面”を指針とする語学教室の苦悩「目的を見失いがちに」

 コロナ禍に直面し、様々な分野において今後の指針が問われている昨今。教育の現場においても、学校や塾などで急速なオンライン授業化が進められている。オンライン化により新たな可能性や規範を生む一方、“画面越し”ではなく、対峙した際にその成果が問われる語学教室は苦悩が続いている。コロナ禍においても“対面授業”に一定の比重を置きたいという本音と、現状を見据えた新たな授業形態の間で、どう折り合いをつけるべきなのか? 1973年より対面での英会話教室に注力してきたイーオンに話を聞いた。

教室は言葉を学ぶだけでなく、人生を豊かにする場「英語を通じて生まれた人のつながりが、そのまま海外で活きる」

――コロナ禍での外出自粛は、どのような影響がありましたか?

イーオン・カウンセラー・赤羽友加里氏(以下、赤羽)最初の緊急事態宣言の際に休校したのち、オンライン授業に切り替えて対応させていただきました。初めてのことだったので戸惑いもありましたが、外出できない間もイーオン・ネット・キャンパスという学習アプリを活用しながら、ご自宅で勉強を続けていた方が多くいらっしゃいましたね。

――オンライン授業に切り替えた際、気をつけたことは何かありましたか?

イーオン・教師・米川泉氏(以下、米川)スポーツや音楽も同じですが、語学は学習が止まってしまうことのデメリットがすごく大きいんですね。せっかく今まで勉強してきたスキルが後退してしまうのはすごく惜しいことなので、生徒さんにお電話をして状況を伺ったり、オンラインで学習指導のフォローをしたりと、コミュニケーションを取りつつ進めていきました。
  • カウンセリングを行う赤羽さん

    カウンセリングを行う赤羽さん

  • 授業を行う米川先生

    授業を行う米川先生

――教える側としても初めてのことの連続だったかと思いますが、お電話やカウンセリングなどしてみていかがでしたか?

赤羽皆様つらい状況だったと思うのですが、だからこそ早く先生たちに会いたい、元気をもらいたいという声を多くいただいて。やはり英語や語学って、結局は直接対話を目的としたスキルですから、話す相手が目の前にいるからこそ上達する部分が大きいと思うんですよね。そういった点でも、オンライン教材だとモチベーションを持続するのが難しい面があるのではないかと感じました。

――生徒さんとのつながりを感じられる時間でもあったんですね。

米川生徒様の中にはレッスンや語学のことだけではなく、家庭や仕事のことなどご自身の胸のうちを話してくださる方もいて。教室にはもちろん言葉を勉強しに来ているけれど、先生や仲間に会うことで元気やパワーをもらっていたという嬉しいお言葉もいただきました。登校して学びたいという声も多く、改めて、私たちの仕事は言葉を教えるだけではなく、人生を豊かにするお手伝いをしているのだと実感した瞬間でした。

――生徒さんにとって、対面授業ができる英会話教室はどんな場所だと思われますか?

赤羽私自身も学生時代はイーオンの生徒だったのですが、家族と離れて暮らす中、学校以外で人と交流して温かみを感じられる場所でした。来るたびに、「元気?」、「学校どう?」と声をかけてもらって、気にかけてもらえることがすごく嬉しかったんですよね。

――英語を学ぶだけはなく、人とコミュニケーションができる場でもあるんですね。

赤羽そうですね。画面越しですと、やはりつながりがリアルではない感覚もあるので、対面して先生や仲間と会話をすることでの温かみは大切ではないかと。英語を通じて生まれた人とのつながりが、そのまま海外で活きると思います。そういった“温かみ”がオンラインで生まれるか、というと難しい気がしますね。

8割が対面授業を希望 英会話において重要な“積極性”も失われがちなオンライン授業

――現状、対面授業とオンライン授業では、ご希望される方の割合はどのくらいでしょうか?

赤羽8:2ぐらいだと思います。今は約8割の生徒様が対面ご希望で、圧倒的に多いですね。昨年の1回目の緊急事態宣言中はオンラインへの移行の流れがかなり強い印象でしたが、やはり少し時間が経つと、対面に戻られたい方がすごく多かったんです。どちらも体験した方は、対面での学習効果を実感されている方が多いのではないでしょうか。

――オンラインと対面の違いはどんな部分に感じていらっしゃいますか?

米川外出自粛という状況下でも英語学習を継続できたという点では、オンライン授業にも大きなメリットがありました。ただ、音楽をCDで聴くのとライブで聴くのが大きく違うように、その差は明らかにあります。対面会話がゴールである英会話において、“本番”さながらの対面教室でしか得られないコミュニケーション能力はあると思います。
――画面を通しての会話は、直接会うのとはまた違った感覚になりますよね。

米川そうですね。教室だと生徒様同士でわいわい盛り上がる場面でも、オンラインだとどうしても私と生徒様の1対1の会話になりがちです。日本人は特に遠慮してしまいがちですよね。英会話では、積極性も大事な要素です。ですので、できるだけ公平にたくさんの方にお話していただけるよう気を配ると同時に、オンラインでも遠慮せず積極的に話していただけるように心がけています。

――逆に、オンラインにしてみて新たに気づいたメリットはありますか?

赤羽お子さんたちに関しては、レッスンの間、家で親御さんが観ていられる利点はあります。実際にがんばって勉強している様子を観て、成長を感じたり、よりサポートしようというお気持ちが大きくなったという声もいただきました。

上達に必要なのは目標を見失わないこと「自粛期間を“準備期間”と捉えて今できることを」

――英会話の上達において、大切なことは何だと思われますか?

米川まずは、目標を見失わないことですね。自分のなりたい姿を見失わないことが大事だと思います。なかなかひとりではできないからこそ、我々の存在意義があると思っていて。自分の理想に近づくために何をすればいいかを一緒に考えて、目標を立てて学習することで、モチベーションをキープして差し上げることができたらと思っています。

――コロナ禍で海外に行くことが難しくなり、目標を見失い、モチベーションが下がってしまった方も多いのではないでしょうか?

米川「ヨーロッパを通訳なしで旅したい」だったり、「アンデス地方の遺跡を巡りたい」など、皆さんそれぞれ夢があって。今の状況になったことで、夢がなくなってしまったり、何のためにやっているのか分からないとおっしゃる方もいらっしゃいました。
――そういった方たちへ、どのようなアドバイスをされたのでしょうか?

米川いつ行けるかはわからないけれど、その時がいつ来てもいいように準備をしておく大切さをお話しています。私自身もそうだったのですが、自分がアンテナを張っておけば、いつどんなタイミングでチャンスが訪れるかわからないんですよね。自粛期間を学習期間、準備期間と捉えて、今何ができるかを考えるお手伝いをさせていただいています。そういった意味でも、目の前に話す相手がいて、同じ志を持った仲間がそばにいる教室の方が、オンラインよりも目標を見失わずにモチベーションがキープしやすい環境だと思います。

――英会話スキルが伸びやすい人の傾向はありますか?

米川会話においては、コーチされたことを信じてやれる方は、成長が早いです。“こういうやり方でしかやらない”とシャットダウンしてしまうと、難しい部分がありますね。あとは音楽やスポーツをやっていた方。毎日お稽古や練習をするのが当たり前の環境だったので、継続するといいパフォーマンスにつながることが分かっている分、成果につながりやすいです。
――今後の日本の英語学習においての課題は、どのようにお考えですか?

米川今、文科省も「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を積極的に進めていますが、日本においてまだ弱いのが「話す」力です。コミュニケーションスキルを伸ばすことは、今後の重要な課題だと思いますね。

――今後も感染対策が必要な日々が続くと思いますが、どのような英語教育を目指されますか

赤羽入室時の検温や換気、アクリルパーテンション、教師には不織布に限定したマスクの着用など感染対策をきちんと行いながら、対面とデジタルの融合を目指せればと思っています。どちらの良い点も活かしながら、デジタルを活用してご自身の学習や能力の分析や成長度を“見える化”しつつ、対面でコミュニケーションを磨くハイブリッド教育を提供していきたいですね。

カウンセラー・赤羽友加里氏と教師・米川泉氏

カウンセラー・赤羽友加里氏と教師・米川泉氏

(文=辻内史佳)

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