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(更新: ORICON NEWS

大竹しのぶ、母親としても役者としても100点にはなれなかった「でも、これで良かった」

「辞めたいと思ったことは一度もない」コロナ禍で改めて感じた“舞台に立つ喜び”

――自粛期間中はあらゆる舞台が公演中止となり、大竹さんが出演される予定だった『桜の園』も全公演中止となってしまいました。そんな中でどのように過ごされていたのでしょうか。

大竹しのぶ 自粛期間中に劇場が封鎖されたのは仕方がないことで、状況をしっかりと受け止めつつも、あまり色々と考えないようにしていました。様々な公演が中止になる中、配信という形で舞台を上演されるカンパニーもありましたが、演劇に関しては個人的には“お客様の前でお芝居するのが一番”という思いがあったので、今年がダメでも来年、来年がダメでも再来年というふうに、いつか絶対に舞台の幕が開くことを信じてゆったりした気持ちで生活していたんです。もちろん、これから世界はどうなっていくのかと考えることはありましたけど、そんな中でも、朝起きたらご飯を作ってお掃除して、何日かに一回スーパーに行ってという、ごく普通の日常をありがたく噛み締める日々を過ごしていました。それはそれで楽しい時間だったように思います。
――本舞台の公演が決まった時は“やっとお芝居ができる!”と、喜びの気持ちでいっぱいだったのではありませんか?

大竹しのぶ それが、ずっとダラダラモードで過ごしていたせいか、公演が決まったと聞いた瞬間は“どうしよう!”って感じだったんです(笑)。でもお稽古に入ってからは舞台に立てる喜びでいっぱいになりました。

――デビューから途切れることなく多方面でご活躍されていますが、長く続けていく中で“もう辞めたい”と思うことはなかったのでしょうか。

大竹しのぶ たまに身体的な“疲れ”を感じることはありますけど、もう辞めたいとか二度と舞台に立ちたくないと思ったことは一度もないです。何故かというと、お芝居が好きだから。舞台中は開演時間までに自分の体がアップしていく感じも好きで、幕が上がると顔も体も一番良い状態になって“生きてる!”と実感できるんです。それがある意味モチベーションになっているのかもしれませんね。

ターニングポイントは“結婚と出産”「イメージのためにプライベートを抑制することはなかった」

――そんな大竹さんにとって、人生のターニングポイントと思える時期はいつだったのでしょうか?

大竹しのぶ 大きなターニングポイントになったのは、やはり結婚や出産ですね。自分のイメージのためにプライベートで何かを抑制することはなかったですし、人生の中に役者という仕事があるだけなので、結婚したい時に結婚して、自然な流れで出産して、離婚したい時に離婚したといいますか(笑)。役者のお仕事をプライベートよりも優先するということはなかったように思います。

――役者というお仕事と、主婦業や子育てとの両立に苦悩されたことはありませんでしたか?

大竹しのぶ 母親として100点だったかというとそうではなかったですし、だからといって役者としても勿論完璧ではなかったし、睡眠不足のまま朝早く起きて子どもの身支度をして、それから仕事に出かける日々だったので、どちらかに全てを注ぎ込むというのは不可能だったんですよね。それでも、両立させるために必死になってやっていたとは思います。もちろん“これで良かったのだろうか?”と葛藤することもありましたけど、自分で選んだ人生だし、大変なことがあったぶん、楽しいこともいっぱいあったのではないかと。前述のけいの台詞じゃないですけど、過去を振り返った時に“あれで良かったんだ”と思うようにしています。

――これまでの選択は間違いじゃなかったと思うと前向きになれますよね。

大竹しのぶ ほんとにそう。だって間違いだったとわかったら悲しいじゃないですか。そんなの辛いです。私も間違いだらけの人生でしたけど、例え間違った選択をしたとしても、“これで良かったんだ”と思えたほうが幸せですよね。
――役者として輝き続ける一方で、バラエティ番組などでは自然体で飾らない姿が素敵な大竹さんですが、ご自身の中で何か大事にしてらっしゃることはありますか?

大竹しのぶ 亡くなった父がよく「女の人はいつもニコニコ笑って、可愛く愛されなくちゃいけない」と言っていたので、その言葉に従って笑顔でいることを心がけていた時期もあったのですが、大人になるといつもニコニコしていられないということがわかってきます。色んなことを学んでいくのが人生で。年齢や時代によって刺さる言葉も違うし、誰かの言葉や、それこそ映画や舞台の台詞が刺さることもありますよね。だからいつも言葉には敏感でいたいし、それを感じ取れるような心も持っていたいなと思います。それから、自分の心に嘘をつかないということも大事にしています。

――今後、役者として挑戦してみたいことはありますか?

大竹しのぶ ミュージカルや音楽劇に挑戦してみたいですし、小劇場の舞台にも興味があります。演劇は娯楽ではあるけれど、お芝居を通して素敵な生き方や素敵な人物に出会えたりすることもあるんですよね。『女の一生』はまさにそういうお芝居になっていると思います。そして来年は舞台『フェードル』で恋に狂う女性を演じるので、是非そちらも楽しみにして頂けたら嬉しいです。


(取材・文=奥村百恵/撮影=石川咲希(パッシュ))
⇒『女の一生』制作発表会見
高橋克実『グッディ!』終了後初の公の場「先週まで忙しかった」
◇大竹しのぶ出演舞台情報◇
女の一生
出演:大竹しのぶ/高橋克実/段田安則/宮澤エマほか
演出:段田安則
会場:新橋演舞場
日程:11月2日(月)〜11月26日(木)

昭和20年4月、終戦直前に森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子が初演した『女の一生』。杉村はその生涯に947回にわたって主人公の布引けいを演じ、観客の圧倒的な支持を得ました。物語は、明治38年(1905)から昭和20年(1945)までを全五幕七場で綴り、天涯孤独の少女であった布引けいが、拾われた家の長男の妻となって家業を守る40年間を描いています。

フェードル
出演:大竹しのぶ/林遣都ほか
演出:栗山民也
会場:Bunkamura シアターコクーンほか
日程:1月8日(火)〜1月26日(火)

『フェードル』は、フランスの劇作家ジャン・ラシーヌがギリシャ悲劇『ヒッポリュトス』から題材を得て創りあげ、1677年ブルゴーニュ座で初演した作品。悲劇へと向かう女性の姿を描く美しく輝く台詞、神話的世界をもとに表現した抵抗しがたい破滅的激情は、演劇の醍醐味を堪能できる要素が凝縮されています。フランスを代表する哲学者ヴォルテールをして「人間精神を扱った最高傑作」と言わしめた歴史的名作です。

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