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大竹しのぶ、母親としても役者としても100点にはなれなかった「でも、これで良かった」
戦時中も公演していた『女の一生』「コロナ禍の今、この幕を開けるのには意味がある」
大竹しのぶ 日本の演劇界を牽引してきた女優・杉村春子さんが947回にわたって演じられた役ということや、どういう物語なのかというのはなんとなく知っていましたが、まさか自分にお話がくるとは思っていなかったので驚きました。
――お稽古は9月の終わり頃から始まったそうですが、久々の稽古場はいかがでしたか?
大竹しのぶ マスクで相手の表情がよく見えないことや、自分の声の飛び方がわからないなど色々と戸惑うことも多かったのですが、最近ようやく慣れてきたように感じます。役者だけじゃなくアクリル板の設置や一回ごとの消毒など、スタッフの皆さんも本当に大変だなと。ただ、やはり稽古をしている時間というのは全員と心を通い合わせることができるので、凄く集中して、良い舞台にしようという気持ちが高まります。稽古を重ねれば重ねるほど演じる喜びを感じますし、一人の女性の40年間を描いた舞台なので、世代ごとの感情の変化を表現するのが凄く楽しいです。
大竹しのぶ けいの台詞で「誰が選んでくれたものでもない。自分で選んで歩きだした道ですもの。間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ」というのがあるのですが、そこに彼女の強さを感じて凄く共感できました。時代関係なく、けいのような選択をして生きてきた人が沢山いるはずで、きっとこの言葉は多くの人に響くのではないかなと思います。
――けいの台詞に限らず本作には美しい言葉が沢山詰まっていますよね。
大竹しのぶ 森本薫さんが書かれた脚本には宝物のような台詞が沢山あります。けいが20代の頃には若さを感じさせる台詞もあってとっても素敵なんですよね。この舞台の初演は昭和20年ですが、同じ脚本を令和という新しい時代に公演できるというのは本当に凄いことだなと思います。良い脚本は時代を超えて受け継がれるものなんだと強く実感しています。
――コロナ禍の今だからこそ『女の一生』の公演をやることの意味がより深まったように感じますがいかがですか?
大竹しのぶ それこそ、杉村春子さんが戦時中に舞台に立っていた頃は警戒警報(空襲の恐れがあることを知らせる警報)が鳴るかもしれないという状況で、それでも上演したいという気持ちを持ってお芝居されていたと思うんです。今は戦時下ではないので同じように語るのは違うのかもしれませんが、コロナという世界中が大変な状況に陥っている中で、この舞台の幕を開けるのには意味があると思いたいですね。